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私の心の中のお話です。
ご了承ください。

横恋慕 2 - c side -


~ c side ~




--- 好きなの、、、チャンミンくんが、、、好き、、、---



何も言えなかった。
あんなに真っすぐに見つめられて気持ちを告げられたら、
曖昧な言葉で誤魔化すことは出来ないとそう思った。

けれど、今は僕にはすべきことがある。
それは、ユナにも伝わった。

今は、それで十分だ。
未来の事なんて、誰にも分からない。

とにかく、今出来ることを精一杯やるだけ。
心にそう誓った。




それから数日後。

学習塾での補習が急遽決まった僕は、
地下鉄の時刻表とにらめっこしていた。

友達は、皆、父さんや母さんが迎えが来るらしいけど、
昨日から母さんの体調がよくないのを知ってる僕は、家に連絡するのをためらっていた。

フッと、思い出したのは、ヒョンの言葉・・・・・



〝何かあったら、ここに連絡しておいでよ、、、例えば、今日みたいに塾の帰りが遅くなる時とか、、、〟



知り合って間もない頃、ヒョンがそう言ってくれたのがとても嬉しかったのを忘れていない。

暫くヒョンの声も聴いていない。

前に電話をしたときに、断られてしまったから、
僕はヒョンに自分から電話することに少し臆病になってしまっていた。


会いたいな、、、


補習の合間の休憩時間。
僕はスマホを取り出しヒョンにコールした。
長いコール音が、耳に虚しく響く。

まだ、仕事かな?
それとももしかして、、、

嫌われてしまったんじゃないかと、そんな根拠のない考えまで浮かんできて、、、
泣きそうになった時、、、


「もしもし? チャンミン?」


ヒョンの声・・・

咄嗟にスマホを持ち換えて、声をあげた。


・・・・・「ヒョン? 今どこにいるの? あのね、僕、塾が遅くなりそうで、、、それで、、、」


後で思えば、恥ずかしいほどに必死だったと思う。

何か理由がないと、ヒョンには連絡しちゃいけない。
そんな風に、心のどこかで思ってて、、、

塾の帰りが遅くなるから、、、
そんな理由で、ヒョンを誘ったんだ。


「分かった。すぐに行くから、、、待ってろ」


会いたいと思う気持ちが、僕の声に乗ってヒョンに届いたのかも、、、

電話を切って、スマホを胸に押し当てた。
ヒョンに逢える。




補習が少し伸びて、塾を出ると友達はみんな親が迎えに来ている。


--- チャンミンくん、良かったら乗ってく? ---


ユナがそう声をかけてくれたけど、


・・・・・「ううん、大丈夫。迎えに来てもらうから、、、」

--- そう、、、じゃあ、、、---


ユナを見送って、僕はヒョンとの約束の場所に走る。
すぐそこの角を曲がればヒョンが居る。


テキストが沢山入ったリュックが、背中で大きく揺れた。


・・・・・「ヒョン!」


ヒョンの目の前で脚を止めて、息を整える。

乱れた首元のマフラーを、ヒョンが直してくれた。

さっきまでお酒を飲んでいたらしくて、
街灯の下のヒョンの頬が、少しだけ赤らんでいるように見えた。


タクシーを拾うというヒョンを、少し強引に止めて、
〝歩こう〟と誘った。

この寒空の下、歩くなんてどうなんだって思ったけど、
タクシーだとすぐに家に着いちゃうから、
ヒョンと歩きながら、少しでも一緒に居たいとそう思ったんだ。

歩こうといった僕に、ヒョンは驚いたようだったけど、
でも、僕の我儘を何も言わずに聞き入れてくれた。



歩きながら、勉強のことを少し話して、、、
でも、ヒョンに伝えたいことは別の話。

どう切り出していいのか悩んだ挙句、


・・・・・「この前、話したこと、、、覚えてる?」


そんな回りくどい言い方をしてしまう。
けど、ヒョンはすぐに察してくれた。

返事をしたのかと聞かれて、うん、、と答えると、
たった一言〝そうか〟って、それだけで、、、

どう答えたのか、気にならない?
僕のこんな話なんて、ヒョンにはどうでもいい事なのかな、、、

なんだか悔しくて、、、
僕だけが、ヒョンを気にしてる。

ヒョンは、僕の事なんて、、、
そう思うと、悲しくて足が止まってしまう。


〝気になるか?〟


なんて、自分から聞いたりして、、、

すると、ヒョンは立ち止まった僕の元まで戻ってきてくれて、


「気になるよ、可愛い弟だからな、、、」


そう言いながら、ヒョンの大きな掌が、僕の髪を優しく撫でる。
嬉しくて、、、でも、子供みたいに拗ねた自分が恥ずかしくて、、、


・・・・・「ヒョンのばか、、、」


そんな言葉で誤魔化して、
恥ずかしさを隠すため、僕はヒョンを置いてスタスタと歩き出した。



僕を追いかけるように速足で追いついたヒョン。
隣に並んだヒョンは、僕のご機嫌を取るようにチラチラと顔を覗き込んでくる。

そんなヒョンに、僕は無性に甘えたくなったんだ。


冷たくなった左手をヒョンのコートのポケットに差し込む。

すると、すぐにヒョンの温かい手が僕の手を包んで、、、
そして、僕の手をギュッと握ってくれたんだ・・・・・







28へつづく

読者の皆さま、こんばんは。
早いもので、もう1月も今日で終わりですね。

寒い日が続きますが、
皆さまお身体にお気をつけて、温かくお過ごしくださいね。

2月もよろしくお願い致します。




こころ。

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私の心の中のお話です。
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真夜中の観覧車。-scene6-






