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私の心の中のお話です。
ご了承ください。




藍の月。2






---ご無沙汰しています。チョンさん、弟が本当にお世話に、、、---


丁寧なお辞儀と共に、セヨンさんは、少し緊張した面持ちで挨拶をしてくれた。


「いえ、、、、」


上手く言葉が出てこない。


--- 本当に、私がお邪魔してもよろしいんでしようか---


きっと、ここに来るまでに、この人はいろんな思いと葛藤したに違いない。

過去は消えない。
それは、この人も、、、そして、チャンミンも同じ・・・


「セヨンさん、チャンミンも戦っています。貴方が逃げてはダメです」

--- そうですね、、、けど・・・---


その時、抱いていたサランが、俺の腕から飛び降りた。


「あ、サラン、、、」


サランが走り寄った先には、、、


「チャンミン・・・」


リビングの扉を開けたそこに、チャンミンがじっとこちらを見ながら立ちすくんでいた。
脚に纏わりつくサランを、ぎこちなくしゃがんで抱き上げて・・・


--- チャ、チャンミン・・・---


セヨンさんの呼びかけに、チャンミンは、1歩、後退りをした。


「チャンミン、おいで」

・・・・・「・・・・・」


きっと、戦っている。

長い間、心を閉ざし、忘れようとした自分の過去。

忘れようとしたその過去が・・・
忘れたかったその人が・・・
今、目の前に居る。

チャンミンの心の葛藤が、俺にまで伝わってくる。
けど、、、チャンミン、逃げてはダメだ。

これから、前を向いて歩くために・・・
俺と一緒に、歩くために・・・

そうだろ? 
チャンミン・・・

チャンミンが、俺と視線を合わせる。
少し微笑んで小さく頷くと、チャンミンも同じように頷いた。


ゆっくりと、サランを抱いたままチャンミンが歩きだす。
そして、俺の背中に少し重なるようにして身体を隠して立ち止まった。


--- チャンミン、元気だったか? ---


チャンミンは、少し強張った顔をして俯き、そして、顔を上げて・・・


・・・・・「兄さん、お久しぶりです」


ぎこちなく笑った。
俺は、チャンミンの背中をそっと押して、セヨンさんの前にチャンミンを立たせる。


--- チャンミン、久し振りだな。元気そうで、良かった・・・---


セヨンさんの瞳から、涙が溢れ出る。
震える手が、遠慮がちにそっとチャンミンに差し出された。

チャンミンは、少し驚きながらも、その手をそっと受取った。


--- チャンミン、ありがとう、ありがとう・・・---



長い年月を共に生きた2人。
俺には分らない2人だけの想いがきっとある。

セヨンさんは、チャンミンを愛していた。
ただ、愛し方を間違ってしまっただけ。

そして、チャンミンもまた、セヨンさんを愛していた。
思いは違う形であれ、2人は愛し合っていた。

この2人には、俺にも踏み込めない強いつながりがあったはずだから、、、


「チャンミン、良かったな、、、」


チャンミンもまた、大きな瞳に涙を浮かべていた。










--- ねぇ、ユノさん。あの2人、引き合わせてもよかったの?---


食事を終え、テラスに並ぶ2つの背中を、部屋の中からテミンと2人で眺めていた。


「どういう意味だよ?」

--- だってさ、、、あのセヨンさんのチャンミン兄さんを見る目・・・---


確かに、愛おしさを隠しきれてない。
いや、隠す必要もないんだけど・・・


「いいんじゃないの? 兄弟なんだし・・・」

--- また強がっちゃって。心配で仕方ないくせに・・・・---


確かに、チャンミンの笑顔が、キラキラしてて・・・
テラスに降り注ぐ太陽の光が、余計にそう見せるのだろうか。

あの笑顔が、自分じゃない別の誰かに向けられているのは、正直妬ける。

けど・・・・・


--- あ、ほら、ユノさん、兄さんが見てるよ?---


時折こちらを振り返り、小さく手を振りながら俺に向けられるあの笑顔は、
やっぱり俺だけのものだって、、、

俺だけの特別なものだって、
今ならそう、思えるんだ。







・・・・・「ユノさん、何見てるの?」

「ん、今日はとても月が綺麗だ」


