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私の心の中のお話です。
ご了承ください。



・・・・・「担当さん、、、」

--- シムさん、いつもありがとうございます ---


ソジュンさんの病室。
花瓶の水を入れ替えて花を挿していると、扉が開いて担当さんが顏を見せた。


ソジュンさんは、穏やかな顔をしてベッドで眠っている。


--- シムさん、少しお話を、、、お時間いいですか? ---

・・・・・「はい、、、」


担当さんの表情を見て、その話が〝いい話〟ではないことを感じ取る。


--- ソジュンさん、すぐに戻りますね ---


眠るソジュンさんにそう言うと、
僕は担当さんの後を追い、病室を出た。



映画みたいな恋をした。8



弱い冬の陽の光が射す談話室の椅子に腰かける。
担当さんに手渡された缶コーヒーのプルタブを開けて、コクリと喉に通す。


僕の隣りに座った担当さんは、コーヒーを手にしたまま大きな溜息をついた。


・・・・・「何か、、、あったんですか?」


そう聞いた僕に、担当さんは一瞬隣の僕を見て瞳を揺らすと、
すぐに逸らして俯いた。


・・・・・「担当さん?」

---実は、昨日、先生が発作を起こしました ---

・・・・・「発作?」

--- 夕方、シムさんが病室から帰られて直ぐです ---


昨日、、、

ソジュンさんはとても体調がよさそうだった。


〝最近、とても気分がいいんだよ〟


そんな風に言ってたのに、、、


--- 治療の効果が見られなくて、病気が進行していると、、、---

・・・・・「うそ、、、」

--- あの、、、先生に言うなと、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- シムさんには言うなと言われてたんです。けど、、、---

・・・・・「悪いんですか? ソジュンさん」

--- 発作の回数が増えました。激しい頭痛で薬の効きも悪くなっているようです ---


回数?

そんな、、、
発作なんて、僕は何も、、、


--- 不思議なんです。シムさんがおられると発作も起きないし、頭痛も、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 昨日、担当医師に言われました ---




このまま、治療の効果が見られなければ、長くて1年、早ければ半年、、、




うそ、、、

そんな、、、


--- 先生には身内が居ません。お若い頃に、事故で家族を亡くされています ---

・・・・・「僕は何も知らなくて、、、」


そう、、、
僕は、ソジュンさんのことを何も知らない。


--- だから、誰も悲しまないと、、、自分がこの世から消えても、誰も、、、---


ソジュンさん、、、
どうして、、、どうしてそんなことを言うの?


--- シムさん、、、酷いと思いませんか? 僕だって、、、僕だって先生が居なくなったら、、、---


缶コーヒーを持つ担当さんの手が震えている。

グッと唇を噛んで、堪えているけれど、
堪えきれずに涙が頬を伝っていた。


--- 何も出来ないのがもどかしいんです。悔しくて、、、---

・・・・・「担当さん、、、」


ソジュンさん、、、
こんなにも貴方を慕う人が、傍に居るよ。

貴方の小説を楽しみに待ってる人も沢山いるはず、、、

貴方は何も分かっていない。







・・・・・「ソジュンさん、また明日来るからね」


リュックから取り出し、
ベッドの隣りのサイドテーブルに、そっと置く。

小さな小さな、おもちゃのクリスマスツリー。


今日は、クリスマスイブ。


・・・・・「メリークリスマス、ソジュンさん」


眠るソジュンさんの手をそっと握りしめる。
指先がとても冷たくて、その冷たさに泣きたくなった。


今夜、サンタがソジュンさんの元にやってくる。

ソジュンさん、僕がサンタさんにお願いをしたんだよ。
プレゼントはいらないから、だから、ソジュンさんの病気を直してくださいって、、、

だからきっと大丈夫。


僕が居るよ。

ソジュンさんの傍に、、、




眠るソジュンさんを起こさないように、そっと病室を出る。
病院を出て表に出ると、灰色の冬の空からチラチラと雪が舞っていた。


・・・・・「冷えてるな、、、」


コートに首をすくめ、両手をポケットに入れる。
タクシーに乗ろうか迷ったけれど、少し考えてそのまま歩きだした。

薄く積もった雪が、歩を進めるたびにサクサクと音を立てる。
吐く息が白く、頬に冷たい空気が突き刺さる。


ふと、前を見ると、葉が落ちた街路樹の下に、見覚えのあるシルエットが見える。
街灯にぼんやりと照らされて、、、


立ち止まった僕と、視線が交差した。


・・・・・「まさか、、、」


どうして、、、


動けない僕に、少しずつ近付いてくる。
そして、目の前で脚を止める。


「寒くないか?チャンミン、、、」

・・・・・「ヒョン、、、」


驚いてそれ以上言葉が出ない僕を見て、
ヒョンが笑う。

自分の首に巻いた白いマフラーを外して、
僕の首にくるりと巻き付けた。


「よく似合ってる」

・・・・・「ヒョン、どうして、どうしてここに、、、」

「いつもソジュンの病院に居るって、そう言ってただろ?」

・・・・・「違うよ、そうじゃなくて、、、」


ヒョンの掌が、僕の頬に触れて、、、


「イブの夜は、一緒に過ごしたくて、、、」


ヒョン、、、


「ソジュンから、お前を奪いに来た」

・・・・・「ヒョン、、」

「メリークリスマス、チャンミン、、、」


ソジュンさん、サンタさんはいるんだね。
きっと、ソジュンさんの元にも、、、


・・・・・「メリークリスマス、ヒョン、、、」


きっと、、、








86へつづく

読者の皆さま、こんにちは。

お話の中の季節は少し早いですけど、
クリスマスは2人で過ごさせてあげたいですよね。

コメントを下さる読者さまの中にも、
気に掛かってます、、、というご感想を頂いたんですが、
お忘れではないかな、〝ソユンさん〟のことを(笑)

そろそろ登場、、、の予定なので、思い出しておいてくださいね。

今日で11月も終わりです。
早くも12月。

来月もこころ日和。をよろしくお願いします。



※ 昨日の記事に頂いたコメントに御返事させていただいてます♪



それでは、午後も素敵なひと時を♪
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Shangri-La 3






「で、フラれたのか?」


ドンヘに連れられて足を踏み入れたバーは、
絞られた照明と、品のいい音楽が、耳に程よく馴染む居心地のいい場所だった。


--- そう、ストレートに言うなよ、お前はいつもそうだ---


琥珀色の液体が、ドンヘの喉を通ってゆく。

カランと心地いい音、、、
氷がグラスを叩く・・・


「じゃあ、なんて言うんだ?女に捨てられた、、、か?」

--- 少しはオブラートに包めって言ってんだよ---


ガラにもなく、傷ついたふりをするのも、いつものこいつ。

ドンヘは、結構女にモテる。
そして、あまり1人の女に固執したりはしない。


「どうせ、次に控えてるんだろ?」

--- バカ言えよ、、、---


空になったグラスを、バーテンダーがスーッと引き寄せる。
暫くすると、今度はグラスが滑るように差し出される。

ドンヘはすぐに手に取り、一気に喉に流しこんだ。


「おいおい、そういう酒は美味くないぞ」

--- うるさい、黙れ、、、---


ドンヘは小さく手招きをして、バーテンダーを呼ぶ。


--- おなじの、、、---


まさかの、酔っ払いか?