・・・・・「イェ、、、リン?」

--- 久し振りだね、チャンミンくん。---


女の子って、暫く会わないうちに、こんなにも変わるものなんだろうか、、、

イェリンの浴衣姿を見るのは2度目だけど、
高校生だったあの頃とは全く違う、大人の女性に変身していた。


・・・・・「ごめん。分からなかった。」

--- 何なの? お前ら知りあい? ---


ユノヒョンの友達が、不思議そうに僕とイェリンの顔を見る。


--- うん。ミファ先輩と4人で会ったことがあるの。 ね。チャンミンくん。---

・・・・・「う、うん、、、」

--- 元気だった? ---

・・・・・「うん。イェリンも、元気そうだね、、、」


彼女には、申し訳ないことをしたという気持ちがあって、
そして、、、


〝チャンミンくん、チョン先輩が好きなんでしょ?〟


彼女は知ってる。
僕が、あの頃、、、
ユノヒョンに心を寄せていたということを、、、


「もう暫くこっちに居るから、また連絡するよ」

--- ああ、そうしろ。 連中呼んで飲もうぜ---

「あぁ、、、じゃあ、、、チャンミン、帰ろう」

・・・・・「うん、、、」

--- チャンミンくん、またね。---

・・・・・「うん、また、、、」


ユノヒョンの友達に小さく頭を下げ、
歩き出したユノヒョンの後に続く。


少し歩いたところで、、、


--- チャンミンくん ! ---


イェリンの呼ぶ声に、脚を止めて振り向いた。
小さく手招きする彼女に、ユノヒョンを見ると、


「行って来い。向こうで待ってるから、、、」


そう口にして、ユノヒョンは僕を置いて歩き出す。
仕方なく、僕はその場に自転車を置いて、脚をくるりと戻し、イェリンの立つ場所まで戻った。


--- チョン先輩、どう? ---

・・・・・「あ、う、うん、、、元気だけど少し無理してる」

--- そう、、、あのね。---

・・・・・「うん。」

--- ミファ先輩に最後に会った時ね、もうずいぶん前だけど、、、---

・・・・・「・・・・・」


〝元気になったら、2人を祝福で出来そうな気がするの〟


--- そう言ってた。---

・・・・・「・・・・・」

--- 先輩、知ってたみたいだよ。2人が両思いだって、、、---

・・・・・「イェリン、それは、、、」

--- 私、あの時チャンミンくんに酷いこと言って、ずっと謝りたいって思ってたの。---



〝ミファ先輩から、チョン先輩を取らないで、、、〟



--- ごめんね。---

・・・・・「そんな事、気にしなくていい。」

--- チョン先輩、助けてあげてね。ミファ先輩、きっと心からそう思ってると思う。---

・・・・・「うん。ありがとう、イェリン、、、」




--- おーーーい、イェリン! 行くぞーーー!! ---



遠くに止まった車の運転席から、
ユノヒョンの友達がイェリンを呼んでる。


・・・・・「早く行かないと、、、」

--- 今、彼と付き合ってるの。---

・・・・・「そっか。幸せ?」

--- うん。とっても。---

・・・・・「良かった。」

--- じゃあ、またね。---

・・・・・「また。」

--- チャンミンくんも、幸せになってね。---



浴衣の裾を気にしながら、僕に小さく手を振って、
イェリンは彼の元に向かう。

車に乗る前に1度振り向いて、大きく手を振る。
それにこたえるように僕が手を振ると、嬉しそうに笑って車に乗り込んだ。

イェリンが乗った車を見送って、自転車に跨り走り出す。
ユノヒョンの姿を探して、少し走らすと、
大きな橋のたもとに自転車を止めて、空を見上げてるユノヒョンを見つけた。



「おっそい、、、、」

・・・・・「ごめん、ヒョン、、、」

「元カノと内緒話か?」

・・・・・「そんなんじゃないよ、意地が悪いな、、、」

「ほら、、、、」

・・・・・「サンキュ、、、」


差し出されたのは、缶コーラ。
プルタブを開けて、喉に流し込んだ。


・・・・・「んーっ、、、シュワっとする~」

「ふふ、、、」

・・・・・「ヒョン、、、」

「ん?」

・・・・・「今日、すごく楽しかった。ありがとう。」

「そっか、、、」



2人して、夜の空を仰ぐ。
綺麗な花火が広がっていた空には、
小さな夏の星たちが、キラキラと瞬いていた。


「俺も、、、、」

・・・・・「・・・・・」

「俺も、楽しかったよ、チャンミン、、、」





ユノヒョン、、、

僕たちきっと、これからもこうやって、
兄弟でいられるよね?



来年の夏祭りも、、、、




・・・・・「来年も来ようね、ヒョン、、、」

「そうだな、来年も、、、」



今日みたいに、一緒に花火を見よう、ユノヒョン、、、、、








94へつづく

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真夜中の観覧車。-scene6-







「ほら、乗れよチャンミン。」

幻影だと分っていても、
僕に微笑みかけるミファさんの顏が、僕の心を締め付ける。


〝一緒に、、、帰ろう、ミ、ファ、、、〟


ユノヒョンの、苦し気なあの声、、、
きっとミファさんは、納骨堂から僕たちと一緒にここに戻ってきてるんだね。


「チャンミン? どうした?」

・・・・・「ヒョン、、、」

「ん?」

・・・・・「久し振りにさ、自転車で行かない?」

「えっ? チャリで?」

・・・・・「うん。」


なんだか、ヒョンの車の助手席に座る気持ちになれなかった。

ユノヒョンは、僕の言葉に車のドアを閉める。


「いいけど、、、」

・・・・・「そうしようよ。」

「お前がそうしたいなら、、、」


お互いの家から自転車を持ち出し、
僕たちは隣に並んで漕ぎ始める。


・・・・・「気持ちいい~」

「チャリなんて、久しぶりだ」


夏の湿った風を切りながら、ユノヒョンと坂道を下ってゆく。

隣りをちらりと見ると、ユノヒョンはとても気持ちよさそうに、
短く切った髪に風を受けていた。

きっと、ユノヒョンの自転車の後ろには、細い腕をユノヒョンの腰にぐるりと回して、
ギュッとしがみ付いてるミファさんが居るはず。

少し複雑で、胸がざわざわとしたけれど、
2人のそんな姿は、とても自然で当たり前のように思えたんだ。


・・・・・「ヒョン!」

「んー?」

・・・・・「かき氷食べようよ」

「俺、イチゴーっ!」

・・・・・「僕はレモーンっ!!」


僕たちは、まるで小学生のように、
自転車のペダルから脚を上げて、坂道を下ってゆく。

ただ、ひたすらにユノヒョンの事が好きで仕方なかった幼かった僕・・・
そんな僕が、戻ってきたようだった。




「冷たっ!」

・・・・・「んーーーっ、、、キーンとする」


夏祭りの境内は、親子連れや高校生たちのグループで賑わっていた。
人の波をかき分け、かき氷を手に、少し境内から離れた場所のベンチに腰掛ける。


・・・・・「花火まだかな?」

「もうそろそろじゃね?」


かき氷を食べながら、すっかり暗くなった空を見上げる。


・・・・・「ヒョン、一口頂戴。」

「じゃあ交換。」


お互いの手の中にあるかき氷をカップごと交換して、スプーンで掬って口に入れた瞬間、、、


ドン!