陽が沈み、夜の闇が辺りを包む。

ここは、ソウルの街よりも夜の空が美しい。
空気が綺麗だからだろうか。

サランを捜すと、いつもの自分のカゴの中で、スヤスヤと眠っていた。

普段、担当くらいしか尋ねてこないこの家に、珍しい客がやってきたから、
きっとサランも疲れたに違いない。


「チャンミン、今日は少し無理させたかな?」


チャンミンは少し疲れたようだった。
顔を見ればわかる。


・・・・・「ううん。ありがとう、ユノさん。僕、とても嬉しかったよ」

「嬉しかった?」

・・・・・「うん」


チャンミンは、少し微笑んで、空に浮かぶ月を眺めていた。


・・・・・「ユノさんが、僕の心の扉をノックしてくれた」

「えっ?」

・・・・・「聞えたんだ。ノックの音、、、コンコンって・・・」

「・・・・・」


隣りに立つチャンミンが、そっと俺に寄りそうように、歩を寄せる。
肩が触れ合う距離・・・


・・・・・「それまでは、何も聞えなかった。誰の声も、何の音も。けど・・・」


〝チャンミン、元気だったか? 会いたかったよ〟


・・・・・「療養所に、初めてユノさんが来てくれた時、真っ暗だった僕の心に、小さな星が・・・」

「・・・・・」

・・・・・「ほら、、、」


チャンミンが指差す、その向こうには・・・


・・・・・「あの星みたいに、小さな光、、、けど・・・」


空に輝く星・・・


「・・・・・」

・・・・・「その小さな光は、次第に明るく眩しく大きくなっていった。ユノさんが、僕を尋ねてきてくれるたびに・・・」

「チャンミン」

・・・・・「ユノさんが、僕を忘れないでいてくれたから・・・」

「忘れるわけないだろ?」


チャンミンと向き合い、瞳を重ねる。


・・・・・「ユノさんが、僕を見捨てないでいてくれたから・・・」

「見捨てるわけないだろ?」

・・・・・「ユノさんが、僕を愛してくれたから・・・」


チャンミン・・・

今、お前の瞳に俺は映っているか?
まるで、寄せる波のように、ポロポロといくつもの涙が流れ落ちてゆく。

そっと頬を包み、涙を拭う。


「あたりまえだろ? 俺にはお前しかいない。出会った時から、今までずっと・・・」

・・・・・「ユノさん、、、」

「これからもずっと・・・」



チャンミン、、、
俺は誓う。


これからもずっと、お前を信じ、お前を支え、お前を・・・
お前だけを愛してゆくことを・・・



「チャンミン、キスしたい・・・」


少しだけ、驚いた顔をしたチャンミンは、恥ずかしそうにしながらも、
そっと、瞼を閉じた。


まるで初めて、その唇に触れるかのように、
ゆっくりと、重ねあわせるだけの優しいキス・・・


何年ぶりかに感じるチャンミンの感触は、昔と何ひとつ変わっていなかった。


月が見ている。

薄い靄がかかる、藍色に染まる月・・・


その月に誓う。
永遠の愛を誓う。



名残惜しく、ゆっくりと、柔らかいチャンミンの唇を解放すると・・・


・・・・・「ユノさん」

「ん?」

・・・・・「ぼ、僕・・・・・」

「どうした?」






・・・・・「ユノさんを、愛しています」







チャンミン。

これから2人で、沢山の愛を積み重ねていこう。



永遠に・・・



「チャンミン、愛してる」



永遠に・・・・・








「藍の月。」 ・・・・・・・fin

読者の皆さま、おはようございます。
『藍の月。』 70話にて無事に完結です。

旧館で読んでいただいたことのある読者さまも、初めて読んで下さる読者さまも、
毎朝の更新を楽しみにお付き合い下さいました。

お話の中の2人と共に、泣いたり笑ったり、
心を2人に寄せてくださいました。
頂くコメントに、読者さまの愛を沢山感じられたお話でした。

沢山の読者さまに応援していただき、
お話の中の2人を愛していただき、とても嬉しく感謝しています。

最後までおつきあいくださった読者さまに、心より感謝申し上げます。
ありがとうございました。

本日最終話ですので、よろしかったら感想聞かせてください。
お待ちしています。




それでは、今日も1日いい日になりますように♪
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藍の月。2