誘ったのはどっちだと思ってるんだ。
飲みたい気分は、俺の方だ。


「潰れても、俺は知らないぞ?」

--- なぁ、ユノ---

「なんだ」


手にしたグラスを目線にまで上げて、
透明の光る氷を眺めている。


--- 俺、惚れた奴がいる---


珍しくシリアスな顔で、隣りに座る俺の顔を見る。


--- こんな落ちた気分になるのは、女にフラれたからじゃない---

「やっぱりフラれたのか」

--- 真面目に聞けよ?---


グラスの酒を一気に飲み干した。
小さくため息をついて・・・


「話せよ? 聞いてやるから・・・」


そう言うと、俺から視線を外し、またグラスに見入っている。


--- こんなに、誰かを想うのは初めてで、考えただけで・・・---

「この歳になって初恋か?」

--- 茶化すな、ユノ。俺、真剣だ---


珍しいこともあるもんだ。
学生の時以来じゃないか?


「高校生の時、お前が熱を上げてた、、、なんていう名前だったか、、、
あ、そうそうチェウン、、、あれ以来か?」


--- ユノ、俺さ・・・---

「・・・・・」





--- チャンミンが好きだ---





え?
今、、、なんて?


「お前、、、冗談やめろよ」


ドンヘの視線は、俺をまっすぐ捕えていた。


--- あいつが心配で、、、---


ドンヘが? 


--- 笑わないんだ。チャンミン、いつも、苦しそうで悲しそうで、、、---


チャンミンを?


--- 引き寄せて、抱きしめてやりたくなる。あいつが、泣くのは見たくない---


好きだと?


--- ユノ、俺、、、---

「・・・・・」

--- チャンミンを愛してる。あいつにも、俺の気持ち、伝えたから・・・---





耳に届く、心地いいメロディーが、
何故か俺の心を抉る。

俺の為に流れる、レクイエムなのか・・・





--- 例え、お前の代わりだとしても、俺は構わない---









24へつづく

読者の皆さま、おはようございます。

ほらほら、ドンヘさんが変なこと言い出したよ(;・∀・)
チャンミンをドンヘさんに取られちゃう~~(/・ω・)/フフ
続きも楽しみにしてくださいね。

気がつけばもう週末。
明日は、末娘が推しのライブで大阪のライブハウスへ。
前回は、上の娘と私がついて行きましたが、今回はお友達と一緒なので、
より楽しい時間になるんじゃないかと思います。
それが終わったら期末テスト!!!
こちらも頑張ってもらわねば!(笑)



それでは、今日も1日いい日になりますように。
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その日は、白い雪がしんしんと降る冬の寒い日だった。


ソジュンさんの病院に来るのは3日ぶり。
ここ数日、授業が忙しくて、来ることが出来なかった。

通い始めて1か月。
慣れた廊下を歩いて病室の前に立つ。

扉を開こうとした手を止める。
ほんの少し開いた扉の隙間から、ソジュンさんの姿が見えた。

薄い病衣のまま、ベッドから抜け出て窓の傍に立ち、降る雪を見つめている。


上着を着ないと、
風邪をひいてしまう、、、


そんな風に思って、慌てて扉を開く。


・・・・・「ソジュンさん、上着、、、」


その刹那、、、

振り向いたソジュンさんが、まるで駆けてくるように僕の元にやってきて、、、


--- チャンミン、、、---

・・・・・「ソ、ソジュン、、、さん?」


僕を抱き締めるその腕が、ブルブルと震えていた・・・



映画みたいな恋をした。8


・・・・・「ソジュンさん?」

--- チャンミンだ、、、チャンミンの匂いがする、、、---


この1か月、ソジュンさんの状態はとても不安定だった。

ぼんやりとしたまま、何も話さない日もあった。

かと思えば、自分が書いた小説の話や、子供の頃の夢だとか、
初恋の女の子の話を、楽しそうに聞かせてくれる日もあった。

けど、どんな時も僕のことは思い出してはくれなかったのに、、、



〝チャンミン〟


ソジュンさんが僕の名前を呼ぶのは、どのくらい振りか、、、
もう、思い出せないほどに遠く感じるけど、、、


・・・・・「ソジュンさん、もしかして、、、」


僕を抱きしめる腕を緩め、
ソジュンさんの瞳が、僕を捉える。


--- 昨日の夜、夢を見て、、、---

・・・・・「・・・・・うん、、、」

--- チャンミンが戻って来てって、僕に手を差し出してくれて、、、---

・・・・・「うん」

--- その手を掴んだら、目が覚めて、、、そしたら記憶がとてもクリアで、、、---

・・・・・「ソジュンさん、、、ほ、ホントに?」

--- あぁ、、、ホントだよ ---

・・・・・「僕が誰だか、本当に分かる?」

--- もちろんだよ。朝からずっと、チャンミンを待ってたんだ---



目の前のソジュンさんは、昨日までとは違う。

僕を見つめる瞳には明るい色が戻り、微笑むその表情はとても明るい。
間違いない。

僕の知ってるソジュンさんだ。


・・・・・「よ、良かった、、、」


思わず僕から手を伸ばして、細いソジュンさんの身体をギュッと抱き締める。


--- ありがとう、チャンミン、、、いつも傍にいてくれて、、、---


僕が辛くて壊れそうな時、手を差し伸べて、傍に居てくれた。
僕が救われたのはソジュンさんが居たから。


・・・・・「治療を頑張ってるソジュンさんに、神様がプレゼントしてくださったんだよ、きっと、、、」

--- ん、、、---


静かな病室は、加湿器の回る微かな音だけ、、、

抱きあう僕らを、窓の向こうに見える白い雪が、
微笑みながら見ているようだった。








--- で、ユンホは? あいつ、どうしてる? ---


ソジュンさんをベッドに促し、
足もとに布団を掛ける。

傍にある椅子に腰かけて、カップに入れた温かいお茶を手渡した。


ソジュンさんの口から、ヒョンの名前が出るなんて思ってもみなかった僕は、
少し驚いて、、、


・・・・・「う、うん。ヒョンは今、釜山にいるんだ」

--- 釜山? 旅行か何か? ---

・・・・・「ううん、仕事で、、、暫くは戻って来れなくて、、、」


ふと、ヒョンの顔が思い浮かんで、、、

どうしてだろう。
分からないけれど、とても寂しさが募って、、、

思わず俯いてしまう。


--- 寂しいね、チャンミン、、、---


その言葉と同時に、
僕の髪をそっと優しく撫でてる、ソジュンさんの温かい掌、、、


--- けど、ユンホは大丈夫だよ ---

・・・・・「・・・・・」

--- あいつは、チャンミンを悲しませるようなことはしない---

・・・・・「ソジュンさん、、、」


顔を上げると、ソジュンさんは微笑みながら小さく頷いた。


窓の外、、、


降る雪が視界を遮り、景色を白一色に染める。



ヒョン、釜山にも雪が降ってる?