と、大きく鈍い音が聞えたかと思うと、、、


・・・・・「わぁ、、、凄い、、、」


夜の空に、大きな大輪の花が咲く。


「綺麗だな、、、」

・・・・・「うん。」


僕たちは、暫く次々と打ち上げられる花火を見上げてた。
ふっと、視線を下ろした僕の目に、少し前方で仲良く並んで花火を見ているカップルの姿が映る。

その2人が、2年前に見たユノヒョンとミファさんに見えて、、、


本当なら、今、ユノヒョンの隣りにいるのはミファさんなのに、、、
そんな想いが、僕の胸の中にぐっと込み上げてきた。


「チャンミン?」


名前を呼ばれて、ハッと我に返る。
隣りを見ると、ユノヒョンが僕をじっとみている。

少しだけ、悲しそうに目じりを下げて、、、


「どうした、チャンミン? 」

・・・・・「ヒョン、、、」

「ん?」

・・・・・「花火、、、」

「・・・・・」

・・・・・「ミファさんも、、、見てるよね、、、、」



思わず彼女の名前を、口にしてしまった僕に、
ユノヒョンは、暫く表情を固める。

けれど、すぐにフワリと笑って、僕から視線を外し、空を見上げた。


大きな音と、次々に空に浮かんでは消える花火、、、



「そうだな、、、きっと、浴衣着て空を見てる。」

・・・・・「うん、、、きっと、、、」


僕には、ユノヒョンが見ているのは花火じゃなくて、、、
そのずっとずっと先にいる、ミファさんの笑顔じゃないかって、そう思ったんだ。



花火が終わって、僕たちはまた境内に戻る。

時々、知った顔に出逢うと懐かしくて立ち話したり、夜店で色んなものを買って食べたりして、
自分が大学生だったことを忘れそうになるほど、僕は子供の頃に戻ったように燥いでしまった。


