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私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。-scene4-







〝また、連絡するよ、、、〟


あの日から、もう1週間が過ぎようとしている。

休日の午後、、、
自分の部屋のベッドに仰向けになって、天井を見つめていた。


・・・・・「ヒョン、、、怒ってる?」


独り、小さく呟く。
嘘ついたんだ。怒ってて当たり前だ。

だから1週間も、連絡がないんだ。



あの日以来、携帯にヒョンのナンバーを表示させては消す、、、を、何度も繰り返した。
何をどう言えばいいか、言葉が見つからなくて・・・
結局、何も言えないまま時間は過ぎてしまった。


身体を壁に向けて、膝を抱えて丸くなる。


・・・・・「ヒョン、、、ごめんね。」


最悪、、、
嘘ついて、そのうえ謝ることすら怖くて出来ないなんて・・・

僕って、最悪最低だ・・・






--- チャンミーン、ご飯出来たよ ---


僕を呼ぶ、母さんの声が、階段下から聞こえる。
その声に、ハッと瞼が開く。

気が付けば、僕はベッドの上で眠っていたらしく、
慌てて時計を確認すると、もう夕食の時間になっていた。


・・・・・「はぁっ、、、」


自己嫌悪・・・

なんだか食欲も湧いてこない。
ベッドからノソリと立ち上がり、部屋を出ようとしたその時・・・


携帯から、着信を知らせるメロディが、静かな部屋に曇ったような音で響く。
慌てて、音が聞えるベッドに戻り、携帯を探すけど、なかなか見当たらない。


・・・・・「何処だよっ!」


布団をぐちゃぐちゃにしながら、ようやく見つけた電話を手にした。


その電話の向こうに繋がっているのはヒョンだと、
勝手に思い込んでいた僕は、そのコール音が切れてしまわないうちに応答しようと、必死で・・・


・・・・・「もしもし? ヒョン?」


相手を確認しないまま、応答してしまった。


「・・・・・」

・・・・・「もしもし? もしもし?」

「俺、、、だけど、、、」


僕のあまりの勢い余った応答の声に、戸惑いながらそう言ったのは、、、


・・・・・「ヒョン、、、」


ユノヒョンだった。


「どうした、、、何かあったのか?」

・・・・・「う、ううん、、、ゴメン、何でもない。」

「でもなんだか、切羽詰まってた感じ、、、だけど、、、」



期待、、、
していたからか、思わずため息が漏れた。


「掛け直そうか?」


僕の様子から何かを感じ取ったユノヒョンが、
電話を切ろうとしたけれど、、、


・・・・・「うん、大丈夫。ヒョン、少し待ってて?」

「ああ、、、」


携帯をテーブルに置いて、僕は階段を急いで降りる。
母さんに、食事はいらないからと断りを入れて、部屋に戻って急いで電話を手にした。


「忙しい時間だったな、、、お前、飯食った?」

・・・・・「ううん。けど、あんまり食欲なくて、、、」

「チャンミンが食欲ないとか、珍しいな。風邪引いたとか?」

・・・・・「違うよ、おやつ、、、食べすぎちゃっただけだよ」

「なら、いいけどさ、、、飯はちゃんと食えよ。元気出ないだろ?」

・・・・・「うん。分かってる。」


その優しい言葉に、
胸がズキッと痛む。


ユノヒョン、、、僕ね、大切な人に嘘ついてしまったんだ。
もう、嫌われちゃったかもしれないんだよ、、、
どうしたらいい?