~one year later~



「チャンミン、サランは?」

・・・・・「テラス・・・」

「テラスに居る?」

・・・・・「うん、寝てる」


テラスに続くガラスの扉が少しだけ開いていて、外から吹く風がカーテンを小さく揺らしている。
そっと覗いてみると、定位置に置かれた小さな籠の中で気持ちよさそうにサランが寝ていた。


あれは、そう、、、
この家でチャンミンと暮らすようになってから1週間たった頃・・・




・・・・・「ユノさん、名前・・・」


少しずつ、声を聞かせてくれるようになったチャンミンが、恥ずかしそうに俺に告げた。


「お、名前、決めてくれたのか?」


少し俯いて、頬を緩ませて、、、、


・・・・・「サラン・・・」


チャンミンが、小さな白い子犬に〝サラン〟と名付けた。


1年経った今、サランは元気に成長して、俺とチャンミンと仲よく暮らしている。

俺はというと、まぁ、そこそこの仕事をこなしている。
〝藍の月。〟がいい評判だったこともあって、今、続編を執筆中だ。

そして、チャンミンはよく笑うようになった。
少しずつ心の傷も回復しているようだった。

家事はもうすべてチャンミン頼みだ。
いつだったか、〝辛くないか?〟と聞いた時、チャンミンは、〝とても楽しい〟そう答えた。

〝ユノさんのお手伝いが出来て嬉しい〟と・・・

それ以来、俺は、あまり慎重になり過ぎないように、
気を使わないように、普通にチャンミンに接するようになった。


〝普通〟でいられることが、、、
〝普通〟でいることが、、、


俺たちにとっては何よりも大事なことだったんだ。




「チャンミン、俺も手伝うよ?」


キッチンに立ち、いつもよりも豪華な料理に腕を振るっている。


・・・・・「いつ来るの?」


「そうだな、昼に間に合うようにって伝えてあるから、そろそろじゃないか?」


今日、この家に客人がやってくる。

チャンミンがここにきて1年が経ち、少しずつ良くなってきている今が、
その時期じゃないかと、そう思ったからだ。



その時、インターホンが鳴る。


・・・・・「ユノさん、、、」

「ん、待ってろ」


キッチンから玄関に向い、扉を開ける。

その瞬間・・・


--- ユノさーんっ! 久しぶり~会いたかったよぅ~---


変わらない眩しい笑顔。
あの頃、、、この笑顔にどれだけ救われ癒されただろうか・・・


「よく来たな、地図分かったか? テミン」


玄関先で、テミンが俺に跳ねるように抱きついてきた。
ソウルから離れて、テミンの店からも足が遠ざかっていた。

会うのは半年ぶりだろうか・・・


--- うん、大丈夫だったよ。 ユノさん、兄さんは?---


テミンは、チャンミンにはもう何年も会っていなかった。
チャンミンのことを話してはいたが、俺が時期を見計らっていた。


「ああ、いるよ、チャンミ・・・」


振り返ると、チャンミンが眉間にシワを寄せてこちらをじっと見ていた。


・・・・・「・・・・・」

「どうした?チャンミン?」


そのままチャンミンは、奥の部屋に消えていく。


--- ユノさん、ごめん。兄さんきっと、ヤキモチ妬いてる---