「そろそろ帰るか?」


時計を見ると、午後10時になろうとしている。
気が付けば、境内を埋めていた沢山の人も少しずつ減っている。


・・・・・「うん。帰ろう、ヒョン。」


境内を出たところにあった出店で、ユノヒョンにたい焼きを買ってもらって、
僕たちは、熱々のたい焼きをかじりながら、片手で自転車を押して、歩き出した。


--- アレ? ユノ? ---


背後からの声に振り向くと、、、


「おお、、、久しぶり」


ユノヒョンの友達なのか、
その人は、綺麗な浴衣を着た女の人と一緒に、僕たちに近付いて来た。


--- やっぱりユノだ。お前、来てたのか? ---

「あぁ、、、」

--- 良かったよ。元気そうじゃないか。---

「心配かけて、申し訳なかったな。」

--- こっちに居るなら、連絡しろよ。みんな心配してたんだぞ---

「ん、、、」

--- で、、、、あぁ、、、確か、、、お前の弟だよな?---


その人の視線が、ユノヒョンの少し後ろに居た僕に移る。


「ああ、まぁ、幼馴染というか、、、弟みたいなもんだよ。大学も同じだしな」

・・・・・「シム・チャンミンです。」

--- そうそう、確かチャンミンって言ったよな。こいつによく話聞かされたよ。---

・・・・・「ユノヒョンには、とてもお世話になってます。」

--- あはははは。無理すんなよ、世話してる、、、の間違いだろ?---


ユノヒョンの表情が、明るい。
それがとても嬉しかった。


「で、チャンミン、、、久しぶりに会うんじゃね?」

・・・・・「えっ?」

「アレ? お前、気付いてないのか?」


そう言われて、ユノヒョンの視線を辿る。
その先には、ユノヒョンの友達の連れの女性、、、


--- チャンミンくん、久しぶり。---

・・・・・「えっ?」

--- うそ! 忘れちゃったの? 私だよ、イェリンだよ ---

・・・・・「イェ、、、リン?」




綺麗にお化粧して、大人の女性になったイェリンがそこにいた・・・・・







93へつづく

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純愛。1





--- おーーーい、チャンミーン !! ---


授業が終わり、今日は部活動もない。
お腹空いたな、、、
どこかでラーメンでも食べて帰ろうかな、、、

そんなことを思いながら、下駄箱で靴を履き替えている時だった。


--- 待てって、、、---

・・・・・「どうしたんだよ?」


勢いよく階段を駆け下りてきて、
下駄箱の前で足を止めて息を整える。


・・・・・「何かあったのか? キュヒョン、、、」


同じクラスのチェ・ギュヒョン。
何でも話せる親友の一人。


--- いや、今日さ、お前ん家に寄ってもいい? 新しいソフト、買ったんだ---


つい先日発売になったばかりのゲームソフト。
俺は、バイト代が足りなくて買えなかったんだ、、、


・・・・・「いいけど、、、俺、腹減ったし今からラーメンでも食って帰ろうかと思ってさ、、、」

--- ラーメンなら、ユンホさんとこで食えばいいじゃん ---

・・・・・「いや、、、ヒョンのはもういい」

--- えーだってさ、この辺りじゃナンバーワンの人気店なんだぜ? しかも、お前ならタダなんだしさ---

・・・・・「食い飽きたんだって、、、たまには違う味が食べたいんだよ」

--- そんなもん? ---

・・・・・「そう、そんなもんだよ」


校舎を出て、2人並んで広い校庭を横切るように歩く。
部活動の休みの日だから、校庭は静かで・・・

太陽が沈みかけている西の空は、ぼんやりとしたオレンジ色に染まってる。



俺、 シム・チャンミン 17歳。 高校2年生。

訳あって、今、学校から少し離れた場所にあるアパートで一人暮らしをしてる。



--- じゃあさ、ラーメン止めて、駅前に新しく出来たハンバーガー食べに行こうぜ? ---

・・・・・「そうだな、たまにはいいかも」

--- よし、決まりっ! ---



オレンジ色に染まった校庭・・・
キュヒョンが突然駆け出す。

それを追うように、脚を踏み出そうとしたその時・・・


ポケットに入れてあるスマホが、ブルブルと震えて着信を知らせる。


・・・・・「ちょ、キュヒョン、待てよ!」


脚を一旦止めて、スマホを取り出すと、、、


・・・・・「ったく、なんだよ、、、」


応答するのをためらったけれど、
電話に出なければ、出るまで何度でも掛かってくるのを俺は知ってる。

・・・・・「はぁっ、、、」

溜息をついて、仕方なく応答した。


・・・・・「もしも、、、」

「チャンミン!!!」


・・・・・「なんだよ、ヒョン、、、声デカいって、、、」

「お前、今日は部活無いんだろ?!」

・・・・・「だから何なんだよっ」

「早く帰って来いっ!! 」

・・・・・「今からキュヒョンと、、、」

「いーいーかーらーーーーキュヒョン連れて帰ってこい! 分かったな。ヒョンに逆らうな!!」



言いたいことだけ言って、電話は切れた。


--- 何なの? ユンホさん? ---


気が付くと、キュヒョンが俺の隣に立っていて、、、


・・・・・「聞えただろ?キュヒョン連れて帰ってこいだと、、、」

--- おーもしかして、新作じゃね? いこーぜ、チャンミン!! ---

・・・・・「お、お前、、、ハンバーガーじゃなかったのかよ!!」


強引に腕を引かれて、脚を縺れさせながらキュヒョンを追う。


--- ユンホさんの新作ラーメンに敵うものはなーいっ!!---


引き摺られながら、俺は大きな溜息をついた。


空腹だった俺の腹。


なのに、今から起こる〝それ〟を思うと、何も食べてはいないのに、
どうしてだか、満腹感を覚えていた・・・・・



・・・・・「ハンバーガー食いてぇ!!!」


俺の心からの叫びは、虚しくオレンジ色の空に消えた・・・・・






2へつづく

真夜中の気まぐれ更新です。
次回は気まぐれなので分かりません(笑)
見つけたら、是非おつきあいくださいね。



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横恋慕 2 - c side -


~ c side ~




「素敵な恋になるといいな、チャンミン、、、」


そんな風にヒョンに言われて、
何故か凄く、複雑な気持ちになった。

何だろう、、、上手く表現する言葉が見当たらない。
しいて言えば、、、そう、、、

〝突き放された〟

そんな感じ・・・・・
僕の考えすぎたってことは、理解しているけれど、、、




それから暫くは、なんだかヒョンに逢うことがためらわれて、
僕から連絡することは無かった。

ヒョンもきっと、仕事が忙しいんだと思う。
電話もかかっては来ない。


学校へ行けば、どうしてもユナと顔を合わせることになる。


〝返事は急がないけど、でも、、、なるべく早く頂戴。待ってるから、、、〟


嫌でもそのことを考えてしまう。
どうしたらいいんだろう。

そんな日が数日続いた。


ある朝、前日の小テストの結果が戻ってきた。
それを見て、愕然とする。


--- あれ? チャンミン、、、お前、どうしたの?---


隣の席のクラスメイトが、僕の答案を見て驚いた。


こんな簡単な問題、、、
小さなミスの連続で、回答用紙を持つ手が震えてしまう。

このままじゃダメだ。


そう・・・

今、僕にはすべき事がある。
ユナの事を考えるのは、今じゃない。


そう自分の中で答えが出た時、
無性にヒョンに逢いたくなった。

放課後・・・

校門を出てすぐにスマホを取り出し、ヒョンにコールする。
この時間はきっとまだ仕事中。

分かってるけど、、、電話に出てほしい。
祈るような気持ちで、ヒョンの応答を待った。

コールは5回、いや、6回だったかも、、、

久し振りに聞くヒョンの声。
会いたさが募る。

けど、、、、

〝ごめん、チャンミン、、、今日は無理なんだ、、、〟


電話を切って、ガクンと肩を落とす。
空に浮かぶ白い雲が、ヒョンの顏に見えた。





〝ごめんな、また連絡する、、、〟


そう言ったヒョンからの連絡は、ない。
忙しくしてるのかな?

前に、会えなかったこともあって、僕は自分から連絡するのをためらうようになっていた。
特に、重要な要件があるわけでもないし、
忙しいヒョンの邪魔はしたくない。

休日も仕事をしているヒョンを知ってるから、
日曜日も、スマホをじっと見つめるだけで、何も出来ない僕が居た。





ある日の放課後。
僕は、意を決してユナを図書室に呼び出した。


窓から見えるのは、沈みかけた太陽と、
その光に照らされる白い雲・・・

ぼんやりとその風景を眺めていると、
扉が静かに開いて、ユナが姿を現した。


「ユナ、、、ごめんね」

--- ううん、、、大丈夫、、、---


フッと目に留まったのは、ユナの左手の甲。
赤い絵の具がついている。


「もしかして、部活?」


けど、3年生は受験に集中するため、随分前に引退しているはず。


--- えっ? ---


僕が、ユナの手の甲を指さすと、


--- あ、、やだ、、、---

「まだ行ってるの?」

ポケットからハンカチを取り出し、汚れた手の甲をそっと拭う。

--- ううん。今日は、後輩に展覧会に出す作品のチェックを頼まれて、、、---

・・・・・「そっか、、、」


ユナは引退するまで美術部で部長をしていた。
幾つかユナの作品を見た事があるけれど、素人の僕でも彼女の才能に驚いた事がある。


--- 久しぶりに筆を持つと、書きたくてウズウズしちゃった---


屈託なく笑うユナに、なんだかギュッと胸が締め付けられた。


--- それで、、、チャンミンくん、、、、---

・・・・・「うん、、、この前の、、、」

--- うん、、、---


正直に伝えないと、、、
ユナを傷つけたくないって気持ちは、変わってはいない。

大切な親友。大切な幼馴染。


・・・・・「ごめん。僕、今は勉強に集中したい」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「今、僕がやらなきゃならないこと、それを全力でやり遂げたい」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「だから、今は変わらず友達でいたいんだ」




ユナは、僕から目をそらさず、僕の話を静かに聞いている。


・・・・・「ごめんね、、、」

それ以上、言葉が出なくて、、、
すると、、、


--- うん、、、分かったよ。そうだね、、、今は、私も頑張らなくちゃいけない時だね。ごめんね---

・・・・・「ううん、、、」

--- ただ、好きな絵も書けなくて、毎日息がつまりそうで、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- だからチャンミンくんに、甘えたくなったのかな? ---


ユナの気持ちが、分かる気がした。
気持ちの安らぐ場所。
甘えられる場所。

ユナにとって、それが僕であるように、
僕にとっては、、、


ヒョンの顏が脳裏に浮かぶ。


僕の安心できる場所。
それが、ヒョンなんじゃないかって・・・


--- チャンミンくん。今まで通り、友達で居てくれる? ---

・・・・・「もちろんだよ」

--- それで、、、それでね。受験が終わったらもう一度、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- チャンミンくんに告白したい---

・・・・・「ユナ、、、」

--- 好きなの、、、チャンミンくんが、、、好き、、、---




窓から射す太陽の光が、ユナの横顔を眩しく照らしていた・・・・・









27へつづく

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真夜中の観覧車。-scene6-






車を降りて、ヒョンと並んでその場所に立つと、
ソウルの街の煌びやかなネオンが、目の前に飛び込んでくる。


・・・・・「わぁ、、、綺麗だ、、、」

--- だろ? ---


夜の空には、ネオンに負けないくらいの美しい夏の星たち。
とても幻想的なその景色に、僕は暫く釘付けになった。


--- チャンミン、、、---


呼ばれて、ハッと我に返る。
隣りに立つヒョンの方に視線向けると、僕を見つめるヒョンの目と重なった。


--- 昼間、一緒に居たのは僕の従妹なんだ。---

・・・・・「従妹?」

--- 実は、昨日の朝、携帯が突然壊れちゃって、、、
ショップに行くために、仕事を早く済ませてこっちに戻ったんだ ---

・・・・・「・・・・・」

--- そのショップで、従妹が働いてて、、、
会うのが久しぶりだったから、従妹の仕事が終わってから、一緒にお茶したんだ。
チャンミンが見かけたのは、その時だと、そう思う。---

・・・・・「そう、だったんだ、、、」


そう言うヒョンの手には、真新しいスマホが握られてる。

じゃあ、電話が通じなかったのは、壊れちゃったからで、、、
そして、あの綺麗な女性は、ヒョンの従妹、、、ってこと?