ヒョンに話す事なんて出来るわけないのに、
誰かに聞いて欲しくて、、、
心の中で、そっと呟いた。


「あのさ、チャンミン、、、」

・・・・・「うん、、、」

「ほら、例の約束の事で、話しがあってさ。」



〝大学だよ、案内してやるからさ・・・〟



・・・・・「大学、、、の?」

「そう。お前、いつなら時間、、、開いてる?」

・・・・・「来週は、3年生の授業は午前中しかないから、、、午後からなら空いてる。」

「そっか、なら、明日どう? 俺も、1時限の講義だけで、あとは空いてるからさ」


少し先の話しだと思っていた僕は、急な話に驚いてしまって・・・


・・・・・「明日?」

「そう、明日。何時に授業終わる?」

・・・・・「うん。11時ごろには終わりそうだけど・・・」

「よし。なら、そのくらいの時間に、学校まで迎えに行ってやるよ。」

・・・・・「ヒョンが?」

「ああ、、、」

・・・・・「いいの? 僕、バスで行ってもいいけど、、、」

「遠慮するなって、弟よ、最高にカッコいいスポーツカーで迎えに行ってやるからさ、、、」



そう言いながら、ユノヒョンは電話の向こうでケラケラと笑ってた。
その声に釣られるようにして、僕も少しだけ笑った。

頭の中に、ヒョンの影を映したままで・・・・・








「チャンミン!」

・・・・・「ヒョン!」



次の日、授業を終えて校門を出ると、
白いコンパクトカーを背に、ユノヒョンが立っていた。


--- あれ、もしかしてチョン先輩? ---

・・・・・「うん。今から大学を案内してもらうんだ。」

--- そっか、先輩K大だったよな。いいな、チャンミン---


ユノヒョンは、高校でもとても人気があったから、
僕はいつも、同級生たちに羨ましがられてた。

それがちょっとした僕の自慢でもあった。



・・・・・「じゃあね、また明日。」



クラスメイトと校門の前で別れて、僕はユノヒョンに駆け寄る。


・・・・・「ごめん。待った?」

「いや、5分ほど前に着いたとこ。」

・・・・・「良かった。」

「なぁ、チャンミン。このまま行こうかと思ったけれど、考えたらお前制服だし、家寄って着替えろよ。
俺もちょっと、忘れ物を取りに行きたいし。」

・・・・・「うん。いいよ。」

「よし、じゃあ行こう」




助手席の扉を開く。
その時ふっと、ある光景を思い出す。


それは、家の前で見た、
ユノヒョンの車の助手席に乗るミファさんの姿・・・


「どうした?チャンミン、、、乗れよ」

・・・・・「う、うん、、、」


ミファさんにも、そしてヒョンにも・・・
なんだかとても、申し訳ない気持ちになる。

けど、そんなこと思ってるのは僕だけ・・・


そうだよ、僕とユノヒョンは、友達で、先輩後輩で、お隣さんで、、、
ただ、それだけ、、、

何も、可笑しな感情なんてない。


きっと、この助手席にも、
ヒョンの友達が沢山乗ってる。

僕だって、そのうちの1人なんだ。

そうだよ、、、
だから、大丈夫、、、



「行くぞ、チャンミン。シートベルトしろよ?」

・・・・・「うん」


自分の心に、そんな風に言い聞かせる。


車は、静かに動きだした・・・・・









63へつづく


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真夜中の観覧車。-scene4-





ユノヒョンと約束をしたその日を境に、
僕達は、時々電話で話をするようになった。

特別な用なんて、何もない。
ユノヒョンは、大学の事だとか、サークルでの出来事だとか、、、
僕はと言えば、キュヒョンと遊んだゲームの事とか、街に最近できた美味しいパンケーキの店の話しとか、、、