会いたいよ、ヒョン。

ヒョンが恋しい、、、
 









85へつづく

読者の皆さま、こんにちは。
ユノヒョンが釜山へ行く予定の1年を、巻きで勧めたいと思います(笑)

娘たちが寒いからこたつを出せと言い出しました。
こたつ、、、まだ早くない?(笑)
極度の暑がりのこころ。です(;・∀・)

昨日から旦那が忘年会で泊まりで大阪へ行ってます。
まず、忘年会早いし、そしてわざわざ大阪に泊まりって?
絶対に夜、悪いことするよね?(笑)ププ
いや、悪い所へ行くのか(笑)(笑)フフフフ



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Shangri-La 3





静かに吹く風が、一瞬止まった時間を呼び戻す。
通りを歩く人の波が、また俺とチャンミンの間を、急ぎ足で過ぎてゆく。

息を吐き、俺は、その場から足を踏み出した。

街のざわめきが、容赦なく俺とチャンミンを遠ざけてゆく。
微かに耳に届く、チャンミンが俺を呼ぶ声・・・

その声も、街を流れる音楽に消されていく。


それでいいんだ。
ここで、チャンミンを胸に抱くことはできない。

少し、痩せていたのだろうか。
遠目では、お前の表情は読み取れなかった。

けれど、確実にお前はそこに居た。
その姿を、一瞬だけでもこの瞳に映せたことを神様に感謝した。


チャンミン・・・
前に進むんだ。

お前が本当に歩くべくき道を・・・
しっかりと、その足で踏みしめながら、前を向いて生きていけ。

振り向かないで、そして、、、
俺を忘れろ。


俺はお前を、いつまでも愛している。
伝えられはしないけれど、分かるだろう?

チャンミン・・・

愛しているなら、俺を忘れろ・・・






その足で、社に戻る。
高層階の自室に脚を踏み入れると、、、


--- よっ! 社長~どこにお出かけでしたか?---


まるで酔っ払いのような口調で、ソファにドンヘが座っていた。


「休暇はどうした?」

---いやさ、やっぱ俺がいないとお前が寂しくて泣いてるんじゃないかと思ってさ---


またか?


「また女にフラれたか?」


図星だったようで、ドンヘの顔が一瞬で赤くなった。

こいつはいつもそうだ。
女にフラれると、やたらと俺を構いたがる。


--- ば、バカ野郎、、、なに言ってんだよ---

「ま、今日はここでのんびりしとけ。どうせ俺も出かける用事はない」

--- 今までどこに居たんだよ?---

「ちょっと散歩だ」

--- お前が散歩ねぇ、、、---


意味ありげな顔をして、俺をじっと見る。


「なんだ?」

---お前さ、女でも作れば?---

「は? なんだ突然、、、」


ドンヘと向き合うようにソファに腰を下ろた。


--- 以前のお前に戻ればいいだろ? それとも、もう女抱けねぇのか?---


こいつの話しは、いつも突拍子もない。


「別に、、、ただ、そんな気になれないだけだ」

--- お前さ、、、---


背もたれに深くもたれ掛けていた身体を起し、
テーブルを挟んで座る俺の方に身を投げてくる。


「・・・・・なんだ?」

--- いつから童貞なんだよ?---

「・・・・・」


女にフラれておかしくなったか・・・
とにかく、こういう時は相手にしないが1番だ。

俺は立ち上がり、デスクに向う。
ペンを持ち、書類に目を通し始めた俺を、ドンヘはじっと見ていた。



--- チャンミン、アルバイト始めたんだそうだ---


走らせていたペンが止まる。


--- 花屋で働いてるらしい。チャンミンらしいと思わないか?---

「そうだな」



俯いたままそう答え、そしてまた、ペンが走り出す。


ドンヘは立ち上がり、扉に脚を向けた。


「ドンヘ・・・」


ピタリとドンヘの脚が止まる。
振り返らず、そのままで・・・


--- ・・・・・ ---

「今日、暇なら飲みに付き合え」


顔を上げず、手も止めることなくそう言うと・・・


--- それは、社長命令か? ---


俺は、心の中で小さな溜息をついた。
そして、顔を上げて、ドンヘを見る。


「ああ、そうだ。社長命令だ。」

--- 了解、、、後で御迎えに上がります。社長---


俺に背を向けたまま片手を上げて、ドンヘは扉の向こうに消えた。







23へつづく

読者の皆さま、おはようございます。

チャンミンは花屋さんでアルバイトをはじめたようです。
凄く似合うと思いませんか?

お話の中でチャンミンがアルバイトをするときは、
花屋か本屋かカフェ(笑)

皆さんに沢山お叱りを受けたユンホさんですが、
次回、ドンヘさんがいい仕事します。
そして、お話が動き始めます。
ご期待ください! 笑







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前回のお話はこちらから →  映画みたいな恋をした。82





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--- ごめんなさい、どちら様でしょうか、、、---

・・・・・「ソジュンさん、、、」


僕に向けられたその笑顔、、、
瞳が不安げに揺れている。

伸ばしかけた手を止め、引き戻した。

今、この時、、、
ソジュンさんにとって僕は、初めて会う赤の他人でしかない。


・・・・・「ごめんなさい、突然、、、」

--- いえ、、、---

・・・・・「僕は、シム・チャンミンと言います」

--- シム、さん、、、---

・・・・・「はい。ソジュンさんにとてもお世話になったものです」

--- そうですか、、、---


ソジュンさんを見れなかった。
視線を逸らし、振り向こうとしたその刹那、、、


--- 泣かないで、、、---


いつの間にか、僕の頬に流れ落ちた涙、、、
伸びてきたソジュンさんの長い指が、その涙をそっと拭う。


神様は残酷だ、、、




映画みたいな恋をした。8





--- 今日はとてもいいお天気ですね、、、---


半身を起こし、窓の向こうの景色を見つめている。

冬の空から、珍しく太陽の光が降り注ぎ、
窓に反射してキラキラと光っていた。


ベッド脇の椅子に腰を下ろし、
僕はソジュンさんの横顔を見つめていた。

随分と痩せた。
伸びた髪が、その表情を儚く見せるのだろうか。

触れたらふっと、消えてしまいそうで怖くて、、、


--- すいません ---

・・・・・「・・・・・」

--- 自分の病のことは理解しています。時折、こうなってしまう ---

・・・・・「担当さん、、、えっと、、、」

--- 分かります。オ・ソンウ、、、---


この時思ったんだ。
担当さんのことは覚えているのに、僕のことは忘れてる。

そのことがとても悲しくて、、、


・・・・・「そうです。その担当さんに少し話を聞きました」

--- そうですか、、、---

・・・・・「・・・・・」


もしかしたら、これからもずっと、ソジュンさんは僕を思い出すことがないのかもしれない。
ソジュンさんの症状は、とても不安定だと担当さんがそう言っていた。


僕はもう、ソジュンさんに何もしてあげられないのだろうか?