--- そう言うことなんだ。誤解、、、解けた? ---


恥ずかしい、、、
勘違いして、勝手に嫉妬するとか、、、

思わず俯いた僕の顔を覗き込むようにして、
ヒョンは僕の目をじっと見つめる。

逃げ出したいくらいに恥ずかしいけど、
そんな事出来るわけもなくて、、、


・・・・・「ごめんなさい。」


そう言うと、ヒョンの顏がフワリ緩んで、
伸びてきたヒョンの掌が、僕の髪をクシャっとなでた。


--- 時々なら、悪くないな、こういう誤解。---

・・・・・「・・・・・」

--- チャンミンが僕の事を好きでいてくれるって、再確認できる。---

・・・・・「そんな、、、」

--- でも、僕はチャンミンだけだよ。それを、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 忘れないでほしい。---



ヒョンの表情は、なんだかとても穏やかで、
けれど、僕を見つめる瞳は、寂しそうに揺れていて、、、


・・・・・「忘れないよ、ずっと覚えてる」


そう答えるしか出来なかった。

僕のその返事に、ヒョンはにっこり笑って小さく頷いた。







次の日。

目覚めたのは、窓の向こうの蝉の声が煩かったから、、、じゃなくて、、、



「おーい、チャンミーーン」

・・・・・「ん、、、、」

「まだ寝てんのかよ、起きろよっ!」

・・・・・「ったく、なんだよ、煩いな、、、」


昨夜は、ヒョンと会ってて眠るのが遅かったから、
無理やり起こされた僕は、すこぶる機嫌が悪かった。

怠い身体を、のっそりと起こし、
腕を伸ばして窓を開ける。


「お前、マジでまだ寝てたのか?」

・・・・・「もう、、、ヒョン、、、煩いって、、、」

「すげぇ、寝癖、、、」

・・・・・「いいんだよっ」

「な、チャンミン。お前、今日暇?」

・・・・・「忙しい。」

「えーっ、嘘つけ。こんな時間まで寝てるんだから、どうせ暇だろ?な?」

・・・・・「今、何時?」

「もうすぐ昼だけど?」

・・・・・「うそ、、、もうそんな時間?」


髪をガシガシと書きながら、半分閉じていた瞼をゆっくりと開ける。
ようやく、目に映るユノヒョンの顏、、、


・・・・・「あっ、、、」

「・・・・・」

・・・・・「髪、切った?」


短く髪をカットして、少し明るく染まった髪、、、
太陽の光が、その髪を照らしてキラキラと光ってる。


「あ、あぁ、、、ちょっと気分転換にな。」

・・・・・「凄く似合ってるよ。」


眩しかった。


「そうか? ちょっと切りすぎたかなって、、、」

・・・・・「そんな事ない。カッコいいよ」


ふと、その髪に触れたいってそう思った。
窓越しに、思わず手を伸ばしそうなくらい、僕の瞳に、ユノヒョンはとても眩しく映った。


「じゃあ決まりな。カッコいいヒョンと出掛けるぞ。」

・・・・・「えっ?」

「早く起きて、シャワー浴びて、昼飯食え。」

・・・・・「どこ行くんだよ。」

「午後5時きっかり。家の前に集合な。」

・・・・・「何処へ行くか教えろよ。」

「秘密だよっ、じゃあな!」



言いたいことだけ言うと、ユノヒョンは変顔をしながら窓をパタンと閉めた。


なんだよ、自分勝手なユノヒョン、、、



--- チャンミン、起きてる? ご飯出来てるよー---



1階から、母の声。
その声を聞いた途端、待ってましたとばかりにお腹の虫が鳴く。


・・・・・「起きてる! すぐ行くよ!」


ベッドから抜け出て、着替えを済ませると、
僕は急いで階段を駆け下りた。








「お前、1分遅刻。」

・・・・・「いいだろ? 1分くらい。」


一方的に交わされた約束。
午後5時。

夏の午後5時は、まだ昼のように明るい。


「じゃ、行こうか。」

・・・・・「ねぇ、ヒョン。どこ行くの?」

「遅刻は仕方ないから許してやる。」

・・・・・「・・・・・」

「許してやるから、焼きそばはお前の奢りな?」

・・・・・「焼きそば?」


歩きかけたユノヒョンが、脚を止めて振り返る。


「付き合えよ、夏祭り、、、、、」


そう言うと、またくるりと向きを変え、
家の前に止めてある車の運転席のドアに手を掛けた。


夏祭り、、、


ユノヒョンの隣りに、居るはずのない浴衣姿のミファさんの姿が見える。
僕を見て、彼女はフワリと微笑んだ・・・・・








92へつづく

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真夜中の観覧車。-scene6-






--- あ、、、チャンミン? ---

・・・・・「・・・・・」

--- もしもしチャンミン? 聞こえる? チャンミン? ---

・・・・・「聞こえてる、、、」


明らかに僕は、いつもと違う〝ご機嫌が悪い〟子供のようにそう答えた。


--- あれ? どうした? 何か、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 何か怒ってる? ---

・・・・・「別に。」


本当なら、僕がヒョンに叱られる方だ。
実家に戻った日、連絡する約束を忘れて、
ヒョンに心配をかけたはず。

けど、、、

自分が悪いことは分かってても、
それでも僕は我慢できなかった。

あの、楽しそうに女の人と歩くヒョンの姿が、脳裏に焼き付いて、、、
胸が痛かったから、、、


--- 無事に、家に帰ってる? ---

・・・・・「帰ってるよ。」

--- 電話したんだけど、繋がらなかったから心配したよ。良かった。---

・・・・・「・・・・・」

--- で、、、どうした? ---

・・・・・「・・・・・」

--- 困ったな、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 顏が見たくて、来てみたんだけど、、、---

・・・・・「えっ?」

--- チャンミンの好きな、アイス買ってきたよ。
もし、怒ってないなら、、、顏、見せてくれない? ---


別に、アイスに釣られたわけじゃない。
そう自分に言い聞かせながら、僕はTシャツとスウェットパンツ姿でスマホだけを手に、
階段を駆け下りた。


・・・・・「ちょっと出かけてくる!!」


僕の声が、母さんに届いたのかも確認せず、
慌てて玄関ドアを開ける。

速足で表に出ると、道路の向かい側にヒョンの車が止まっていた。

僕の姿を見つけて、ヒョンが車から降りてくる。


車の通りもない、道路を急いで渡る。
ヒョンの前に立つと、ヒョンの手が僕の髪に触れた。


--- 髪、まだ濡れてるよ。---

・・・・・「うん、、、」


ついさっきまで、電話でふて腐れていた自分が恥ずかしくなって、
僕は俯いて、小さく頷いた。


夏の虫の音だけが、静かな夜に鳴り響いてる。


--- アイス、食べる? 怒ってない?---

・・・・・「ホントは少し怒ってる。けど、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「アイス、、、溶けちゃうし、、、」