ただ、自分たちの日常を報告しあっているような会話が、
なんだかくすぐったくて、新鮮で、面白く感じたんだ。

そんなユノヒョンとの電話は、回数を重ねてゆくたび、5分が10分になり、10分が30分になり、
最近では、、、


「あっ、もうこんな時間だ。」

・・・・・「ホントだ。1時間も経ってる。」


こんな感じで、、、
いつの間にか、僕達は自然と会話をするようになっていた。

あの空白の時間が、まるでなかったように・・・


「じゃあ、そろそろ」

・・・・・「うん。」

「早く寝ろよ」

・・・・・「うん、ヒョンもね。おやすみ」

「おやすみ、チャンミン」



電話を切り、腰かけていたベッドから立ち上がる。

と同時に、手の中の携帯がブルブルと震え、新しい着信を知らせた。



見ると、、、

・・・・・「ヒョン、、、」


ヒョンとは最近、会えていなかった。
就職が決まったとはいえ、卒業と入社に備えての準備も忙しそうで、
僕は、〝会いたい〟と、軽く言えなくなっていた。


・・・・・「もしもし、、ヒョン?」

---チャンミン?---

・・・・・「うん。」

---家にいる?風邪、引いてないか? 温かくしてる?---

・・・・・「うん。ヒョンは? 」

---うん。大学のほうがバタバタしてる。いろいろと忙しくて、、、なかなか会えなくて、ごめん---

・・・・・「ううん。僕の事は、気にしないで」


きっと、僕が今、こんな風にヒョンに言えるのは、
ユノヒョンとの繋がりがあるから。

今までの僕なら、寂しくて会いたくて、きっとヒョンを困らせていたと思う。
僕って本当に現金な奴だと、自分でもそう思う。

ヒョンに構ってもらえない寂しさを、ユノヒョンとの電話で埋めているつもりは、ないんだけど・・・


--- 誰かと電話してた? ---

・・・・・「えっ?」

--- いや、何度が電話したけど、話し中だったからさ、、、---


僕がユノヒョンと話している間に、ヒョンが何度も電話をくれてたんだ。


・・・・・「ごめん、、、友達と長電話してて、、、」

「誰? 学校の友達?」


少し、、、驚いた。
僕の電話の相手が誰なんて、そんなことヒョンに聞かれるって思ってもなくて、、、

僕は咄嗟に、、、


・・・・・「うん、、、キュヒョンだよ」


嘘をついた。
それは、僕の心の奥に芽生え始めていた小さな小さな罪悪感。

ユノヒョンとの電話、、、
ユノヒョンとの約束、、、

なんだかとても、ヒョンに対して悪いことをしているような気持ちになっていた。


〝ヒョン、今度ね、ユノヒョンに大学を案内してもらうことになって・・・〟


何度も何度も、ヒョンに言いかけた言葉・・・

けれど、、、

僕に向けられる優しい笑顔・・・
僕の髪を撫でる大きな掌の感触・・・
柔らかくて甘い、触れるだけのキス・・・

どれもこれもが、優しすぎるから・・・

まるで、ヒョンを裏切っているような気持ちになって、、、
言えなかったんだ。



--- キュ、、、ヒョン? ---

・・・・・「うん、、、そう、、、」

--- そっか、、、---

・・・・・「ヒョン、、、次、、、いつ、、、」

--- ん? ---

・・・・・「いつ会えるかな?」


なんだが急に、ヒョンに甘えたくなった僕は、
そんな風に言葉を口にした。

期待してた。
いつものように、、、


〝今から行くから、待ってて〟


そんな風に、言ってくれるんじゃないかって、、、


でも、、、


--- また、連絡するよ、、、---

・・・・・「・・・うん、、、分った」

--- おやすみ、、、---

・・・・・「おやすみなさい」


電話を切ったあとの不通音が、
こんなに虚しく聞こえたのは、初めてだった・・・



翌日、僕はいつも同じように学校に向かう。

3年生の大半は、進路が確定して、
少し前までのあのピリピリした空気が、嘘のように、
廊下では、皆がふざけ合ったりお喋りしたりしている。


--- チャンミン! おはよっ!---


廊下の随分先から聞こえる、キュヒョンの声。
僕を見つけて、手を振りながら走り寄ってくる。


・・・・・「おはよ、キュヒョン。」

--- チャンミン、お前、昨日何してたの? ---

・・・・・「えっ? 昨日って?」


キュヒョンと約束、、、してたわけじゃないよね?


