私の心の中のお話です。
ご了承ください。

・・・・・「んーっ、、、」
タイマーにしていたエアコンが切れて、
部屋の温度と湿度が上がる。
寝苦しさに目が覚めた。
身体を捩じって、部屋の時計を見る。
・・・・・「まだこんな時間か、、、」
午前2時30分。
半身を起こし、小さく息を吐く。
少し頭がすっきりしているのは、短時間、深く眠りに入り込んだからだろうか。
ふっと、テーブルの上のスマホを見る。
ヒョンに連絡しようと思ってたのに、すっかり眠ってしまった。
ベッドから抜け出し、スマホを手に取って確認する。
・・・・・「やっぱり、、、」
ヒョンから数件の着信。
掛け直したいけど、こんな時間じゃもう寝てる。
喉の渇きを感じた僕は、スマホをベッドに投げ、部屋を出た。
家族を起こさないように静かに階段を下り、冷蔵庫から取り出したペットボトルの水を手に、
部屋に戻る。
蓋を開け、喉に流すと、冷えた水が火照った身体を少しずつ冷ましてくれる。
エアコンのリモコンを手にもう一度スイッチを入れようとして、手を止めた。
自然の空気を感じたくて、閉じたカーテンと窓を開ける。
・・・・・「わぁっ、、、」
思わず声が出た。
驚いたことに、僕の目に映ったのは、、、
・・・・・「ビックリした、、、ヒョン、、、」
「お前、こんな時間にどうしたの?」
窓枠に腕を乗せ、ぼんやりと夜空を見ているユノヒョンだった。
・・・・・「ヒョンこそ、、、」
「あぁ、俺は、なんだか眠れなくて、、、」
・・・・・「僕は、暑くて目が覚めた。」
こんな風に、窓越しにユノヒョンと話すのはどの位ぶりだろう。
中高生の頃は、いつもこんな風にしてユノヒョンといろんなことを話してた。
「チャンミン、、、」
・・・・・「ん?」
「お前に言うつもりだったんだけど、言えなかったことが、、、」
・・・・・「何? どうしたの? 改まって、、、」
「俺さ、、、、」
・・・・・「うん、、、」
「夏休みが終わったら、留学することにした。」
・・・・・「えっ?」
突然のヒョンの話に、言葉が出ない。
「ホントは、2年になってすぐにって話だったんだけど、
ミファの体調も良くなくて、あいつを置いて行けなかったし、、、」
・・・・・「・・・・・」
「最後まであいつの傍にいてやりたかったんだ。」
・・・・・「・・・・・」
「まぁ、留学って言っても、半年ほどの語学留学でさ、うちの学校のメルボルンの姉妹校との交換留学ってことで、
そんな大げさなもんじゃないんだけど、、、」
・・・・・「そう、、、知らなかった。」
「誰にも、、、いや、ミファ以外の誰にも言ってなかったから、、、」
あの言葉、、、
〝俺、行って来るよ〟
ミファさんに向って言ってたあの言葉は、
留学のことだったのか、、、
・・・・・「うん、、、」
「留学なんてさ、カッコいいこと言ってるけど、ホントはさ、、、」
・・・・・「・・・・・」
「ここから少し離れたくなった。」
ヒョンは、空を見上げたまま、ふっと悲しそうに笑みを浮かべた。
・・・・・「ヒョン、、、」
「逃げるんだよ、卑怯だよな、俺、、、」
・・・・・「・・・・・」
愛する人の死・・・
絶望と孤独、、、
ユノヒョンの心の内は、僕では計り知れないほどの悲しみで溢れているはず。
けれど、ユノヒョンはその悲しみに立ち向かい、今まで気丈に振る舞ってきた。
そんなユノヒョンを、誰が責めるだろう。
誰が、卑怯だって、ズルいって、そんな事、思うだろう、、、
・・・・・「そんな事ない。」
「・・・・・」
・・・・・「ヒョンは立派だよ。」
「現実から目を逸らすんだ。立派なんかじゃない。」
・・・・・「僕は、そうは思わない。」
「・・・・・」
・・・・・「ヒョンは知らないんだ。僕なんか、いつも逃げてる。」
「・・・・・」
・・・・・「誰かにいじめられたら、いつもヒョンに仕返ししてもらってたし、、、」
「えっ?」
・・・・・「ほら、6年生の時さ、僕がクラスのいじめっ子に叩かれて泣いてたら、
ヒョンがそのいじめっ子を殴って仕返ししてくれたじゃないか、、、」
「そんな事、あったか?」
・・・・・「あったよ。それに、宿題が分からない時もいつもヒョンに教えてもらったし、
自転車も、補助輪付きしか乗れなかった僕に、特訓してくれたのもヒョンだよ。」
「そうだったっけ、、、」
・・・・・「鉄棒の逆上がりも、サッカーも、平泳ぎも、、、」
「・・・・・」
・・・・・「全部、ヒョンが教えてくれた。僕を助けてくれた。」
「・・・・・」
・・・・・「僕は、いつもヒョンに頼ってた。ヒョンが、僕の逃げ場だった。」
「チャンミン、、、」
・・・・・「逃げてばかりの僕を、いつも励ましてくれた。立ち向かう勇気をくれた。」
窓の向こうのユノヒョンは、いつの間にか視線を夜空から僕に映している。
「大げさだな、、、、」
・・・・・「そんな事ない。」
「俺は、そんな、、、」
・・・・・「僕は分かるよ、、、、分かってる。」
「・・・・・」
・・・・・「ずっと、ヒョンの傍で見てたから。」
「・・・・・」
・・・・・「ヒョンは、僕にとって最高の兄だよ。今までも、これからもずっと、、、」
ヒョンは、何も言わずただ、僕を見つめて笑ってた。
僕の気持ちが、ユノヒョンに伝わったかどうかは分からない。
けれど僕は、ヒョンが決めたことを尊重しようとそう思う。
留学の事も、そして、、、
〝このままでいたい。お前の、、、お前のヒョンでいたいんだ、、、〟
〝忘れてくれ、、、その手紙に書かれていること、、、〟
ヒョンのあの言葉も・・・・・
89へつづく
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