俯いたまま、バカバカしい言い訳をする僕に、
ヒョンはふっと笑って、、、


--- 乗って? 溶けないうちに、、、 ---

・・・・・「うん、、、」


助手席に乗ると、シートベルトを締める。


--- はい。チャンミンの好きなの、これだよね? ---


ガサガサと、コンビニの袋から取り出したのは、
確かに僕の好きなチョコのアイス。


・・・・・「ありがとう。」

--- 少し走ろう ---


そう言うと、ヒョンは静かに車を発進させた。




車を走らせるヒョンの隣りで、僕は静かにアイスを食べる。
ヒョンはというと、ホルダーに入ったコーヒーに時折手を伸ばす。

車内は、珍しくクラシック音楽が流れていた。


20分ほど走って、車が止まる。
小高い丘の上の、小さな駐車スペース。


---大学時代に、よく友達とここに来てた。---

・・・・・「・・・・・」

--- 夜景がとても綺麗なんだ。---

・・・・・「友達って、女の人?」

---えっ?---

・・・・・「だって、普通、夜景なんて男同士で見に来ないでしょ?」

--- えっ、、、そうかな? 今、、、来てるけど、、、 ---

・・・・・「それは、、、そういう意味じゃなくて、、、」


どうして電話が繋がらなかったのか、、、
あの女性が誰なのか、、、
聞きたいけど、聞けなくて、、、

僕は口を噤む。


--- チャンミン、、、何を怒ってる? 言わなきゃ分からないよ ---

・・・・・「・・・・・」

--- 話して? ---


膝の上で、ギュッと握っていた僕の手に、
フワリとヒョンの掌が重なる。

顔を上げて、ヒョンを見た。


・・・・・「昨日からずっと電話してたのに、繋がらなくて、、、」

--- うん、、、---

・・・・・「それに、ヒョンを見かけた。今日、街で、、、」

--- えっ? ---

・・・・・「女の人と歩いてて、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「とっても綺麗な人で、、、ヒョン、すごく楽しそうで、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「それで、ちょっと、、、、嫌な気持ちになった。それだけ、、、」


僕をじっと見つめるヒョンの目が、ゆらゆらと揺れる。
恥ずかしいのと悔しいのと、、、
とにかくいろんな気持ちが入り混じって、居た堪れなくて目を逸らす。



その刹那、、、


僕はヒョンに手を引かれる。

運転席と助手席の間にある小さなコンソールボックスを挟んで、
僕は、ヒョンにきつく抱きしめられた。


・・・・・「ヒョン?」

--- 嬉しいな、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- チャンミンが、嫉妬してくれるなんて、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 良かった、、、---