--- 昨日さ、何時頃だったか駅の近くてユンス先生に会ったんだよ---

・・・・・「えっ?」

--- でさ、時間あるから何か食いに行こうって、話になってね。どうせなら、チャンミン誘ってってことになって・・・---

・・・・・「・・・・・それって、、、昨日?」

--- そう。で、先生が何度もお前に電話したのに、ずっと話し中だっただろ?---

・・・・・「・・・・・」

--- 何なの? お前、もしや彼女とか? ---


〝誰? 学校の友達?〟

〝うん、、、キュヒョンだよ〟



キュヒョンは、面白がって笑ってた。
けど、僕は言葉が出てこなくて・・・


--- えっ? まさかビンゴ? ---

・・・・・「ち、違うよ、、、」


その時、授業開始10分前のチャイムが、
廊下に鳴り響く。


--- またラーメン食いに行こうぜ? じゃあな、チャンミン---

・・・・・「うん、、、」


廊下にいた生徒が、皆一斉にそれぞれの教室に入ってゆく。

けど、僕はその場から暫く動けなかった。


・・・・・「ヒョン、、、」


どうしよう、、、

咄嗟についてしまった、小さな嘘・・・
ヒョンは、知ってたんだ・・・


僕が、嘘をついたこと・・・・・


チクリ、、と胸に痛みが走る。
まるで、細い針で刺されたような、そんな痛みだった・・・・・









62へつづく


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真夜中の観覧車。-scene4-





「チャンミン?」


まるで、僕からの電話を待っていたかのようなヒョンの踊る声に、
少し驚いて・・・


・・・・・「あっ、、、ヒョン? 僕、、、チャンミンだよ」

「ん、、、どうした? 」

・・・・・「あの、、、あのね。ヒョンのおばさんが、、、」

「母さん?」


いや、回りくどい言い方はやめよう。
ヒョンが心配してくれてるなら、早く安心させてあげないと・・・


・・・・・「ううん。あのね、ヒョンに報告しないとって、、、試験の結果、、、」

「うん、、、で? どうだった?」

・・・・・「うん。大丈夫。合格したよ。」

「ホントに?」

・・・・・「うん。ホントだよ。」


その後、電話の向こうから聞こえたのは、、、


「はぁ、、、っ、、、良かった、、、」


部屋が静かだから聞こえた、本当に囁くような小さな小さな声。
小さく漏れた息は、安堵の溜息なのか・・・


「おめでとう。チャンミン。よく頑張ったな」


ヒョンは知ってくれている。
僕が、K大に合格するためには、沢山努力しなければいけなかったこと・・・


・・・・・「うん。ありがとう、ヒョン、、、」

「お祝い、しないとな」

・・・・・「えっ?」

「チャンミンの合格祝いだよ」


嬉しかった。
まさか、ユノヒョンがそんな事を思っていてくれたなんて・・・

1年前・・・
ユノヒョンが一番大変だった時に、僕は、ユノヒョンに酷いことを言って傷つけた。


〝用がないなら、離してくれませんか?、、、チョン先輩〟


あの時のユノヒョンの悲しそうな表情は、
今でもはっきりと覚えている。

暫く経ってから、ヒョンがS大を落ちたと聞いた時、
僕のせいだって、そんな風に思って、自分を責めた。

力になるどころか、傷つけて、あんなに悲しそうな顔をさせてしまったのは、僕・・・



なのに・・・


「何か欲しいものあるか? 」

・・・・・「・・・・・」

「チャンミン?」

・・・・・「ヒョン、、、」

「ん?」

・・・・・「そんなの、、、いいよ、、、」

「お? 珍しい。チャンミンが遠慮してる」


そう言いながら、ユノヒョンが大きな声で笑う。
その笑い声が、とても懐かしい・・・

もう、長い間聞くことのなかった、ユノヒョンの笑い声・・・


・・・・・「僕だって、ヒョンのお祝いしてないもん」