俺の身体に巻きつけた腕を解きながら、テミンは舌先を出しておどけてみせた。


「上れよ、、、」


テミンを連れて、リビングに戻るとチャンミンが居ない。
テラスを覗くと、チャンミンがサランを抱いて、空を仰いでいた。


・・・・・「サラン、いい子にしててね。今日はお客さんが来るんだよ」


サランの頭を撫でながら、少し寂しそうな表情を浮べていた。


「チャンミン、おいで、、、」


振り向いたチャンミンが、俺の顔を見てすぐに視線を外す。
そういう時は、恥ずかしがってるか、それとも何かに怒っているとき・・・

今は、後者だな・・・

そっとチャンミンの隣りに立ち、顔を覗き込んだ。
チャンミンは、慌てて顔を背ける。


「チャンミン、どうした?」

・・・・・「何でもない」


拗ねてるチャンミンが可愛くて仕方ない。
こんな風に、小さな嫉妬心を見せてくれるようにもなるなんて・・・


「チャンミン、機嫌直して?」


頭を撫でると、ようやくフッと微笑んで目を合わせてくれた。






--- 兄さん、僕だよ、テミンだよ? ---


痺れを切らせたテミンが涙を溜めながら、チャンミンの元に駆け寄る。


--- 僕だよ、テミンだよ、分かるでしょ?---


俺は、あえて口を出さずに2人を見守っていた。
チャンミンは、暫くテミンの顔をじっと見て、そして・・・


・・・・・「テミン、、、元気だった?」

--- 兄さんっ、兄さんっ、、、---


耐え切れず、テミンがチャンミンを抱きしめるように背中に腕を回す。


そう、チャンミンは忘れたわけじゃなかった。
ただ、辛い記憶を心の扉の奥に閉じこめ、長い間鍵をかけていただけ。

鍵を開ける決断をしたのは、チャンミン自身。
自分の過去を受け止め、向き合おうと戦っている。

驚いたサランが、チャンミンの腕から飛び出し、俺の足元に纏わりついてきた。


--- 兄さん、会いたかった・・・---


正直、チャンミンの反応が怖かった。
チャンミンの心が、拒否することも考えたけど・・・

良かった。
小さく息を吐いて、抱き合う2人を眺めていた。

その時、、、
もう一人の客人が到着したことを知らせる音が部屋に響く。


サランを腕に抱いて、玄関へ向かった。






「いらっしゃい。遠いところ、申し訳ありません、セヨンさん・・・」










70(完結話)につづく

読者の皆さま、おはようございます。

ということで、クイズの正解は『サラン』でした(^^♪

♡かこ さん
♡あみma さん
♡しむしえ さん
♡くるみん さん
♡bechami  さん
♡はな さん (はなさん、アルムは「Shangri-La」というお話です。覚えていてくださるの、凄いっ!!) 

以上の6名の方、大正解でーす( ・∀・ノノ゙☆パチパチ
何年も前のお話なのに、憶えていてもらえるなんて、本当に嬉しいです♪
6名の方は『こころ日和。検定』 中級 に認定させていただきます (`・ω・´)ゝナンダソレ

さて、「藍の月。」も、明日で完結を迎えます。
次で終わりなのに、あいつが来るってどういうことっ!??