〝良かった〟


そう言った、ヒョンの言葉の真意が、その時は分からなかった。

けど、抱きしめられたヒョンの腕の強さとか、、、
触れあった部分から感じる熱とか、、、
耳に届く、ヒョンの優しい声とか、、、


それを感じると、考えなくても分かったことなのに、、、
ヒョンが、僕を裏切ることなんて絶対にないって、、、

なのに、子供みたいに拗ねてみせたりして、
ヒョンに申し訳ないことをしたって、そう思った。



・・・・・「ごめんね、ヒョン、、、」




僕は思わず、そう口にした・・・・・









91へつづく

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横恋慕。





・・・・・「帰った方がいい?」


グッと唇を噛みしめているチャンミンに、
椅子から立ちあがり、身を乗り出して手を伸ばす。

唇にそっと触れ、

「チャンミン、、、」

・・・・・「・・・・・」

指で小さく震える唇をなぞると、
ようやく唇を緩め、俺を見た。


「もう少しここに居ろよ、な?」

・・・・・「でも、、、」

「チャンミンと居たい。いいだろ?」


揺れる瞳が、俺を見つめる。
逸らさずに見つめ返すと、チャンミンはようやく笑みを浮かべて頷いた。




食事を終え、片づけを済ませる。


「チャンミン、送るよ、、、」

・・・・・「えっ? もう?」

「お母さんが心配してるんじゃないか? テストが終わってから話したのか?」

・・・・・「うん、連絡はしたよ」

「なら、チャンミンが帰ってくるのを待ってるだろ?」

・・・・・「うん、、、」


上着を着て、車のキーを手にする俺を尻目に、
ソファから立とうとしないチャンミン。

そっと隣に腰を下ろし、チャンミンのサラサラの髪を撫でた。


「ここにならいつでも来ていい」

・・・・・「・・・・・」

「今日は嬉しかったよ。ありがとう、チャンミン」

・・・・・「うん、、、でも、、、」

「ん?」

・・・・・「さっきの人、、、」


さっきの、、、
あぁ、、、キム・ミンジの事か、、、


・・・・・「ヒョンの、、、恋人なの?」

「えっ?」

・・・・・「凄く、綺麗で可愛い人だった」


可愛い嫉妬、、、
いや、親しい兄を取られる、、、そんな気持ちなのか、、、


「違うよ、、、恋人じゃない」

・・・・・「・・・・・」

「それに、チャンミンの方が可愛い」


少し揶揄うつもりで口にした言葉。
なのに、チャンミンは一瞬で顔を真っ赤に染め、俺から視線を外した。


・・・・・「ホントに?」

「あぁ、、、ホントだ」


俯いたまま、嬉しそうに笑うチャンミンが愛おしくて、、、

その華奢な身体に、思わず手を伸ばしそうになって止めた。



ただ、チャンミンは俺を兄として慕っているだけ。
ただ、それだけ。

特別な感情は、何もない。

そう、心に何度も言い聞かせた。







その日から数日、暖かな日の射す午後。
昼食を終え、デスクで微睡んでいた俺に、社内用の携帯が音を立てた。


「はい、、、営業統括チョンです」

--- チョンくんかな? 今、少し時間はあるかね?---


キム専務だった。



--- 呼び立てて申し訳ない。座ってくれ、、、---

「失礼します」


仕事の話だとは思っていない。
なんの話か、予想は付いている。


テーブルを挟んで向かい合う。

意味ありげなその表情・・・
違和感しかない。


--- 話はほかでもないんだが、、、---


先手を打つか、、、


「お嬢様の、、、? 」

--- そうだ、、、一人娘でね、、、甘やかして育ててしまったことは自覚している---

「先日、お嬢様が家に、、、」

--- あぁ、聞いたよ、、、---

「来客中だったので、申し訳なかったのですが、お引き取り願いました」


キム専務は、飽きれたように小さくため息をついて、、、


--- 察するに、社内のつてで君の住所を調べたんだろう、、、悪かったね、、、---

「いえ、、、ただ、、、」

--- ・・・・・ ---

「正直に申しますと、お嬢様のようなお若い女性が、独り住まいの男の、、、
しかも知り合って間のない男の家に、あのような時間に1人でやってくるのは感心できません」

---・・・・・ ---


言葉が過ぎたか?
いや、初めが肝心だ。

キム専務は、ピクリと顔を硬直させる。
けれど、すぐにいつもの柔らかい表情に戻って、、、


--- 君の言う通りだ。そういう育て方をした私が間違っていたな---

「い、いえ、、、そういうつもりは、、、」

--- いや、いいんだ。そう、はっきり言ってもらった方が、今後のこともあるからな、、、---

「今後、、、」

--- チョンくん、親バカだと笑ってもらってもいい。娘が君をとても気に入っているようなんだ---

「・・・・・」

--- 君の仕事ぶりも統括部長から報告を受けている。若いのに感心しているよ---

「ありがとうございます」

--- 将来有望な君に、娘を託したい。結婚を前提に、娘と付き合ってやってはくれないか? ---



娘が娘なら、親も親だ。


--- すぐに返事をくれとは言わない。考えてみてくれ。君を、、、---

「・・・・・」

--- 悪いようにはしないよ、、、---



部屋を出て、扉を背に大きな溜息が出た。



チャンミンが、恋しい、、、、、









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真夜中の観覧車。-scene6-








--- おーっ、チャンミン!! 久し振り~---


実家に戻って、3日目・・・


・・・・・「キュヒョン!」


待ち合わせたのは、駅前の時計台の下。
数か月ぶりの再会に、僕たちは大げさに喜び合った。

向かったのは、高校時代に2人で何度も通ったハンバーガーショップ。
チーズバーガーとコーラが2つづつ乗ったトレイを手に、空いてる窓際の席に腰を下ろした。


--- で、どう? 大学の方は? ---

・・・・・「うん、まぁ、それなりに楽しくやってる。キュヒョンは?」

--- 俺も同じ。---


少し伸びた前髪が、普段幼く見える顔つきのキュヒョンをちょっとだけ、大人に見せる。
けれど、それ以外は何一つ変わっていなかった。
そのことに少しだけ、ホッとした。


--- あ、そう言えば、聞いたよ。チョン先輩、大変だったみたいだな---


ミファさんの不幸な死は、ヒョンの同級生はもとより、後輩たちの耳にも届いていたらしい。


・・・・・「あんなヒョン、初めて見たよ。」

--- そりゃそうだよ。高校ん時から付き合ってて、後輩の俺達だって2人の事知ってるほど、
仲良かったしさ、あの2人、、、---

・・・・・「うん、、、」

--- チョン・ユンホとキム・ミファのカップルに憧れてる後輩、多かっただろ? 皆ショック受けてたぜ? ---

・・・・・「それでもヒョンは、気丈に振る舞ってるよ。見ててこっちが辛くなる。」

--- それでもさ、ホントにダメなときは、やっぱりお前なんじゃないの? 先輩は、、、---

・・・・・「僕は、何も出来ないよ。」

--- そんな事ないさ。何も言わなくても、見ていてくれる奴は分かってると思うよ、先輩、、、---


椅子に背中を預けて、コーラを飲みながら、
キュヒョンはあまり見たことのない真面目な顔でそう言った。

僕は、そんなキュヒョンに苦笑いしか出来なかった。



--- じゃあな、戻るまでに1度飯行こうぜ。---

・・・・・「うん。連絡するよ。」


夕方からの彼女との約束に向かうキュヒョンと別れて、
久し振りに街の賑やかな通りを歩く。

僕の隣りをすれ違う、手を繋いだカップルの姿を見て、ふっと足を止めた。
おもむろに、ポケットからスマホを取り出し、リダイヤルでそのナンバーを表示する。

昨日の午後から、何度も何度も呼び出しているその番号、、、
けれど、コールどころか繋がりもしない。

ヒョン・・・
どうしたんだろう、、、

携帯の電源も入れずにいるなんて、
何かあったのだろうか?

携帯番号しか、連絡の手段はない。
マンションに行ってみようか、、、

今からなら、そんなに遅くならないうちにヒョンのマンションに着けるはず。


思い立ったら、居ても経ってもいられなくなった僕は、
家に向って歩いていた脚を、くるりと反対に向けた。

駅に向かって歩き出そうとした僕の目に、
見覚えのある車が飛び込んでくる。

少し先の道路わきに止まっているのは、ヒョンの車・・・
間違いない。
ナンバーもヒョンの車と同じだ。

ヒョン、、、
近くに居るの?

慌ててスマホでもう一度ヒョンをコールするけれど、
やっぱり繋がらない。

キョロキョロと、辺りを見回す。
けど、姿はない。

どうしよう、、、
車の前で待っていようか?

そう想い巡らせていたその時、、、



・・・・・「ヒョン、、、」


僕が立つ、反対の方向からこちらに向って歩いてくるヒョンの姿・・・・・
1人じゃない・・・

楽しそうに笑ってるヒョンの隣りには、知らない女性・・・

とても綺麗な人・・・
回りの何も知らない人が見れば、きっと誰もが2人は恋人同士だと、そんな風に思うだろう。

ズキン、、、と、心臓が音を立てて軋む。

こういうシーン、よく恋愛映画で見かける。
他の女性と仲良く並んで歩く自分の恋人を街で見かけても、
大抵の主人公の女性は、そっとその場を立ち去ることが多いけど、
僕はいつも、どうして何も言わないんだろうって、そんなことを思ってた。

