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私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。-scene4-







ユノヒョンの車で、一度家に戻る。
母さんは、買い物にでも出かけているのか、家には誰もいなかった。

急いで部屋に駆けあがり、クローゼットの中からお気に入りのセーターを取り出す。
着替えを済ませて、携帯と財布を上着のポケットに突っ込むと、
階段を下りて、キッチンに向かう。

冷蔵庫の中から、お茶を取り出しグラスに注ぐと、
一気に飲み干す。

カラカラに乾いていた喉が、ようやく潤った。


・・・・・「緊張してるのかな?」


そんなことを呟いて、自分で自分に苦笑すると、
テーブルの上の小さなメモに、母さんあてのメッセージを書き込んだ。


〝ユノヒョンに大学を案内してもらいに行って来るよ。〟


・・・・・「これでよしっ」


ふっと目に入った、キッチンの壁に掛けてある母さん専用の小さな鏡。

そこに映る自分を、まじまじと凝視する。
少し、ピン、、、と跳ねてた前髪を手で治すと、
僕は急いで、家を出た。





「おばさんにちゃんと言ってきたか?」

・・・・・「居なかったから、メモ置いてきた。」

「そっか、、、」


助手席の窓から見える冬の空は、グレーの雲に覆われていて、
それだけでも、身震いしそうなほど寒々しく映る。


「寒くないか?」

そう言いながら、僕の返事も待たずに
エアコンの温度を上げる。

そう言うところが、やっぱりユノヒョンだなって、、、、
変わってないなって、思わずクスッと笑ってしまう。


「何? どうかした?」

・・・・・「ううん。」

「腹減ってるんだろ? 向こうに着くまでに、なんか食う?」


目に入った時計は、もうすぐ12時になろうとしている。
そう言えば、さっきからお腹が音を立てていた。


・・・・・「うん! お腹減ったっ!」

「さっきから、お前の腹の音、すんげぇ煩いし」


ハンドルを持って、前を向いたままユノヒョンはくすくす笑ってる。


・・・・・「実は、今日寝坊して、朝ごはん食べられなかったんだよ。」

「よし、じゃあ、何にする? 奢ってやるよ」

・・・・・「ほんと? じゃあ、、、んーっと、、、」


考えれば考えるほど、お腹が空いた気がしてきて、
悩んでいる間も、僕のお腹は派手に音を立てる。


「もう少し我慢できるか?」

・・・・・「どうして?」

「うちの大学の寮の近くに、美味いラーメン屋があるんだよ。」

・・・・・「ラーメン?」

「うん。チャーシューめっちゃ乗ってる。」

・・・・・「チャーシュー!!」

「っていうか、お前相変わらずだな」


ケラケラ笑うユノヒョンの隣りで、
僕は頭の中に、チャーシューが沢山乗ったラーメンを想像して、
さらにお腹の音を派手に鳴らしてた。




--- いらっしゃいっ!---


「おっちゃん、いつもの2つ!」

--- あいよっ! ---



大きな通りから外れた道沿いにある小さなそのラーメン屋は、
お世辞にも綺麗だとは言えない、古びた小さな店だった。

けど、その小さな店内は、沢山のお客さんで込み合ってて、
空いてる席はなかった。


--- おっ、ユンホ? ---

「おおっ、、そこいい?」

--- 座れ、座れ---


一番奥のテーブルに座っている男の人が2人。
ユノヒョンの知りあいだろうか?
ユノヒョンを見つけて、手招きしてる。


4人掛けのテーブルに向かい合って座っていた1人が、席を移動して、
僕とユノヒョンは、空いた席に隣り合わせに座った。


「何なの、お前ら休講?」

--- キム教授が風邪らしいぜ?---

「風邪の方が、逃げていきそうなのにな」

--- マジ、ほんと、そうだよな、、、 ---


楽しそうな3人の会話。
勿論、その中に入れない僕は、ちょっとだけ居心地が悪い。