ユノのチャンミンへの強い愛が感じられるラストになってると思ってます。
最後までおつきあいくださいね。





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藍の月。2






--- お待ちしていました。昨日から落ち着かないようで、荷物もすっかりまとめてしまって・・・---


療養所の長い廊下。
先生は、とてもにこやかに話しながら、俺の隣りに並んで歩く。


「そうですか」


落ち着かなかったのは、俺も同じだ。
昨日、残った片付けと買い物を済ませ、チャンミンを迎える準備に忙しく動いていた。


--- ソウルから戻って来て、なんだかとても元気だったんですよ。
顔色もよくて、食事もきちんと摂ってくれました---


俺が迎えに来るまでの時間、チャンミンもいろいろ考えただろう。
不安な想いもきっとあったはず。

けれど、俺の言葉を信じ、前を向いてくれたに違いない。

俺とチャンミンは、同じ未来を見ているんだ。


「先生・・・」


廊下を出て、中庭に差し掛かった時、
俺は、脚を止めた。


--- はい・・・---


にこやかな表情を残したまま、先生も立ち止まる。


「必ず、チャンミンを幸せにします」


まるで、結婚の承諾をもらう男のような挨拶になってしまって、
自分でも少し可笑しく感じながらも、この気持ちを伝えたいと思った。

そんな俺の気持ちを察してくださったのか・・・


--- どうか、チャンミンさんをよろしくお願いします---


その気持ちがとても嬉しくて、俺は頭を深々と下げた。







「チャンミン、迎えに来たよ」


部屋の扉をそっと開けると、小さなバックを抱えたチャンミンが、
窓辺に立って中庭の景色を眺めていた。

見慣れた景色に別れを告げているのだろうか。
少し寂しそうなその瞳が、俺の胸をチクリと刺した。

その視線が、ゆっくりと俺を捉える。
チャンミンは、満面の笑みで俺を迎えてくれた。




「さぁ、チャンミン。俺たちの家に帰ろう」


差し出した俺の手に、温かいチャンミンの手が重なった。






名残惜しく、療養所の皆と別れを惜しみ、車に乗り込む。
チャンミンは、振り返りながら、見えなくなるまでずっと手を振り続けていた。


「寂しくないよ、チャンミン。いつでもここに来たら、皆に会える」


少し涙を浮かべているチャンミンに、そう告げると、
涙を拭いながら小さく頷いた。




「さぁ、チャンミン、ここだよ」


車を降りて扉を閉めると、チャンミンは落ち着かない様子でじっと家を眺めている。

チャンミンの手から荷物を引き取り、
背中を軽く押すようにして、扉をくぐった。






--- こ、こら、、、じっとしろよっ---


家の中から聞える声に、驚いたチャンミンは、後退りして俺の背に隠れる。


「大丈夫だよ、担当だ。 知ってるだろ?」

--- あ、先生、チャンミンさん、、、お帰りなさい、あっ、、ちょ、、、こ、こらっ---


担当の腕から飛び出して、玄関に立つ俺の元に駆けてくる。

それを見たチャンミンの瞳が、まるで、幼い子供のように一瞬にして輝きだした。
荷物をその場に置いて、俺の足元に纏わりつく白い小さなそれを抱き上げた。


「こら、いい子にしてろって言っただろ? ほら、チャンミンが帰って来たぞ」



あれは、いつの日だったか・・・





〝ユノさん、、、あの白いちっちゃいの、可愛いね〟
〝デカい家買って、あいつを迎えに来よう〟
〝ホント? 楽しみにしてるね〟






「ほら、チャンミン、こいつも俺たちの家族だぞ?」


白くてちっちゃい子犬。

約束したんだ。
チャンミンは憶えているだろうか?

そっとチャンミンに向かって差し出すと、
チャンミンは、恐々手を伸ばして、子犬の頭をそろりと撫でた。


「名前は、まだ付けてないんだ。チャンミンに決めてもらおうと思って・・・」

・・・・・「・・・・・」


チャンミンが嬉しそうに微笑んで、小さく頷いた。
両手を出して、俺の手から子犬を抱き上げる。

大切なものを愛おしむように、チャンミンはそっと、子犬に頬を寄せた。








陽が沈み、空には星が輝き始める。

食事の後、キッチンで片付けを終えると、
チャンミンは窓辺に立ち、空を眺めていた。


「チャンミン、コーヒー飲むか?」


キッチンからチャンミンを見ると、振り返って小さく手招きをした。


「どうした?」


手に持っていたカップを置いて、チャンミンの隣りに立つ。


「ん?」


チャンミンが向ける視線の先には、
綺麗な藍色の月が、夜空に浮かんでいた。


・・・・・「月、きれい・・・」

「チャンミン・・・」


チャンミンが、ゆっくりと振り返る。

大きな瞳を俺に向けて、
頬を緩めて、笑った。


・・・・・「ユノ、さん、ありがとう」



偶然にも出会った時と同じ、藍色の月が輝く空の下で、
俺はチャンミンを思いきり抱きしめた。

ただ、ここにチャンミンが居る。
俺の腕の中に、チャンミンが居る。


それだけでいい・・・


チャンミン。
俺たち、この時を精一杯愛し合おう。

触れ合えるこの時を・・・
感じ合えるこの時を・・・

2人一緒に、精一杯生きてゆこう。

未来なんて考えなくてもいい。

ただ、この一瞬一瞬を、大切に・・・・・



そうだろ?
チャンミン・・・



「チャンミン、ありがとう」



愛してるよ、、、









69へつづく

読者の皆さま、おはようございます。

2人の心が近づいていくたびに、お話の終わりが近づいていると思うと、
少し寂しい気もします。

白いちっちゃなワンコも新しく家族になって、
さて、皆さん。チャンミンはワンコに何と名前を付けたでしょう?