文句の一つでも言ってやればいいのにって、、、

けれど、あぁ、こういうことなのかって、今の僕なら映画の中の女性の気持ちが、
よく分かる気がした。

何も、言えるはずがない。
なんだかとても、惨めで、、、


僕は、もう一度身体の向きを変え、
その場から逃げ出すように速足で歩き出す。

1度も振り返ることなく、バス停に向った・・・・・






---チャンミン! 冷蔵庫にアイス買ってあるわよ~---



夜10時・・・
お風呂から上がって階段を上っていると、リビングから母さんの声が聞こえる。

・・・・・「ん、、、今はいい。」

そのまま、自室の扉を開け、部屋に戻ると、
湿った髪のまま、ベッドに身体を投げ出した。


・・・・・「はぁっ、、、」


大きなため息が出た。
理由は1つ。

昼間見た、ヒョンの姿・・・
思い出したくなくて眼を閉じるけど、瞼の裏側にも、あの姿はしっかりと焼き付いていた。


ゴロリと寝返りを打つ。
枕元に放り出されたスマホ・・・

ロックを外し、もう一度ヒョンの番号を表示させようとしたその時、、、


突然のコール音。
相手は、、、

〝ユンスヒョン〟

・・・・・「ヒョン?」


ベッドの上で、飛び起きる。
半身を起こした状態で、スマホをじっと見つめていた。

僕が、どんなに心配してたか・・・
ヒョンはきっと、全く分かってない・・・


意地悪な気持ちが、心の中で邪魔をしたけれど、
それよりもやっぱり僕は、ヒョンの声が聞きたいと、、、
その気持ちの方が勝ってしまう。


・・・・・「・・・・・」

--- あ、、、チャンミン? ---


久し振りのその声・・・
僕の心の揺れとは対照的に、
ヒョンの声はいつもと変わらず冷静で穏やかだった・・・・・










90へつづく

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真夜中の観覧車。-scene6-







・・・・・「んーっ、、、」


タイマーにしていたエアコンが切れて、
部屋の温度と湿度が上がる。

寝苦しさに目が覚めた。

身体を捩じって、部屋の時計を見る。


・・・・・「まだこんな時間か、、、」


午前2時30分。

半身を起こし、小さく息を吐く。
少し頭がすっきりしているのは、短時間、深く眠りに入り込んだからだろうか。

ふっと、テーブルの上のスマホを見る。
ヒョンに連絡しようと思ってたのに、すっかり眠ってしまった。

ベッドから抜け出し、スマホを手に取って確認する。


・・・・・「やっぱり、、、」


ヒョンから数件の着信。
掛け直したいけど、こんな時間じゃもう寝てる。

喉の渇きを感じた僕は、スマホをベッドに投げ、部屋を出た。
家族を起こさないように静かに階段を下り、冷蔵庫から取り出したペットボトルの水を手に、
部屋に戻る。

蓋を開け、喉に流すと、冷えた水が火照った身体を少しずつ冷ましてくれる。

エアコンのリモコンを手にもう一度スイッチを入れようとして、手を止めた。
自然の空気を感じたくて、閉じたカーテンと窓を開ける。



・・・・・「わぁっ、、、」


思わず声が出た。
驚いたことに、僕の目に映ったのは、、、


・・・・・「ビックリした、、、ヒョン、、、」

「お前、こんな時間にどうしたの?」


窓枠に腕を乗せ、ぼんやりと夜空を見ているユノヒョンだった。


・・・・・「ヒョンこそ、、、」

「あぁ、俺は、なんだか眠れなくて、、、」

・・・・・「僕は、暑くて目が覚めた。」


こんな風に、窓越しにユノヒョンと話すのはどの位ぶりだろう。
中高生の頃は、いつもこんな風にしてユノヒョンといろんなことを話してた。


「チャンミン、、、」

・・・・・「ん?」

「お前に言うつもりだったんだけど、言えなかったことが、、、」

・・・・・「何? どうしたの? 改まって、、、」

「俺さ、、、、」

・・・・・「うん、、、」

「夏休みが終わったら、留学することにした。」

・・・・・「えっ?」


突然のヒョンの話に、言葉が出ない。


「ホントは、2年になってすぐにって話だったんだけど、
ミファの体調も良くなくて、あいつを置いて行けなかったし、、、」

・・・・・「・・・・・」

「最後まであいつの傍にいてやりたかったんだ。」

・・・・・「・・・・・」

「まぁ、留学って言っても、半年ほどの語学留学でさ、うちの学校のメルボルンの姉妹校との交換留学ってことで、
そんな大げさなもんじゃないんだけど、、、」

・・・・・「そう、、、知らなかった。」

「誰にも、、、いや、ミファ以外の誰にも言ってなかったから、、、」



あの言葉、、、



〝俺、行って来るよ〟



ミファさんに向って言ってたあの言葉は、
留学のことだったのか、、、


・・・・・「うん、、、」

「留学なんてさ、カッコいいこと言ってるけど、ホントはさ、、、」

・・・・・「・・・・・」

「ここから少し離れたくなった。」


ヒョンは、空を見上げたまま、ふっと悲しそうに笑みを浮かべた。


・・・・・「ヒョン、、、」

「逃げるんだよ、卑怯だよな、俺、、、」

・・・・・「・・・・・」


愛する人の死・・・
絶望と孤独、、、

ユノヒョンの心の内は、僕では計り知れないほどの悲しみで溢れているはず。
けれど、ユノヒョンはその悲しみに立ち向かい、今まで気丈に振る舞ってきた。

そんなユノヒョンを、誰が責めるだろう。
誰が、卑怯だって、ズルいって、そんな事、思うだろう、、、


・・・・・「そんな事ない。」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョンは立派だよ。」

「現実から目を逸らすんだ。立派なんかじゃない。」

・・・・・「僕は、そうは思わない。」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョンは知らないんだ。僕なんか、いつも逃げてる。」

「・・・・・」

・・・・・「誰かにいじめられたら、いつもヒョンに仕返ししてもらってたし、、、」

「えっ?」

・・・・・「ほら、6年生の時さ、僕がクラスのいじめっ子に叩かれて泣いてたら、
ヒョンがそのいじめっ子を殴って仕返ししてくれたじゃないか、、、」

「そんな事、あったか?」

・・・・・「あったよ。それに、宿題が分からない時もいつもヒョンに教えてもらったし、
自転車も、補助輪付きしか乗れなかった僕に、特訓してくれたのもヒョンだよ。」

「そうだったっけ、、、」

・・・・・「鉄棒の逆上がりも、サッカーも、平泳ぎも、、、」

「・・・・・」

・・・・・「全部、ヒョンが教えてくれた。僕を助けてくれた。」

「・・・・・」

・・・・・「僕は、いつもヒョンに頼ってた。ヒョンが、僕の逃げ場だった。」

「チャンミン、、、」

・・・・・「逃げてばかりの僕を、いつも励ましてくれた。立ち向かう勇気をくれた。」



窓の向こうのユノヒョンは、いつの間にか視線を夜空から僕に映している。


「大げさだな、、、、」

・・・・・「そんな事ない。」

「俺は、そんな、、、」

・・・・・「僕は分かるよ、、、、分かってる。」

「・・・・・」

・・・・・「ずっと、ヒョンの傍で見てたから。」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョンは、僕にとって最高の兄だよ。今までも、これからもずっと、、、」


ヒョンは、何も言わずただ、僕を見つめて笑ってた。


僕の気持ちが、ユノヒョンに伝わったかどうかは分からない。
けれど僕は、ヒョンが決めたことを尊重しようとそう思う。


留学の事も、そして、、、



〝このままでいたい。お前の、、、お前のヒョンでいたいんだ、、、〟

〝忘れてくれ、、、その手紙に書かれていること、、、〟



ヒョンのあの言葉も・・・・・











89へつづく

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