「バカ、、、弟が、そんなこと気にしてんじゃねぇよ。」


〝弟〟


ユノヒョンは、まだ僕のことを弟だって、そう思っていてくれるのだろうか。
僕達はまだ、兄弟なんだろうか・・・


・・・・・「ヒョン、、、」

「そうだ、チャンミン、、、」

・・・・・「・・・・・」

「遊びに来ないか?」

・・・・・「遊びに?」

「ん、、、」

・・・・・「遊びにって、、、」

「大学だよ、案内してやるからさ・・・」


それは、突然の誘い・・・


「入学するまでに、1度見ておくといいよ。な?」

・・・・・「でも、、、いいの?」

「心配すんなって。何千人って学生がいるんだから、1人や2人、混じってたって分りゃしないよ」

・・・・・「・・・うん、、、」

「お前も、寮に入るんだろ?」

・・・・・「えっ? 寮?」

「まさか、そこから通うのか?」




--- 一緒に暮らそう。---



ヒョンの言葉が、頭を過る。
けど、まだ決めたわけじゃないし、それに、そんなことユノヒョンに言えるわけない。


・・・・・「もしかして、ヒョンは寮に入ってるの?」

「ん、、、そう。案外綺麗で快適。」


そんなこと、全然知らなかった。


・・・・・「寮、、、」


ユノヒョンは、きっともう忘れてるだろうね。


〝毎日楽しいだろうなって、、、毎日お前と通えるし、、、〟

〝一緒に住もうぜ。ルームシェア、、、ってやつ。どう? 〟



あの時、とっても嬉しかった。
そんな風になったら、夢みたいだって、、、そう思ってた。


〝仕方ないから、1年は待っててやる。だから頑張れ! な?〟


たった1年前の事なのに、もう、随分前の事のよう・・・



「寮も見に来ればいいよ。」

・・・・・「ヒョンの、、、部屋?」

「そうだけど?」

・・・・・「どうせ、散らかってるんでしょ?」

「おっ、お前、、、」

・・・・・「綺麗に片づけてくれるなら、行ってあげてもいいよ」

「お前なぁ、、、ったく、、、」


電話の向こう側から、クスクスとヒョンの笑い声が聞こえる。
それにつられるように、僕も笑う。


いつの間にか、僕達は自然に話していた。
少しのぎこちなさは、長く離れていたから。

2人して笑い合いながら、僕は心の中で、
思ってたんだ。


もしかしたら、、、
もしかしたら、ユノヒョンと〝兄弟〟に戻れるかもしれない。

あんなにも、心を乱し、涙を流したのに・・・
諦めと絶望感で、胸が締め付けられたのに・・・


なのに、、、
なのに、ほんの少しの会話で、こんな風に思えるものなんだろうか・・・

けれど、、、
戻れるなら・・・

ユノヒョンと、また兄弟に戻れるなら、、、



・・・・・「ヒョン、、、行くよ。案内、、、してくれる?」



諦めていたものが、
もう一度、この手に戻ってくるなら・・・・・










61へつづく


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真夜中の観覧車。-scene4-






--- 一緒に暮らそう。---


そう言われて、とても嬉しかった。

想像する。
朝起きるとヒョンがいて、〝おはよう〟って挨拶をして・・・
そして、ヒョンが仕事から戻ったら、〝おかえり〟って出迎えてあげる。

テーブルに向かい合って食事をして、
テレビを見ながら、美味しいコーヒーを飲んで、、、

お互いの1日の事を話したり、
楽しいことも、悲しいことも、2人で分け合って、、、


そんな毎日が、僕を待っている。

きっと、ヒョンの傍にいれば、僕は笑って過ごしていける。


けど・・・・・


・・・・・「まだ、決まったばかりで何も考えてなくて、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「でも、そうなれば僕も嬉しいなって思ってる。」