旧館で読んで下さったことのある読者さまも、
きっとお忘れかと思います。ふふ

ぜひ考えてみてくださいね。





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藍の月。2






--- 先生、では行きましょう---

「ああ、、、」


チャンミンを療養所に預けて、ソウルに戻ってから10日が過ぎた。

カンカンと音を鳴らし、アパートの外階段を駆け下りる。
そして、ゆっくりと振り向く。

ここには本当にたくさんの思い出が詰まってる。

住人が誰一人として居なくなったアパートは、昼間なのにひっそりと静まり返り、
その風景に、なんだかとても胸が痛んだ。


ここでチャンミンと出会った。



〝セックスしようよ?〟



あの頃を想うと、今でも辛く悲しい気持ちが込み上げてくるけれど、、、



--- 先生、早く!! 向こうを片付けてしまわないと、チャンミンさんを迎えに行けませんよ---

「あぁ、分ってる」


そう、今はあの頃とは違う。


俺の傍にはチャンミンが居る。

約束したんだ。
これからはずっと一緒だと・・・


「さよなら、ありがとう」


静かにアパートに別れを告げ、俺は担当の運転する車に乗り込んだ。



--- しかし先生、ソウルの街から少し離れてますが、不便じゃないですか? あの家---






〝あ、担当? 俺だけど、ちょっと頼みたいことが・・・〟





引っ越すことが決まっていたマンションをキャンセルして、
俺は、賑やかなソウルの街から少し離れた場所に、古い小さな一軒家を借りた。


「担当、悪かったな、、、急に変更・・・」

--- いえ、僕の方は気にしないでください。叔父に言えばどうとでもなるので---


担当の叔父さんが、ソウルで不動産の仕事をしていると聞いていたので、
無理を聞いてもらい、希望の家を探してもらった。


「引っ越しも急がせたし、この埋め合わせは絶対にするから、、、」


担当は、運転席でハンドルを握ったまま、笑みを浮かべながら・・・


--- じゃあ、2つ、お願いがあります ---

「2つもかよ、贅沢だな」


2人して笑い合う。


--- 1つは、僕の持ってる『藍の月。』の本にサイン下さい---

「は? サイン?」

--- ええ、先生のサイン、第1号ですよね? 是非、僕に下さい---

「サインなんて、、、」

--- 先生、これから絶対にサインは必要です。先生はこれから必ず活躍されるんですから!!---



大げさだな・・・



「分ったよ、考えておく。で、もう1つは?」


窓の外の景色が、都会の喧騒から離れてゆく。


--- 次回作です。あ、いえ、次回じゃなくても、いつか、、、でいいんです。
ぜひ、『藍の月。』の続編を書いてください---


続編・・・

あの本の続き。
俺たちの、、、、

俺とチャンミンの、これから、、、


--- きっといい作品になります---

「そうだな、、、それも、考えとくよ」

--- 僕、楽しみにしてます---


車の中から、空を仰ぐ。
雲一つない快晴だ。


俺たちのこれから・・・

チャンミン。
もうすぐ、迎えに行くからな。





--- じゃあ、先生、、僕はこれで・・・---

「ん、遅くまで付き合わせたな、気を付けて帰れよ」


部屋の片づけもほぼ済ませて、
俺はリビングのソファにため息とともに腰を下ろした。

あとは、足りないものを少し買い足して、
チャンミンを迎えに行くだけ。

都会とは違う、静かで小さな街。
古くて小さな家だけど、チャンミンは気に入ってくれるだろうか。


「チャンミン・・・」


少し開いた窓の隙間から、心地いい風か吹き込む。
慣れない風の匂いに誘われて窓辺に立つと、満天の星達が俺を出迎えてくれた。


「街からそんなにも離れていないのに、こんなに空が綺麗なんだな」


チャンミンが見たら、なんて言うだろう。
喜んでくれればいいけど・・・

チャンミンの笑顔を目に浮かべながら、
暫くの間、夜空を見上げていた。


その時・・・