ふと、ヒョンの言葉を思い出す。



〝ソジュンの力になってやってくれ〟


ヒョン、、、
僕に何が、、、


--- あの、、、---

・・・・・「はい、、、」

--- もしよかったら、中庭を散歩しませんか? ---

・・・・・「散歩、、、」

--- 今日はとても暖かいし、久しぶりに太陽の光を浴びたくて、、、---


反射した光に目を細めながら、
こちらに視線を向けたソジュンさんは、まるで陽炎のように淡く儚く微笑む。

その笑顔を見て、泣きそうになるのをグッと堪えて、、、


・・・・・「行きましょう」




中庭に出て、ベンチに座る。


・・・・・「寒くないですか?」

--- ん、、、とてもいい気持ちだ ---


ソジュンさんは、何度か小さく深呼吸を繰り返す。


--- 君は僕のことをよく知ってるかい? ---

・・・・・「えっ?」

--- 自分の名前や職業や、、、例えば物の使い方、言葉の意味、、、
そんなことは覚えているのに、自分の過去や大切な人の名前や想い出が頭から消えるなんて、、、---

・・・・・「・・・・・」

---酷いよね、、、神様って残酷なことをなさる---


そう言いながら、遠くを見つめるソジュンさんに、かける言葉が見つからなかった。




ヒョン、、、

僕がソジュンさんのために出来る事なんて、何もないよ。

病気を治してあげられない。
ソジュンさんの忘れてしまった過去を教えてあげられない。

何の役にも立ちそうにない。


けど、、、


ヒョン、言ったよね。
ソジュンさんは僕を忘れないって、、、

僕、、ヒョンのその言葉を信じようと思う。
信じたい。


・・・・・「ソジュンさん、、、」

--- ん? ---

・・・・・「治療、受けるんですよね?」

--- ・・・・・---

・・・・・「何もしないでこのまま悪くなるのを受け入れるんですか?」

--- それもいいかと、そう思ってる---



イヤだよ、そんなの、、、


・・・・・「イヤです、僕はイヤだ」

--- 君、、、---

・・・・・「僕は、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「ソジュンさんに、これからもずっと僕を覚えていてもらいたい」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「〝君〟なんて、呼ばないで、、、〝チャンミン〟って、呼んでもらいたい」



僕を忘れないで、、、


思わず感情が高ぶって、泣いてしまった僕、、、
そんな僕にソジュンさんは少し困った顔をして〝ごめんね〟と小さく呟いた。

そして、、、


--- 僕とまた、こうやって散歩してくれるかな? ---

・・・・・「ソジュンさん、、、」

--- 治療、受けてみるよ ---

・・・・・「ほ、本当に?」

--- きっと、僕は君のことをとても愛していたんだね ---

・・・・・「えっ?」

--- 君の泣き顔を見ると、とても胸が痛む ---

・・・・・「ソジュンさん、、、」

--- 治療、受けるよ。君が笑ってくれるなら、、、---






その夜、、、
僕はヒョンに電話した。



・・・・・「ソジュンさんが、治療を受けるって、、、」

「そうか、良かった」

・・・・・「ヒョン、、、」

「ん?」

・・・・・「あのね、僕、、、」


言葉が見つからなくて、言い淀んでいる僕に、、、


「チャンミン、ソジュンを頼む」

・・・・・「ヒョン、、、」

「あいつを助けてやってくれ、、、」

・・・・・「・・・・・」

「支えてやってくれ、頼む、、、」



僕の言葉をヒョンが引き受けてくれた。

〝ソジュンさんの力になりたい。助けてあげたい。支えてあげたい〟

どこかで言いにくかったそれらの言葉。
ヒョンの気持ちが嬉しかった。


・・・・・「ヒョン、ありがとう」



その日から僕は、ソジュンさんの病室へ通い始めた。



・・・・・「ソジュンさん、おはよう」



ソジュンさんが元気になることを信じて、、、








84へつづく

読者の皆さま、こんにちは。

一昨日、昨日と、〝チーズバーガーとコーラとあなた。〟に沢山応援ありがとうございました。
続編に沢山リクエストいただいて、とても嬉しかったです。
「映画みたいな~」と並行して更新しようかとも思うのですが、どうしよう(笑)
出来るだけ「映画とみたいな恋をした。」を、書き進めていきたいと思っています。
よろしかったら、引き続きお付き合い下さい。
このお話、アクセスも応援ポチもぐんっと少なくて実はとっても寂しいです(>_<)