--- うん、、、---

・・・・・「ヒョンの近くに居たいと思ってる。ホントだよ」


僕がそう言うと、僕を真っすぐに見つめていたヒョンの瞳が一瞬揺れて、、、
そして、視線を外す。


--- ごめん、、、ちょっと感情的になってしまって、、、---

・・・・・「ヒョン、、、」


その声がなんだかとても寂しそうで、
僕は思わずヒョンに手を伸ばす。

けれど、僕のその手は、ヒョンには届かなかった。
くるりと背を向け、小さく肩を落とす。


--- ショックだった。だから、、、---

・・・・・「ショックって、、、ヒョン、何が?」

--- 夜の観覧車、、、僕は誰と乗ればいいんだろう、、、---

・・・・・「えっ?」

--- 僕に、彼女がいるって、、、そう思ってるんだろ?---

・・・・・「・・・・・」

--- 信じてもらえないって、、、ちょっと、いや、かなりショックだよ、チャンミン、、、---



ヒョンは、僕に背を向けたまま、キッチンに向かう。
僕は、何も言えず、立ちすくんだまま、その背中を見つめていた。





--- ほら、座って? ---

キッチンから戻って来たヒョンの手には、色違いのマグカップ。
右手のほうに持っていた、オレンジ色のカップを差し出され、受け取る。


・・・・・「ありがとう」


促されて、ソファに座る。
少し緊張した。


・・・・・「ヒョン、僕ね、、、」

---キュヒョンに、彼女がいるかって、そう聞かれたんだ---


僕の言葉を遮り、ゆっくりと隣りに腰を下ろす。
両の掌でマグカップを包んで、ユラユラと揺れるコーヒーをじっと見つめながら・・・


--- だから、いるよってそう答えた。
僕は、チャンミンの事を話したつもりだったんだけど、今思うと、〝彼女〟っていうのは間違ってたね。ゴメン。---

・・・・・「ううん。僕が、勘違いしたから、、、」

--- 僕は、前にも言ったけど、チャンミンだけだよ。信じてほしい---

・・・・・「うん。ヒョンを信じる。ごめんね」


俯いたままだったヒョンが、ようやく顔を上げて僕を見た。
いつもと変わらない笑顔は、やっぱり僕の心を安心させ、癒してくれる。

伸びてきたヒョンの掌が、僕の頬に触れて、、、


--- キス、、、してもいい? ---


どう答えていいのか分からなくて、
僕は口をつぐんだまま、小さく頷いた。


そっと重なった2つの唇・・・
ちょっと冷たくて、でも柔らかくて・・・


--- 観覧車、、、一緒に行こう ---

・・・・・「でも、キュヒョンに何て言うの?」


そんな、少し意地悪な質問をした僕に、
ヒョンは笑って答えた。


--- 世界一愛する人と、永遠を誓ったって、、、そう言うよ---

・・・・・「誓いに、、、行くの?」

--- そうだよ、2人で行こう ---

・・・・・「うん」


それから僕らは、何度も何度もキスをした。
冷たかったキスは、いつの間にか温かく熱くなっていた。

ヒョンを信じよう。
今までよりも、もっともっと。


・・・・・「観覧車、楽しみだね。」

--- うん。楽しみにしてるよ ---








--- チャンミン、ちょっといい? ---


ヒョンのマンションから家に戻って、
上着を脱いだタイミングで、部屋の扉の向こうから、母さんの声が聞えた。


・・・・・「うん、いいよ」


母さんの手には、僕専用のマグカップが乗った小さなトレイ。
テーブルの上に、湯気が立つカップを置く。


--- 温かいミルク、どうぞ ---

・・・・・「ありがと。で、何?」

--- ん、今日ね、隣のチョンさんに出会ってね---

・・・・・「・・・・・」

--- チャンミンの試験の事、気にして下さってたから、無事に合格しましたって、伝えたよ---

・・・・・「うん」

--- それで、、、貴方、ユンホくんには報告したの? ---



〝頑張れよ、チャンミン。上手くいくように祈ってる〟



・・・・・「して、、、ない」

--- 気にかけてくれてるみたいよ、ユンホくん。連絡したら? ---

・・・・・「うん。そうだね」

--- 同じ大学に通うことになるし、母さん、ユンホくんがいてくれるからとっても安心---