テーブルの上のグラスに入ったお水を手にして、
コクリと一口喉に通す。


「ああ、、、チャンミン、こいつら、俺の友達。」

--- つーか、ユンホ、、、チャンミン、、、って、この子? 例の? ---

「いいから、黙ってろよ。」

・・・・・「シム、、、チャンミンです。初めまして。」



こういう時は、ちゃんと挨拶をしておかないと、
ユノヒョンの顏が立たない。

僕は小さく頭を下げた。


--- 1限の授業終わったら、速攻で慌てて出てったから、何事かと思ってた。---

--- 可愛い弟を迎えに行ってたのか~---

「お前ら、余計な事言わなくていい」


可愛い弟?
僕は、隣に座るユノヒョンをジッと見た。


「な、なんだよ、、、」

・・・・・「べつに・・・」

--- 来年、ここに入学するんだろ? ---

・・・・・「はい、、、」

--- ユンホがさぁ、すんげぇ喜んでて、、、---

「黙れっ、お前ら、いい加減にしろ」


ユノヒョンが・・・
喜んでる?
僕が、入学することを?


--- 合格発表の日なんか、寮の部屋の中で、うろうろうろうろ、、、ぷぷぷ---

「ほら、お前らもう食ったんだろ? 帰れ、帰れ!!」

--- はいはい、んじゃ俺ら行くわ。---

--- デートの邪魔して悪かったな。---

「お前ら、その口縫ってやろうか?」

--- おー怖っ、、、チャンミン、あとで寮に来いよ。俺が案内してやるからさ。---

・・・・・「あっ、、、は、はい、、、」

「バカヤロ、返事しなくていい」

--- じゃ、あとでな、ユンホ~---



賑やかな店内・・・
ユノヒョンの友達2人は、ケラケラ笑って、手を振りながら店を出て行った。


暫くすると、ユノヒョンはすくっと立ち上がり、
席を移動して、僕達はテーブルを挟んで向かい合う。


何とも言えないおかしな空気が、
僕達の間に流れて・・・

どうしようか、落ち着かないでいると・・・



--- お待たせ~~---


お店の店員さんが、このタイミングでラーメンを運んできた。


--- ユンホくん、今日は偉く可愛い子連れてるね。---

「あぁ、、、高校ん時の、後輩です。今度、うちに入学することになって、、、」

--- そっかー、ユンホくんと同じで、優秀なんだね。また、うちの店、ご贔屓にしてね。---

・・・・・「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。」

--- ささ、、、冷めないうちに食べて食べて---



目の前には、チャーシューがたっぷり乗った、美味しそうなラーメンが2つ。
いい匂いが、僕のお腹を刺激して、今日一番の大きさで派手に鳴った。


「ほら、、、」


差し出されたお箸・・・


・・・・・「ヒョン、ありがと。」

「早く食えよ。」

・・・・・「うん。いただきまーす。」


徐々に満たされてゆく僕のお腹・・・

けど、急いで食べたせいで、ラーメンを喉に詰まらせた僕は、
咽ながらグラスを手にし、慌ててお水を喉に流した。

・・・・・「ふぅ、、、」

残ったラーメンにお箸を付けようとしたとき、


「ほら、、、もっとゆっくり食えって、、、」


僕のラーメンのお鉢に、入れられたチャーシュー3枚。


・・・・・「いいの?」

「ん、、、合格祝い。」

・・・・・「えっ?」

「冗談」


箸でラーメンを掬ったままで、
ユノヒョンが顔を上げる。


「ぷぷ、、、」

・・・・・「まったく意地悪だな、ヒョンは、、、」


2人して、箸を片手に笑い合う。


賑やかな店内の音に負けないくらいに、
僕達は声を上げて笑った。


ユノヒョンの笑顔は、昔とちっとも変わってなかった。

そのことが、とてもとても、、、
嬉しかった・・・








64へつづく


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