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Shangri-La 3





--- ユンホさん、僕、孤児院へ帰ります。さようなら---

「チャンミン!! 行くな!! 戻ってこい!! チャンミン!!」







まるで、拷問のような夢。
息を乱し、訳もなく流れる涙・・・


毎夜、夢の中に現れるお前の瞳は、悲しみに包まれ、
ひび割れたガラス玉のように、色もなく、今にも脆く崩れそうだ。


「チャンミン、、、」


広いベッドの上・・・
お前の名を呼びながら、掌でシーツを撫でる。


〝ユンホさん〟


耳の奥から、聞こえてくるお前の声、、、
何度も俺の名を繰り返し呼ぶ。

撫でるシーツには、もちろん、お前の温もりはない。

なのに・・・

お前がいなくなって、随分経つのに、
俺の手は、お前の温もりを覚えている。


「チャンミン」


静かすぎる寝室に、むなしく響くお前の名・・・

忘れたいのに、忘れられない。
チャンミン・・・

俺を、解放してくれ・・・・・









--- で、あの広い屋敷での独身生活はどうよ?---



親父が逝って、半年が過ぎた頃、
俺は、住み慣れたマンションを手放し、子供の頃過ごした屋敷に戻ってきた。



「別に、、、特に何も変わらない」

--- 家政婦でも雇えよ? どうせ、だらしなく片付けもしてねぇんだろ?---

「なんなら、お前も一緒に住むか?」

--- は?---



一瞬、真剣な表情をしたドンヘが可笑しくて・・・


「バカ野郎、マジに取るなよ」

--- 誰がマジなんだよ、俺は男に興味ない。お前が美人の社長令嬢なら、話は別だけど?---

「俺も男には興味はない」

--- ふーん、、、まるで、女には興味があるような言い方だな---



ドンヘが俺を見る目、、、
何が言いたいかは、聞かなくても分かる。

時折、ドンヘが向ける俺への視線は、
俺を責め立てているようで、正直辛い。

いつも、それ以上は何も言えなくなってしまう。







広い屋敷に、毎夜戻ると、
俺を迎え入れるのは、冷たく凍った空気だけ。

ついたため息が、冷たい空気を伝わって部屋に響く。
屋敷の扉を閉め、そのまま奥の部屋に真っ直ぐに向かう。

そして、その部屋に足を踏み入れて、後ろ手に扉を閉めた。


重厚な扉が閉まる重く鈍い音が、広い廊下に響く。

広いこの屋敷の中で、俺が使うのは、この寝室と、隣りの書斎。
そして、浴室くらいなものだ。

食事は外で済ませるし、ほとんどの時間を社で過ごす。

ただ、身を沈める広いベッドの中で、
浅い眠りを数時間取るだけ・・・


そして、決まってあの夢を見る。



--- ユンホさん、僕、孤児院へ帰ります。さようなら---



自分がこんなにも女々しい人間だとは思わなかった。

離れれば、この執着心も薄れ、
揺れる心もいつかは落ち着くだろうと、そう思っていた。


なのに・・・


時間が経つにつれ、大きくなるあいつの存在。
忘れるどころか、より一層鮮やかに蘇る記憶。


〝ユンホさん、おはようございます〟
〝お帰りなさい、ユンホさん〟

〝お腹すいてますか? お食事されますか?〟
〝ユンホさんが似合うって言ってくれたから・・・〟





今夜もきっと、眠れない・・・・・







--- ユノ、今日は予定も特にないし、久し振りに休暇を貰う。よろしく---


その日は、珍しくドンヘが休暇を取った。
俺のスケジュールが空いていることもあったのだろう。

俺は、社の自室から街の景色を眺めていた。
遠目に見下ろすと、忙しなく行き交う人々、、、そして、渋滞の車。


「たまには外へ出てみるか」


何を思ったか、俺は財布と携帯をポケットに突っこんで、街へ出た。

街路樹が風に揺れ、さわさわと音を立てる。
すれ違う人は、そんな風を感じることもなくただ、前だけを向いて歩いてゆく。

久し振りに感じる、音、風、空気、香り・・・
通りの花壇には、季節の花がひっそりと咲いている。


苦笑した。

花に目を向けるなんて、
何年ぶりだろう。

空を仰いで、深呼吸をした。





その時・・・・




何処からか感じる視線。
それを感じただけで、何故だか胸が躍る。



それは、、、不思議な感覚だった。

まるで、その視線の先に居るその人と、俺だけが時の中に居るような・・・
俺たち以外のすべては、時が止まり、静まり返っている。



「チャンミン、、、」


遠くに居るお前が、俺の名を呟いたのが分かった。

声は聞こえない。
けれど、お前の唇が、俺の名を呼ぶときの動きを忘れてはいなかった。


駆けて行き、その頬に触れたい。
揺れる瞳に指をあて、流れる涙を拭ってやりたい。



チャンミン・・・



時が止まる・・・・・






22へつづく

読者の皆さま、おはようございます。
昨日は、前日のバス旅行の疲れでダラけた1日を過ごしてしまいました。

朝のお話を予約し忘れるし(笑)
いつも朝早くにも関わらず、定時に覗きに来て下さる読者さま、
すいませんでしたm(__)m
今日は大丈夫(^-^)

昨日、私の好きな俳優さん(チュ・ジフン)が出演している韓国映画をレンタルしたら、
EXOの誰か(笑)が出演してました。
EXOの人だって分かるんだけれども、名前と顔が一致しません。
シウちゃんだけしか(笑)
シウちゃんはいつも戻ってくるの~(/・ω・)/


それでは、今日も1日いい日になりますように。
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私の心の中のお話です。
ご了承ください。




チーズバーガーとコーラとあなた。





「えっ?」

目の前の〝男〟が、言った言葉が理解できない。


「な、なんだって?」


耳に指を突っ込んで、ぐりぐり回しながら、
もう一度聞く。


・・・・・「す、好き、、、です、、、」


小さな声で、顔も耳も真っ赤にしながら・・・
俺を、、、好き?


「あのさ、俺、男なんだけど・・・」

・・・・・「はい、知ってます」

「だよな」

・・・・・「・・・・・」



うーーーん、、、

確かにこいつ、男にしては色も白いし、目も大きいし、睫毛も女みたいに長い。
肌とか、超すべすべじゃね?


・・・・・「あ、あの、、、」


ふっと気が付くと、いつの間にか俺の人差し指はそいつの頬に触れている。
な、なにしてんだ、俺、、、


「わ、悪りぃ、、、」


ポッと頬を赤くして、俺が触れた頬に掌を当ててる。

と、とにかく・・・


「な、お前、ゲイなの?」

・・・・・「えっ?」


だって、男が男を好きなんだろ?
そう言うことなんじゃないのか?


・・・・・「ち、違います。僕は、貴方が好きなだけで、、、」


目を泳がせながら、黙り込んでしまう。


「とにかくさ、俺は、、、」

・・・・・「ごめんなさい。本当に、、、」


突然、椅子から立ち上がり深々と頭を下げる。
手にカバンを持ち、そのまま背中を向けて歩き出した。


「お、おい、、、待てよ」


足を止めることなく、出口の扉を開いて店を出た。

なんだか後味が悪い。
これじゃあ、俺が悪者じゃねぇかよ。


暫く考えた後、、、
立ち上がって奴を追いかけた。



とぼとぼと歩いている背中を見つけて、後ろから腕をとる。
驚いて振り向いた奴の顏は、涙でぐしゃぐしゃになっていた。






「いいか、ここで10分だけ待ってろ? 分かったな」

・・・・・「はい、分かりました」


店の裏口の扉に立たせてそう言うと、俺は着替えるために店内に戻る。

突然いなくなったことを、パートのおばちゃんに叱られたけど、
ウインクしたら許してもらえた。

急いで着替えて、荷物を持って、、、
タイムカードを押して外に出ると、少し離れた場所で、俯いたままじっと立っているあいつ。

横顔が、なんだか色っぽい・・・


おいおい、俺、大丈夫か?
長い間、女が居ないからつって、血迷うんじゃねぇぞ・・・


「なぁ、お前、これから学校か?」

・・・・・「いえ、もう帰ります」


通りを並んで歩く。
さわさわと、少し冷たい風が通り抜けていく。

ぶるっと身が震えた。

その風が、隣を歩く奴の前髪をふわりと靡かせると、
少し伏せた大きな瞳が、キラキラと光ってた。

なんだ?
なんで俺、ドキドキしてんだ?


「俺さ、地下鉄なんだけど、、、」

・・・・・「僕もです」


聞くと、同じ路線の地下鉄。
この近くの駅から、こいつは3つ先、、、俺は8つ先の終点・・・


改札を抜けて、同じ電車に乗り込む。

昼の地下鉄は、それほど込み合っていなくて、
空いてる席に並んで座った。


「お前さ、大学生なら、学校にいい女沢山いるだろ?」

・・・・・「えっ?」


扉が閉まって、発車のベルが鳴る。


「お前、そこそこいい男なんだからさ、、、」


動き始めた電車。
その〝揺れ〟が、何とも心地よくて・・・


「女が、い、、、、」


俺の記憶は、電車が動き出してものの5分で途絶えてしまった。









・・・・・「あ、あの、、、、着きましたよ」


肩を揺すられて、ふわりとした感覚から意識を戻す。
気が付くと・・・


「ああ、、、」


顔を上げると、真っ赤に染めた顔で恥ずかしそうにした男が、
にっこりと笑っていた。

どうやら俺は、こいつの肩にだらしなくもたれ掛って眠っていたらしい。


・・・・・「終点です。下りないと、、、」


しかも、俺の身体にかけられていたのは、
こいつが着てた、白いニットのカーディガン。


「あぁ、悪い、、、」


手に掴んで、急いで立ち上がると、2人で一緒にホームに降りた。


・・・・・「大丈夫ですか?」

「ああ、悪かったな、これ、、、」


手にしていたカーディガンを差し出す。
黙って受け取って、肩に羽織った。


「お前さ、こんなとこまで・・・」


たしか、乗り込んだ駅から3つ先の駅だったはず、、、


・・・・・「いいんです。とても気持ちよく眠ってらしたから・・・」

「起こせばよかったのに、悪かったな」

・・・・・「いえ、大丈夫です。じゃあ僕は、引き返しますので、、、」

「気をつけてな」


改札の前で、あいつは小さく頭を下げた。

そして、降り立ったホームとは逆のホームに向って歩いてゆく。
小さくなってゆく背中・・・


あいつ、、、
もう店に来ないかな?