・・・・・「分かったよ。連絡しておく。」

--- それと、入学までにいろいろと準備があるから、早めにいろいろと考えましょ? ---

・・・・・「うん」

--- けど、ホント、お母さんホッとしたわ。よく頑張ったね、チャンミン---



部屋の扉が、パタンと閉まる。

テーブルの上のミルクを一口飲んで、
僕はカバンの中の携帯を手にする。


心配、、、してるかな? ユノヒョン・・・




ディスプレイにユノヒョンのナンバーを表示させ、
暫く悩んだ後、僕は意を決してコールした。


コールは4回、、、


先に言葉を発したのは、、、


「チャンミン?」



ユノヒョンだった・・・・・









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真夜中の観覧車。-scene4-





--- チャンミン! こっちこっち!! ---

約束の時間に、僕は少し遅れて到着した。

自動ドアを潜ると、僕を見つけたキュヒョンが、
辺りも気にせず、大きな声で僕の名を呼ぶ。

慌ててテーブルに駈け寄ると、キュヒョンと向かい合わせで、ヒョンが座っていた。


・・・・・「遅れてごめん、、、」


ふっと、テーブルの前で足が止まる。

こういう場合、、、
少し考えて、僕はキュヒョンの隣りの椅子に腰を下ろした、


--- 2人とも、よく頑張った。おめでとう---


ヒョンの笑顔が、真っすぐに見れない。


--- 先生が、いてくれたからだって、2人で話してたんです。な、チャンミン---

・・・・・「う、うん、、、」

--- そんなことない。2人が頑張ったからだよ。で、キュヒョンは、家から通うの?---

・・・・・「そのつもりです。通えない距離じゃないし、早起きは苦手だけど頑張ります。」


ヒョンとキュヒョンが楽しそうに話している隣で、
僕はヒョンから視線を逸らせたまま、俯いていた。


--- チャンミン、どうした? 何かあった? ---


そんな僕に気が付いたキュヒョンが、
僕が来る前に、注文してくれていたのだろう、、、
ハンバーガーとコーラの乗ったトレイを、僕の前にそっと差し出す。


・・・・・「何もないよ。ありがと。」


その場の雰囲気を変えたくて、僕はニッコリ笑ってコーラを手に取り、
ストローに口をつけた。


--- それで、僕は今日、どうして呼び出されたんだろう?---


そんな、僕の心を察したのか、ヒョンが口を切り、話題を変える。


--- あっ、そう、そう、、、---


キュヒョンが、カバンの中から大切そうに取り出したものを、
得意顔でヒョンに差し出した。


--- 何かな? ---

--- 開けてみてください---


丁寧に包装された包みを、ヒョンはゆっくりと開いてゆく。


--- これ、、、---

--- 仁川に出来たテーマパーク、知ってますか?---

--- うん。知ってるよ---

--- そのパークの、1日招待券です---

--- うん。で、、、これを僕に? ---

--- はい。僕とチャンミンから、先生にお世話になったお礼です---


ヒョンは、それを贈ったキュヒョンの意図が分からないのか、
少し不思議そうな顔をして考えている。


--- 良かったら、彼女さんと一緒にと思って・・・---

--- ん? 彼女?---


ヒョンの表情が、さらに歪んでいく。
けれど、そんな表情を、キュヒョンが読み取るはずもなくて・・・


--- 先生、知らないですか? そのパークにある夜の観覧車に乗ったカップルは、
永遠に結ばれるって、、、---


キュヒョンのその言葉で、ヒョンは何故か小さく頷くと、ふっと口元を緩ませた。
そして、定まらなかった視線が、僕に真っすぐに向けられる。


--- へぇ、そうなんだ。嬉しいな。本当にもらってもいいの? ---

--- 勿論、な? チャンミン---

・・・・・「うん、、、」

--- 僕達、、、いや、僕の世話で忙しくて、彼女さんに寂しい想いをさせたかと思って、、、お詫びのしるしです---


キュヒョンの言葉に、ヒョンは笑いをこらえながら、
それでも我慢しきれないのか、クスクスと声を漏らす。


--- 嬉しいよ。ありがとう。遠慮なく貰っとく---