テーブルの上に置いた携帯が、着信を知らせるメロディを奏でる。
ディスプレイを見ると・・・


〝この番号が、チャンミンさんのお部屋の外線番号です〟


念のため、療養所の先生に聞いておいた、チャンミンの部屋の電話番号。


「チャンミン?」


焦る気持ちを、小さな深呼吸で落ち着かせて、
俺は電話に出た。


「もしもし、チャンミン? 」

・・・・・「・・・・・」

「あぁ、そのままでいいから、、、」

・・・・・「・・・・・」

「チャンミン、元気か? 変わりないよな? そうだな、、、今から、話すこと、よく聞いて? 
今日な、新しい家に引っ越したんだ」

・・・・・「・・・・・」

「お前が気に入ってくれるかどうかわからないけど、静かでいいところだよ?」


チャンミンは、どんな顔をして、俺の話しを聞いているんだろう。


「明日、残りの片付けを終わらせたら、そうだな、、、明後日にはお前を迎えに行けると思う」


早く会いたい・・・


「あと少しの辛抱だ。待ってろ? チャンミン」

・・・・・「・・・・・」


胸が高鳴る。
ここで、チャンミンとの新しい生活がもうすぐ始まるんだ。

何も話さなくても、こうしてチャンミンと繋がってると思うと、
心が温かくなる。

チャンミンも、そんな風に感じているだろうか。


「チャンミン、もう遅いからおやすみ?」

・・・・・「・・・・・」

「な? 電話、切って? 」

・・・・・「・・・・・さ、、、、」


えっ・・・・?



・・・・・「ユ、ノ、、、さん・・・」

「チャンミン、お前・・・」


小さな声、、、
けど、聞き間違いじゃない。

愛しい人が、俺の名を呼んだ。
どのくらい振りだろうか・・・

チャンミンが、俺の名を・・・


・・・・・「ユ、ノ、、、さん・・・」

「チャンミン・・・」






愛しい人の声が、耳に、頭に、心に響いて・・・
胸が鼓動を速める。

その夜は、なかなか寝付くことが出来なかった。
俺の名を呼ぶチャンミンの声が、何度も何度も聞こえてきて・・・


〝ユ、ノ、、、さん・・・〟



チャンミン、すぐに行くよ・・・







68へつづく

読者の皆さま、おはようございます。

ようやく、チャンミンが声を発しました。
もちろん、ユノの名前です。

愛しい声が自分の名を呼ぶ。
ユノの喜びはとても大きかったと思います。


月曜日ですね。
また1週間が始まりますね。
頑張りましょう♪


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藍の月。2






「チャンミン、そろそろ行こうか」


アパートを出ると、チャンミンは寂しそうに振り返り、部屋の扉をじっと見つめていた。

担当に借りた車に乗り込んで、車が動き出してもアパートが見えなくなるまで振り返って見つめている姿は、
まるで、なにかを心に焼き付けようとしているように思えた。


ソウルから春川の療養所までの長い道のり。
チャンミンは一度も俺の方を見なかった。

窓からの流れる景色をじっと見つめ、淋しそうな目で何か考えている。

療養所に着くと、急ぐように車から降り、
玄関口まで出迎えてくれていた先生に小さく頭を下げると、足早に自分の部屋に戻って行ってしまった。


「ご無沙汰しています。先生・・・」


先生は、いつもと同じ、温かい笑顔で俺を迎えてくれた。
チャンミンとソウルで過ごした1か月間・・・

何度か電話で、チャンミンの様子を伝えていたけど、
やはり心配されていたのだろう。

チャンミンの顔を見て、安堵されているようだった。



〝チャンミンを引き取りたいと思っています〟



数日前、俺の気持ちを先生に伝えていた。
ユ・セヨンと話したという先生は、


〝チャンミンさんが、そうしたいと言うならそれが一番いいと思います〟


電話の向こうから聞えた先生の声は、少し寂しい声色のように感じた。



ソウルの新しい住居の準備が整うまで、チャンミンを療養所に預ける事を了承してもらい、
そのことをチャンミンに告げると、納得いかないような表情で、けれど理解はしているのだろう、
小さく頷いてくれた。