あんな言い方して、泣かせてしまったから、もう、、、


・・・・・・・


来ないだろうな。
そう思ったら、いつの間にか身体が動いてた。







あいつがいるであろう、さっきとは反対側のホーム。
ベンチにちょこんと腰を下ろして、何かをじっと見つめている。

よほど見入っているのか、そっと近づいても気が付かない。
静かに隣に腰を下ろして覗き込んだ。


・・・・・「あっ、、、」


驚いて、手にしていた〝それ〟を、さっと隠した。


「お前・・・」

・・・・・「いえ、、、その、、、」


こいつが手にしていたのは、
求人広告に載せるために撮影した、スタッフが並んだ写真。

新聞の折り込み広告。
その中の小さな小さな写真に写った俺の顏・・・


こいつ・・・
おかしな奴だな、、、


「お前、スマホ持ってるか?」


バツが悪そうな顔をしながらも、鞄のポケットからスマホを取り出した。
強引に奪い取って、カメラを起動させる。


「ほら、、、」

・・・・・「えっ?」

「もっとこっち来いよ」


肩に腕を回して、ぐっと引き寄せた。
片腕を伸ばして、、、


「ほら、もっといい顔しろよ」


頬が触れそうな距離。
真っ赤に染まった顔から、熱が伝わってくる。


シャッターの音が、ホームに小さく響いた。








「ほら、これもやるよ」


スマホと一緒に差し出す、
カバンの中をまさぐって見つけた・・・


・・・・・「これ、、、」

「これとこれでチーズバーガーとコーラが半額で食えるだろ?」


それは、俺の働くハンバーガーショップの割引券。

カバンの奥に突っ込んでたから、ちょっと皺になってたけれど、
脚の上でぐっと伸ばして、差し出した。


・・・・・「あの、、、」


受け取ろうとしないで、小さな声を漏らす。


「ん? なんだよ?」

・・・・・「お店に、、、また、お店に行ってもいいんですか?」


俺は一体、
何やってるんだか、、、、


けど、久しぶりだ。
こんなふわふわした気持ち、、、


こいつ、ちょっと面白いかも?



「101回目に使えばいいだろ?」


その俺の言葉に、ふわりと浮かんだ笑みが、まるで花のようだった。



「じゃあな、、、」

・・・・・「はい、あの、、、ありがとうございます。写真も、、、宝物にします」

「おおっ」



手を挙げると、そいつは首をかしげて、
胸のところまで上げた掌を、小さく何度も振っていた。

なんだか眠気も引いて、清々しい気持ちだ。



あっ、
そうだ。


ふっと思い出して、
俺は、足を止めてもう一度振り向いた。





「なぁ、お前さ、名前なんてーの?」








チーズバーガーとコーラとあなた。   fin


読者の皆さま、こんばんは。

昨日と今日との2話で、『チーズバーガーとコーラとあなた。』を更新させていただきました。
最後まで、〝彼〟の名前が出てこなかったんですけど、どうでしたか?

もし皆さんに気に入っていただけたら、
いつかこのお話の続編  『続 チーズバーガーとコーラとあなた。』 をお披露目できるといいなと思います。
本編が2話なのに、続編は39話あるという・・・(笑)フフフ



※ 昨日のお話に頂いたコメントに御返事させていただいてます♪



それでは、午後も素敵なひと時を♪
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私の心の中のお話です。
ご了承ください。




Shangri-La 2





親父の遺言で、ごく近しい人だけ集まり、親父を見送った。
けれど、数年前までの長い間、第一線で「社長」という肩書を背負ってきた人だ。

暫くの間、屋敷には、親父との別れを惜しむ人が後を絶たなかった。


--- 疲れただろ、ユノ、、、コーヒーでも淹れるか? ---

「いや、、、」

--- 会社は心配いらない、スケジュールは調整してある。戻ったら、暫くは忙しいだろうけど・・・---

「ああ、、、」


大きなため息をつき、リビングのソファにドカリと腰を沈めた。


「なぁ、ドンヘ。この屋敷、こんなに広かったか?」


親父が入院してから、この屋敷は主を失くし、暫くは無人だった。
寒々しい空気が、この屋敷全体を包んでいる。


--- ガキの頃、よくこの屋敷でかくれんぼしたよな? あの頃は、もっと広く感じたけど?---

「そう、だったか、、、」

--- ま、俺たちが歳食ったってことだ・・・---


子供の頃、この屋敷は俺たちの恰好の遊び場だった。
自分の家なのに、足を踏み入れたことのない部屋が沢山あって、、、

そんな場所を、ドンヘと2人で〝探険〟するのが好きだった。


--- なんだよ? 久々に、2人で探険するか?---

「バカか、、、」

--- あの頃、家政婦たちに散々叱られたよな?---


顔を見合わせて、苦笑する。


--- とにかく、ユノ、お前は暫く休め。そろそろマンションに戻るか? ---

「少し片付け物をしたいから、明日戻る。付き合わせることになって悪かったな」

--- 分かった。なら、明日連絡して来いよ。それと、、、---

「分ってる、、、」


その先の、ドンヘの言葉を遮った。


--- ユノ。叔父さんも、お前に助けを求めてるんだ。応えてやれよ---


ドンヘは、ソファに座る俺の横を通り過ぎ、肩を叩くと、扉の向こうに消えた。




静まり返る、広すぎる部屋・・・







〝ユンホ、相談したいことが・・・〟




数日前、、、
親父を送った後、久し振りに叔父と話す時間を持った。


--- ユンホ、、、忙しいだろうが、少し時間をくれないか?---


避けているわけではないが、叔父の目にはそう映ったのだろう。
腕を掴まれ、引き留められた。



少し離れたホールの椅子に腰かけ、叔父の話しに耳を傾ける。



--- チャンミンが、笑わないんだ---


たったその一言で、息が詰まりそうになった。
こうなることは分っていた。


〝チャンミン〟


その言葉は、胸が熱くなるほど愛しい名前でもあり、俺を苦しめる名前でもあった。



--- チャンミンがうちにやってきて、初めは慣れない場所と緊張のせいだとそう思っていた。
暫く一緒に過ごして、慣れればそのうち笑顔も見せてくれるだろうと、、、けれど、、、---


