FC2ブログ





※ 無断転載禁止 ! ※

当サイト内の文章・画像等の内容の無断転載及び複製等の行為はご遠慮ください




私の心の中のお話です。
ご了承ください。



シムさん、ハンコお願いします1






「シムさんが心配で・・・」


あの日からずっと、頭の中に残ってる。
探偵さんの言葉と、そして、去ってゆく背中・・・

あれから、街を歩いてても電車に乗ってても、
何をしてても、僕はいつも探偵さんの姿を探してた。

なんだろう、、、
このおかしな気持ち。

以前から感じてた。
彼を見て〝綺麗〟だと思った。


吸い込まれそうなほど深く澄んだ漆黒の瞳
通った鼻筋
彼の深い情を示す、厚くて魅惑的な唇


彼のベッドで目を覚ました時の、あの心の安らぎとふわふわとした不思議な感覚・・・

想い出すと、胸が熱くなる
心臓の音が、高鳴る
頬が熱を持つ

可笑しいな、、、
僕は、こんな風に感じる気持ちの正体を知ってる。


けど、、、
でも、、、


信じられないけど、、、


これって、

まさか?



心にずっとかかっていた靄が、次第に薄れてゆくのが分かる。

僕は、彼に・・・
探偵さんに・・・



恋、、、してる?

そう、、、恋してるんだ、、、、、





僕をずっと見ててくれた。
知らないうちに、彼に幾度となく助けられていた。


・・・・・「探偵さん」


なのに、僕ときたら、、、


ソファから立ち上がって、ハンガーに掛けてある上着のポケットから財布を手に取る。
そして、その中から取り出したのは、、、


・・・・・「チョン・ユンホ」


僕ときたら、彼の名前すらはっきりと覚えてなかったんじゃないか。
こんなに、痛むほど名刺を手にしていたのに・・・


・・・・・「ユンホ、、、さん、、、」


手にした名刺に、彼の名を何度も囁く。


・・・・・「ユンホさん、ごめんなさい。」


お礼も言わせてもらえなかった。
礼儀知らずだと、嫌われたのかも、、、


「もう、貴方の周りをうろついたりしません。約束します。」


彼の言った通り、あの日から僕の周りには彼は居ない。

感じるんだ。
彼の気配がないことを・・・

今までどれだけ、彼に守られていたかということを、
どうしてもっと早くに気が付かなかったんだろう。




窓辺に立って、マンションの前の通りを眺める。
もちろん、彼の姿はない。

視線を空に向けたら、真っ青の空に一筋の飛行機雲が延びていた。

どうしたら、探偵さん、、、いや、ユンホさんにもう一度会えるかな?


自分の気持ちの正体を確信した僕は、
もうすでに、彼に会いたい気持ちを溢れさせた。



けれど、何も出来ずに時間は過ぎる。

自分の気持ちが何なのか、分からずにもやもやしていた僕・・・
自分の気持ちを知ってしまった、けれど、どうにもできずにもやもやする自分・・・

何をしてても、溜息しか出てこなかった。




--- シムさん、、、お元気がないようですが? ---

・・・・・「いえ、そんなことないですよ」


雑誌の小さな隅に連載していた僕の小説は、
既に完結している。

けれど、評判がよかったらしく、
ほんの小さな記事だけど、別の雑誌の新人コーナーに紹介された。

仕事は順調だ。
連載が終わって、間もなく別の新人小説家の短編小説集に掲載する作品を書くことになった。

本当なら、飛び上がってもいいくらいのことなのに、
なのに、僕の心は晴れない。


いつの頃からか、僕は電車に乗らなくなった。

買い物をするときは、財布に最新の注意を払ってるし、
家に鍵をかけるときは、〝よしっ!〟と声に出してかけることにしてる。
コンビニでも、立ち読みが終わってから買い物をするようにした。


バカみたいだと思うけど、ユンホさんに心配をかけちゃダメだから・・・




ある日の午後。
もう、陽も落ちかけた時だった。

出版社に出向いた後、
僕は、通りで見つけた美味しそうなケーキ屋さんで、
大きなイチゴの乗ったショートケーキを2つ買った。

そして、いつものようにバスに乗り込む。

一番後ろの席に腰を下ろす。
疲れがつい、ため息となって吐き出た。

流れてゆく窓の外の景色・・・

街にネオンが灯りだす。
その様子を、僕はじっと見ていた。

目的のバス停に到着して、僕はカバンの中から財布を手にする。
お金を取り出そうとするけれど、どうしてだか財布が開かない。


・・・・・「あれ???」


あたふたしながらも、どうにか財布を開ける。

けど、力を入れすぎたからか、
僕の手から、跳ねるようにして足元に財布が落ちてしまった。


・・・・・「あ、、、す、すいません、、、」

--- お客さん、、、早くしてもらえませんか? ---


必死でバラまかれたお金を拾い集め、


・・・・・「すいませんでした。」


お金を入れて、運転手さんに頭を下げた。
バスの扉は、目の前で勢いよく閉じられて、急ぐように早いスピードで走り去った。


ぽつんと残されたバス停・・・
僕は、小さくため息をついて、肩を落とす。


そして、、、

失敗をするたびに、こう思う。


〝ユンホさんがいてくれたら〟


そんな風にバカなことばかりを考えて、
そして、また、気持ちが落ちてゆく。

僕は、静かなその場所から、マンションへ向ってとぼとぼと歩きだした。



今日の夜空は、とても綺麗だ。
星がいつもより沢山で、きらきらと輝いてる。


・・・・・「綺麗だな、、、」


街の灯りとは違う、本物の輝き・・・
僕は、その美しい空に視線を奪われたまま、歩いていた。


その時、、、、


・・・・・「あっ!!」


一瞬、宙に浮いたかと思うと、
次に感じたのは、身体の痛み・・・


・・・・・「っ、、、、、、」


暫く痛みで動けなくて、
ようやく辺りに視線をやると、、、


・・・・・「うそ、、、」


どうやら、僕は、マンション近くの公園の脇の広い水路に落ちてしまったようだった。

足元にひんやりとしたものを感じる。
水路の水で足がびしょ濡れだ。

どうにか立ち上がろうとするけど、足首を捻ったのか、
痛みが走って動けない。


バカだな、僕、、、


どうしてこんなにバカなんだろう・・・

冷たい水よりも、痛む足よりも、
辛いのは、自分の心だった。




「大丈夫です。もう、大丈夫・・・」



きっと、ユンホさんなら、そう言いながら笑って僕に手を差し伸べてくれる。


なのに、
どうして、、、


・・・・・「ユンホさん、、、」


どうしていないの?

早く僕を助けてよ、、、



楽しみにしていたショートケーキは、
箱が潰れて水浸しだ。




悲しくて、、、
情けなくて、、、


薄暗い街灯が灯るその場所で、
僕はそっと涙を流した。









15へつづく

読者の皆さま、おはようございます。

一昨日、昨日とお昼のお話の更新をお休みいただき、
そして、ご心配をおかけして申し訳ありませんでした。
昨日1日、ゆっくりして随分良くなっています。


そして、昨日 こころ日和。の別館についてご案内をしましたが、
沢山の方が『フォロー申請』して下さってます。
少しお時間頂きます。暫くお待ちください。
尚、お知らせにも書きましたが、アメンバーさまは現在募集していません。
ご了承ください。



それでは、今日も1日いい日になりますように。
いつもご訪問ありがとうございます。






こころ。

ランキングに参加しています。
ハンコの2人も応援よろしくお願いします(^-^)


にほんブログ村





スポンサーサイト






最新記事