先生とスタッフの皆さんに挨拶を終え、
拗ねたように部屋に行ってしまったチャンミンの後を追う。


部屋の扉を開けると、窓辺に立ち、外の景色を観ていた。
そっとチャンミンの傍に立ち、肩を抱き寄せる。


「チャンミン、怒ってるのか?」


俯いてしまった可愛い顔をそっと覗き込む。


「チャンミン?」


もう一度名前を呼ぶと、やっと目を合わせてくれた。


「怒ってる?」


問いかけると、小さく首を横に振る。


「じゃあ、笑って? じゃないと、ソウルに戻れない」


そういうと、俺を見つめる大きな瞳が、みるみるうちに潤んでいく。
きっと、朝、アパートで目覚めた時から我慢していたんだろう。

俺のシャツの裾を、ギュッと握り、なにかを訴えるような目で俺を見据える。

まるで、羽化したばかりの蝶が美しい羽を広げるようにゆっくりと瞬きをすると、
涙の粒が大きな瞳から零れ落ちた。


「チャンミン、よく聞け? 新しい家が準備できたらすぐに迎えに来る。すぐだ」

・・・・・「・・・・・」

「ちょっとの間だけ、ここに居れるだろ? ん?」


チャンミンは、首を縦にも横にも降らず、
ただ、ポロポロ泣きながら俺をじっと見つめているだけ。

俺は、ポケットから1枚のメモを取りだした。
そのメモを、チャンミンに差し出す。


「チャンミン、ここに、俺の電話番号が書いてある。寂しくなったらかけておいで? 」

・・・・・「・・・・・」


チャンミンは、メモを手に取り、そっと開く。


「話さなくても大丈夫だから、俺がその日にあったことだとか、新しい家の事だとか、、、話し、、、」


俺の言葉を最後まで聞かずに、チャンミンは俺にしがみ付いてきた。
震えるチャンミンの背に腕を回して、強く抱きしめる。


「大丈夫だよ、チャンミン。約束しただろ?ずっと一緒だって・・・」


不安にさせてゴメンな、チャンミン・・・


「少しの辛抱だよ? それが終わったら、ずっと一緒だ」


言い聞かせるようにそう言葉にすると、俺にしがみ付いていたチャンミンは、
そっとその身体を外し、小さく笑って頷いた。


少し、無理をして笑ったその顔を見たら、
どんなものにも代えがたいと思えるほどの愛おしさが込み上げてきた。






暫くチャンミンと部屋で過ごした後、チャンミンを残して部屋を出た。
泣くのを堪えながら、俺の為に必死で笑顔を浮かべるチャンミンが、俺の胸を締め付けた。




「それでは、よろしくお願いします。準備が出来次第、ご連絡させていただきます」

--- 分りました。ソウルまで、お気を付けて---


帰りの挨拶を済ませて外に出ると、
太陽の光が療養所の周りの木々の葉に反射してきらきらと輝いてた。

深呼吸して、美味しい空気を胸いっぱいに吸い込む。


「よし・・・」


車に乗り込み、エンジンをかける。

その時・・・

フロントガラスの向こう側、、、視界に映る、、、
息を切らし、走ってくるチャンミンの姿。

驚いて、扉を開けて表に出ると、
俺の目の前に立ち止まり、息を整える。


療養所の入り口には、驚いた先生とスタッフの方が、
チャンミンを心配そうに見つめていた。


「どうした? チャンミン?」


そう問うと、チャンミンはゆっくりと手を差し出した。
その手には、小さなメモ・・・


「俺に?」


小さく頷く。
手に取って、広げてみる。



〝気を付けて、、、ずっと待ってます〟



「チャンミン・・・」


思わず手を引き、その場で抱きしめた。


「ありがとうチャンミン」



走り出した車のミラーには、
いつまでもいつまでも俺に手を振るチャンミンの姿が映っていた・・・






----------






「あ、担当? 俺だけど、ちょっと頼みたいことが・・・」









67へつづく

読者の皆さま、おはようございます。

チャンミンとの新しい生活のために、ユノが動き始めましたね。
私もチャンミンの気持ちになって、ユノが迎えに来てくれるのを、
楽しみに待っています。

日曜日ですね。
庭の雑草が、また伸び始めました。
大量なので、抜くのは困難。
除草剤を旦那に撒いてもらうことにしよう(笑)




それでは、今日もいい日になりますように♪
いつもご訪問ありがとうございます。





こころ。

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