「・・・・・」


--- 笑わないんだ。一日中、アルムを抱いて、窓の外を眺めている---

「まだ、そんなに時間が経っていません。そのうち、、、」

--- ユンホ、、、お前を恋しがってる---

「そんなこと、、、」

--- 時々、うなされている。お前の名を呼びながら、、、一度、会ってやってくれないか?---

「いえ、それは、、、」

--- 頼む、、、ユンホ・・・---


叔父は、俺に向って深々と頭を下げた。


--- 止めてください。頭を上げてください---


ゆっくりと頭を上げた叔父は、瞳を潤ませ俺をじっと見つめた。
その姿は、子を想う親の姿・・・

チャンミンは、こんなにも愛されている。
俺の心は安堵した。

今更、俺があいつに会ったとて、どうにもならない。


「僕は、何もできません」


叔父は、俺から視線を逸らせて、小さく息を吐いた。






--- いつだったか、、、チャンミンがアルムに話しかけていた---







〝アルム、あのね、〝愛〟って分かる? 誰かの事を心に思うだけで、ギュって胸が痛くなったり、
勝手に涙が流れてきたりするんだよ? 好きで好きでたまらないことなんだって〟


〝くぅぅん、、、〟


〝だから、僕が愛してるのは、ユンホさんだけだって、そう思うんだ。 ごめんね、アルム。
1番はユンホさんなんだ。でも、アルムも大好きだよ。ユンホさんの次ね〟






--- 僕が愛しているのは、ユンホさんだけだと・・・---

「チャンミンは、今まで愛を知らずに生きてきました。きっと、勘違いしてるんだと、、、」

--- 違う、、、ユンホ、分っているんだろう?---

「何も、分りません。僕には何も・・・」



認めるわけにはいかない。



--- ユンホ、、、---

「僕にはもう、関係ない話です。失礼します」



立ち上がり、背を向ける。



背中に、叔父の突き刺さるような視線を感じる。
けど、気付かない振りをして脚を踏み出す。



これでいい、、、


チャンミン、、、


俺とお前は、もう繋がることはないんだ・・・








21へつづく

読者の皆さま、おはようございます。

意地っ張りユンホさんに皆さんのキツイお仕置きをお願いします(笑)
バス旅行行ってきました。
疲れました(笑)

私、出無精なので、東方神起関係以外での外出って、
ライブの時とは気持ちが違うからか、めっちゃ疲れるんですよね(笑)



ちなみに、書き忘れていたと思いますが、〝アルム〟とは韓国語で〝美しい〟という意味です。






それでは、今日も1日いい日になりますように。
いつもご訪問ありがとうございます。



※ 更新時間遅れました。
定時に覗いてくださったみなさま、ごめんなさいm(_ _)m




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私の心の中のお話です。
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チーズバーガーとコーラとあなた。






「いらっしゃいませーーっ」



眠い、、、、

重力に逆らえず、上下の瞼が仲良く重なりあうのを必死で止める。
あと30分・・・

ようやくバイトが終わる。



〝ユノ、悪いけど、今日彼女の誕生日なんだ。頼む、バイト変わってくれ、な? 〟



24時間営業のハンバーガーショップ。
俺と交代に勤務するはずだった先輩に頼まれて、俺は昨晩から寝ずに働いている。

もうすぐ昼の12時だ。
やっと帰れる・・・


眠い・・・






最悪のコンディションの俺。
そんな時、俺は可笑しな奴と出会った。





「次の方~っ、ご注文どうぞ~~」



よし、この客で最後だ。
メニューを差し出して、注文を待つ。

けど、声が聞えない。
不思議に思って顔を上げると、色の白いやたらと目の大きな男が、俺をじっと見つめていた。


視線が合うと、大きな目をさらに大きくして、ぎこちない動作で目を逸らす。

なんだ、こいつ・・・


「お客さん、注文、、、」


ったく、早くしろよ。
寝てないし、疲れてんだよっ、俺は機嫌が悪いんだ。


・・・・・「あ、あの、、、」

「はい、どーぞー」

・・・・・「チ、チーズバーガーと、コーラ、、、そ、それと、、、」

「・・・・・」


チーズバーガー、、、コーラ、、、
言われた順に、レジに打ち込んでいく。


・・・・・「それと、あ、貴方を・・・」


それと、、、貴方、、、、




・・・・・・・・・・・・・・・ん?




貴方って、そんなメニューあんのか?


「すいません、もう一度お願いします」

・・・・・「は、はい、チ、チーズ、、、」

「チーズバーガーとコーラ、、、で?


イライラした気持ちが、言葉に出てしまう。

こういう時、俺ってホント、客商売向いてないよなって思う。
店長が居なくてよかった。


・・・・・「あ、貴方、、、を、、、」


こいつ、、、
ふざけてんのか?

俺に喧嘩売ってんのか?

女みたいな可愛い顔しやがって、、、、


「お客さん、ふざけないでくださいよ」


レジに向けていた視線・・・
凄むように目を細めて、その客を睨みつけた。



うっ、、、、、、お、おい、、、




・・・・・「ご、、、ご、ごめ、、、な、、、さ、、、」


大きな目に、今にも零れそうな涙を溜めて、
わなわなと唇を震わせている。


「お、おい、、、、な、なんだよ、泣くなよ、、、」


その様子に気が付いた周りの客がざわつきだし、
そして、その視線は俺に向けられる。


--- ねぇ、あの店員、お客さん泣かしてるよ、最悪~---

--- 見てよ、すっごく怖い顔してる。可哀想だね、あの子、泣いてるよ---


店内にいるすべての客が、強い視線で俺を見ている。



う、嘘だろ?
俺が何をしたっていうんだよ?


「な、泣くな、、、な? ったく、、、なんなんだよ、、ちょっと待てよ?」


慌てふためいた俺は、急いでトレイにチーズバーガーとコーラを乗せると、
カウンターを飛び出し、泣き続けている男の腕を引いた。


「ほら、こっちこい」






店内の奥の席までそいつを引きずって、椅子を引いて座らせる。


・・・・・「ご、ごめんなさ、、、」


さっきから、ごめんなさいとしか言わないそいつを見て、ため息をついた。
小さなテーブルの上にトレイを置いて、真向かいの椅子に腰を下ろした。

シュワシュワと、コーラの泡がはじける音が、
ますます俺をイライラさせた。


「俺さ、昨日の夜からずっと働いてて、眠いんだよね、、、」

・・・・・「は、はい、、、」


テーブルの上のコーラに手を伸ばし、ちゅーっとストローを吸って、
コーラの刺激を喉に感じた。


「で? お前なんなの?」


俯いたまま、小さく肩を揺らしながら泣いている。
泣きたいのはこっちだって、、、


「さっきの、どういうこと?」


椅子の背もたれに背中を預けて、腕を組みながら返事を待った。


・・・・・「き、今日、、、100回目なんです、、、」

「は?」


そいつは、喉をごくりと鳴らすと、小さな声で話を続けた。


・・・・・「僕、この近くの大学に通ってます。半年くらい前に、初めてこのお店に来ました」

「・・・・・」

・・・・・「そ、その時に、僕の注文を聞いてくださったのが貴方で、、、」

「はぁ、、、」

・・・・・「そ、その時に、、、その、、、」


俯いたまま、ちらりと上目遣いで俺を見る。

こいつ、女みたいだな、、、
男だよな?


