※ 無断転載禁止 ! ※ 当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください ※ こちらのお話は、「恋の予感。」の番外編です。 「恋の予感。」をまだ読まれていない読者さまは、是非そちらからご覧になってください。 私の心の中のお話です。
ご了承ください。
--- 無理に誘ってごめんなさいね ---
・・・・・「いえ、、、」
僕は今、カフェの一番奥のテーブル席で、
自分の恋人、、、つまり、ユンホさんの〝元妻〟と、向き合って座っている。
--- たまたま仕事で近くに来てて、、、
それで覗いてみたんだけど、彼、いなかったから、、、---
彼女の言う通り、どうやらユンホさんはお店をお休みしているようで、
ヘルプの従業員さんが、朝からお店を回しているようだ。
--- 昨日はごめんなさいね。あれから、彼、どうだった? ---
まさか、貴女のことで喧嘩しました、、、なんて言えるはずもなくて、、、
・・・・・「僕も、あの後すぐに帰ったので、、、」
--- そう、、、---
自分の顔が、どんな表情をしているかくらい分かってる。
けど、どうしても笑えなかった。
なのに、、、
--- ふふ、、、---
何故か目の前の彼女は、
僕を見て頬を緩めて笑っていて、、、
イラッと、したんだ、、、
・・・・・「何か、可笑しいですか?」
そんな風に言うつもりはなかったのに、
僕はつい、強い口調でそう言いながら、彼女にきつい視線を向けた。
--- そうじゃないの。貴方とっても可愛いんだもの、、、---
この人、僕を馬鹿にしてる?
・・・・・「か、可愛いって、、、」
--- ユノのタイプだなって、そう思ったの。ごめんなさい ---
・・・・・「た、タイプって、、、」
--- 彼のこと昔から知ってるから、、、分かるの---
そう言いながら、ニコニコと笑ってる。
何を考えているのか、分からない。
怪訝な顔をする僕をよそに、
彼女はおもむろに鞄に手を伸ばし、何かを取り出す。
そして、テーブルの上を滑らせて、僕の目の前に差し出した。
--- これ、、、ユノに渡してもらえない? ---
それは、どこにでもあるような鍵、、、
--- この鍵、彼と一緒に住んでたアパートの鍵なの---
・・・・・「アパート、、、」
--- えぇ、私とユノ、結婚してたの。聞いてる?---
・・・・・「はい、、、」
--- 実は、仕事でオーストラリアに行くことになって、こちらにいつ戻れるかも分からないし、
戻ってくるかも分からないから、住んでたマンションを引き払ったの。片づけをしてたら、そのカギが、、、---
鍵をじっと見つめながら、彼女は僕にそう言った。
優しく微笑むその表情、、、
きっと、僕の知らないユンホさんとの思い出が、蘇っているんだと思う。
--- 当時のアパートももうないし、処分してもいいんだけど、
そのアパート、彼のお父様の持ち物だったから、一応、、、---
・・・・・「・・・・・」
--- 昨日、その鍵を渡したくて彼のマンションに行ったの、ごめんなさいね---
・・・・・「別に、僕に謝られても、、、」
--- そう? ならいんだけど、、、引き受けてもらえる? ---
目の前に置かれた鍵と、僕を見つめる彼女の顔。
交互に視線を向けながら、暫く考えて、、、
カギに手を伸ばす。
・・・・・「分りました。ユンホさんに渡しておきます」
--- ありがとう。お願いね ---
スッと立ち上がる姿は、凛としていて美しい。
ユンホさんと並ぶと、きっと目を引いただろう。
--- じゃあ、私仕事に戻るわ。会えてよかった ---
・・・・・「あの、、、」
--- ・・・・・ ---
・・・・・「ユンホさんは、貴方がオーストラリアに行くことを?」
--- いいえ、昨日伝えようかと思ったけれど、それどころじゃなくなったしね ---
・・・・・「なら、直接渡した方が、、、」
そう言う僕に、彼女は笑って首を横に振る。
--- いいの。私達、もう別れを惜しむほどの仲じゃないし、、、、---
・・・・・「でも、、、」
--- 彼のこと、お願いね ---
・・・・・「えっ?」
--- 玄関で貴方を見たときのユノの顔、、、ふふ、、、あんな顔初めて見たわ。
とても大切に思ってるのね、貴方のこと、、、---
・・・・・「・・・・・」
--- じゃあ、、、---
くるりと身を翻し、僕に背中を向ける。
ヒールの音が、カツカツ、、、となり、そしてすぐに止まる。
振り向いた彼女が、、、
--- あ、卵がゆだけど、、、---
・・・・・「えっ?」
--- きっと貴方が作ったら、彼、食べるんじゃないかな? ---
・・・・・「・・・・・」
--- 私、料理はからっきし出来なかったから、、、ふふ---
カランカラン、、、と、ドアベルが鳴り、彼女は扉の向こうに消えた。
風を切るように、颯爽と歩く彼女は、とても美しく力強かった。
ゆっくりと掌を広げる。
ユンホさんと彼女の想い出が詰まったアパートの鍵。
それがいま、僕の手の中にある。
・・・・・「ユンホさん、、、」
カウンターの向こう側、、、
いつもなら、ユンホさんがそこに居て、コーヒーのいい香りがお店を包んでいる。
でも、今日はユンホさんはいない。
主のいないお店は、なんだかとても寒々しくて、、、
ユンホさん、、、
風邪、酷くなってないかな、、、
食事、ちゃんと摂ったのかな、、、
〝チャンミンっ!!〟 昨日、僕を呼ぶユンホさんの掠れた声が頭の中に浮かんできて、、
今更ながら、胸がギュっと締め付けられた。
・・・・・「ユンホさん、、、ごめんなさい、、、」
僕は、鍵を握りしめたまま急いでカフェを飛び出して、
ユンホさんのマンションに向って駆けだした。
6へつづく
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