--- 先生。また、観覧車の感想聞かせてくださいよ。彼女さんに喜んでもらえるか心配です---

--- 大丈夫。きっと喜ぶよ。な、チャンミン? ---


ずっと俯いて2人の会話を聞いていた僕に、
ヒョンが突然話を振るから驚いて、、、


・・・・・「えっ? あ、う、うん、、、そう、思います」


そう答えた僕に、ヒョンは何度も頷きながら笑ってた。

そんなこと、僕に聞くなんて、、、
ヒョンは意地悪だ。



--- じゃあ、僕はこれで、、、---

--- キュヒョン。たまには連絡しろよ。食事でもしよう---

--- 勿論です。先生の初任給、狙ってますよ。じゃあな、チャンミン---

・・・・・「うん。学校で」

--- おおっ---



お店を出て、キュヒョンを見送る。
ヒョンと2人・・・

なんだか、居心地が悪くて、、、


・・・・・「あの、僕もそろそろ、、、」

--- 話がある。行こう---


ヒョンが僕の腕を掴んで、
少し強引に、歩き始める。


・・・・・「ヒョン、、、」

--- はい、乗って? ---


開かれた助手席のドア。
ヒョンを見ると、ニッコリと笑っている。

その笑顔に負けた僕は、
仕方なく、助手席に乗り込んだ。



車が走り出す。
ヒョンは、何も言わず前を見据えたままハンドルを握っている。

音楽もかかってない二人だけの車内は、
なんだか空気が重く感じる。

僕は、窓の外の流れる景色を見ているふりをしていた。



どの位、走ったんだろう。
時計を見ると、もうキュヒョンと別れてから1時間近く過ぎようとしていた。


--- 着いたよ、、、---

ゆっくりと車が停車し、エンジンが切られる。


・・・・・「ヒョン、、、ここは、、、」

--- 降りて?---


言われるまま、車から降りて、
歩き出したヒョンの後を追う。

ここは、どこかのマンションのようで、
地下の駐車場から、エレベーターに乗り込むと、ヒョンは12階のボタンを押した。


--- すぐだから、、、---

・・・・・「はい」


静かに上昇してゆくエレベーター。
ヒョンの背中を眺める。

その背中が、なんだかとても冷たく感じて、
それだけで、僕は泣き出しそうになってしまう。

ヒョンに気付かれないように、唇を噛んで、溢れそうになる感情を抑える。


それでも我慢できなくて、そっと後ろを向こうとしたその時、
くるりと身を翻したヒョンと、視線がぶつかった。


--- 少し、ショックだ---

・・・・・「えっ?」


音もなく開く扉。
見ると、いつの間にか目的の階に到着している。


ヒョンは、12階を確認すると、
僕の腕を掴んで、エレベーターを下りる。

そのまま廊下を歩き、一番奥の部屋の扉の前で足を止める。


ズボンのポケットから取り出した鍵で扉を開く。


--- 入って? ---


背中を押され、促された僕は、
少し緊張しながら部屋に脚を踏み入れた。



広いリビングは、温かい光が射しこんで、明るくて開放的だ。
シンプルな家具が一通り揃えられていて、部屋の隅には、いくつかの段ボール箱が置いてある。


--- チャンミン、、、---


名前を呼ばれて振り返ろうとした瞬間、
僕の身体は、ヒョンの腕に抱きしめられる。


・・・・・「ヒョン?」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「ヒョン?」


ヒョンの表情が見えなくて、不安な気持ちが湧き上がる。


--- ここからなら、大学も遠くないだろ?---

・・・・・「、、、、、大学?」


ヒョンの腕が、ゆっくりと僕の身体を解く。
振り返ると、ヒョンは笑ってた。


--- ここで、一緒に暮らさないか? ---

・・・・・「えっ?」

--- 傍に置きたいって、、、言っただろ? 気持ちはずっと変わってない。僕の傍にいてほしい---



この部屋で、、、
ヒョンと一緒に、、、?



窓から伸びる光が、とても眩しくて、、、
僕は、ヒョンを見つめながら、何度も瞬きをした・・・・・








59へつづく


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