・・・・・「き、決めたんです。100回目に、、、100回目に貴方に伝えようって、、、」

「なんの100回目なんだよ?」

・・・・・「貴方に、注文するのが・・・」

「え?」


俺?

100回って、、、
相当な回数だよな?

しかも、半年の間に・・・


全く気が付かなかった。
ってか、俺、あんまり客の顏見てねぇしな、、、


「悪い、覚えてねぇ、、、」

・・・・・「いえ、いいんです」


また、泣き出しそうなそいつを止めるために、
言葉を続ける。


「で、俺に伝えるって? 何を?」


そいつはまた、視線を俺から逸らせた。


・・・・・「そ、その、、、」

「まさか、チーズバーガーとコーラが好きだって、それを言いに来た訳じゃないだろ?」

・・・・・「はい、それは、、、」

「ったく、ウジウジしてんじゃねぇよ、、、はっきり言えよ! 男だろ?」


俺のイライラが頂点に達する。
早く帰って寝たいんだよ!


ついつい、声が大きくなってしまった。

そんな俺を、顔を上げたそいつは、驚いた顏で見つめた。
じわじわと、また涙が溢れてきて、、、


「ちっ、泣くなよ、、、、」


瞬きをすると、キラキラと光る幾粒もの涙が、白い頬を伝って落ちた。




・・・・・「あ、貴方が、、好きなんです、、、、、」








2へつづく

読者の皆さま、こんにちは。
現在、実家の家族とバス旅行中のこころ。です(笑)

今日は、時間がなくていつものお話を準備できなかったので、
「チーズバーガーとコーラとあなた。」を更新させていただきました。

このお話は、旧館で2話完結で更新したお話ですが、
のちに39話の続編があり、全41話となっています。

今回は、今日と明日で、本編2話を更新させていただきます。

24時間営業のハンバーガーショップで働くユノと、
ユノに一目惚れした〝彼〟の短編です。


よろしかったら明日の午後もおつきあいくださいね。




それでは、午後も素敵なひと時を♪
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Shangri-La 2






--- 社長、おはようございます---

「おはよう」

--- 今日のスケジュールですが、、、---

「午後からだったか?」

--- そうです。担当医から、今後の治療方針についての説明が・・・---



チャンミンが、マンションを出てから、半年が過ぎた。



〝さよなら、、、〟



あれからチャンミンは、ドンヘのマンションで暫く過ごした後、
叔父の家に引き取られた。




--- ユンホ、死んだ息子が帰って来てくれたんじゃないかと思うよ---

「チャンミンを、どうかよろしくお願いします」

--- ユンホ、たまには会いに来てやってくれ。時々、寂しそうなんだ。きっとお前を恋しがってる---




あれから一度も、チャンミンとは会ってはいない。
何度か叔父からの連絡を受けたが、仕事にかこつけて叔父からの誘いを断っていた。

きっと、チャンミンも俺とは顔を合わせにくいだろう。



「ドンヘ、病院へは俺1人で行く。悪いが、、、、」

--- 社長---


俺の話の腰を折り、厳しい表情で俺を見る。


「なんだ」

--- 心配なら、ご自分でお会いになったらいかがですか?---


ドンヘとのこんな会話を何度繰り返しているだろう。


「いつもの店のいつものやつ、届けてきてくれ」


チャンミンが好きだった、会社近くの洋菓子店のケーキ、、、


--- はぁ、、、それは社長命令ですか?---

「ああ、そうだ。頼む」



ドンヘはそれ以上何も言わず、大きなため息を落すと、部屋の扉を乱暴に閉めた。



デスクから立ち上がり、ガラス張りの壁に掌をあて、外の景色に視線を向ける。


昨日までの天気が、一転、、、
どんよりとした灰色の雲が、ソウルの空一面に広がっていた。


「雨か・・・」



チャンミン・・・

新しい家で、お前は笑っているだろうか。
新しい父と母のもとで、愛に包まれているだろうか。


チャンミン・・・

俺を忘れて、お前は未来に心を向けているだろうか・・・



そうであってほしいと思う反面、まるで捨てられた子犬のような絶望が心を覆うのは、どうしてだろう。

フッと小さく苦笑した。




逢いたい、チャンミン・・・・・

瞳を閉じて、空を仰いだ。







--- ということで、ここからの治療は正直申しまして・・・---

「ただの延命にしか過ぎないということですね」


ずっと、病院に入院していた親父の容態が急変した

--- 残念ですが・・・---

「先生、自然に、、、逝かせてやりたいと思います」

--- ユンホさん、しかし・・・---

「延命治療してまで、生きていたいと思うような人ではありません」

--- ですが・・・---

「父から、全ての権限を引き継いでいます。もしもの時はそうしろと、、、」



数年前、全ての業務と決定権を親父から受け継いだとき、
親父は病院のベッドの上で、笑って言った。


〝ユンホ、私には、酸素マスクも、ただ生き延びる為だけの薬もいらない。
そうしてほしい。頼んだぞ〟



自分の命の長さまでも、息子に委ねると、、、、




--- 分りました。ユンホさん、他にも何かありましたら、何なりと。
お父様の事は、そのように取り計らいます---

「先生、よろしくお願いします」




何もしなければ、長くて3カ月、、、短ければ数日・・・



病室に脚を踏み入れると、親父は痩せた身体に数本の管をつけ、静かに眠っていた。



親父・・・

言われた通りにするよ。
それが、親父の希望なんだよな?



--- ユンホ、、、か?---


俺の気配に感づいたのか、
親父が、ゆっくりと瞼を開いた。


「ああ、どうだよ? 調子は・・・」

--- そろそろ神様がお迎えに来るようだ---

「バカ言うなよ、ったく・・・」

--- ユンホ・・・---


親父の視線は、窓ガラスの向こう。
いつの間にか、灰色の空から涙のような粒がポツポツと落ちてきた。


「迎えがくるとか、、、そんなこと言う奴に限って長生きするってよ」


親父は笑っていた。


--- そうか・・・---



次第に、雨音が大きくなり、
静かな病院の部屋に、響き渡る。


--- 頼む、ユンホ・・・---


布団の中から、震える腕を俺に伸ばしてくる。
そっと、その手を取って握りしめた。


「何も、心配なんかいらない。早く良くなれよ」







その日から、ちょうど1か月後・・・


親父は天に向って飛びたった。









20へつづく

読者の皆さま、おはようございます。

今日は、実家の母と妹2人と私、4人でバス旅行に行ってきます。
朝出て夜戻ってくる日帰りなんですけど、
母が娘3人とのお出かけをとても楽しみにしていたので、
楽しんでくるとします(笑)

14時更新のお話ですが、
昨日、急用で家を空けていて、お話を準備できなかったので、
本編2話完結の旧館のお話を、少し手直しして更新します。
今日と明日の2日です。

よろしかったらお部屋を覗いてみてくださいね。
お待ちしています♪


※ 昨日の『Shangri-La 18』に頂いたコメントに御返事しています。
『だってすきだから。完結話』に頂いたコメントは、後日お返事させていただきますね。



それでは、今日もいい日になりますように。
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