私の心の中のお話です。
ご了承ください。
・・・・・「ヒョン、、、」
時間が止まったかのようだ。
辺りの空気までもが、漂うことを止め、静止している。
ヒョンの姿だけが、何故か僕の目にモノクロに映った。
〝ヒョン、、、僕、ちゃんと向き合う〟
ユノヒョンにそう宣言したのに、
この数か月、何も行動に移すことは無かった。
無意識に、全てから目を背けていたのかもしれない。
・・・・・「イソン、、、ごめん、、、」
これは、神様からのメッセージ。
約束を守れと、僕を戒めている。
--- 俺はいいから、、、行ってこい。チャンミン、、、---
何も事情は知らないイソンだけど、
きっと、僕の表情と空気を感じ取ったのだろう。
何も言わず、そのまま去ってゆく。
イソンが戻ってゆく足音が、徐々に小さくなって、そして消えた。
まるでそれが合図のように、
ふっと、顏を上げたヒョンが振り向き、僕の姿をその視界に止めた。
凭れかけた背を起こし、一瞬、目を見開き、そして、、、
--- チャンミン、、、---
気まずそうな顔をして、僕の名前を呼んだ。
逃げない。
目の前のヒョンと、ちゃんと向き合う。
心の中で自分にそう言い聞かせ、僕は一歩、前に踏み出した。
・・・・・「ヒョン、、、」
「ごめん、、、」
・・・・・「僕を、待っててくれたの?」
ヒョンは、僕と視線を合わそうとはしない。
--- ここで待ってたら、もしかしたら会えるかと、、、---
・・・・・「うん、、、」
--- ごめん、、、友達、、、---
・・・・・「いいんだ。気にしないで、、、」
--- ・・・・・ ---
・・・・・「ヒョン、、、少し話せる? 」
そう言うと、ヒョンは瞳の動きをピタリと止めた。
そして、悲し気に目じりを下げ、僕と視線を合わせる。
--- 正直、今、、、聞きたくないって、、、話したくないってそう思ってる---
・・・・・「・・・・・」
--- どちらかというと、良くない方の勘は、当たるんだ ---
・・・・・「ヒョン、、、」
--- でも、そうはいかないね。いつまでも、このままじゃダメだって、、、---
・・・・・「そう思って、来てくれたんでしょ?」
ヒョンは小さく頷きながら、〝そうだね、、、〟と、小さく囁いた。
それから、ヒョンの車に乗り込み、
15分程走った場所にある、小さなカフェに入った。
大きな通りから外れたその場所は、
あまり人通りも多くなく、昼過ぎだというのに、店内にはサラリーマンが数人、
のんびりと昼休みを過ごしているだけだった。
一番奥の窓際のテーブルに腰を下ろす。
--- 僕は、コーヒーを。チャンミンは? ---
・・・・・「僕も、、、」
窓から見えるのは、この店の小さなテラス。
オシャレなテーブルセットがいくつか並んでいるけれど、
冷たい風が吹く季節だからだろうか、、、
その場所にも、客の姿はなかった。
--- 元気、、、だった? ---
ヒョンの声で、視線を戻す。
・・・・・「うん。ヒョンは?」
--- ん、、、元気だったよ、、、---
暫く離れていたからか、、、
可笑しなくらいに会話が続かない。
沈黙に包まれた僕達、、、
--- お待たせしました ---
その静けさを裂くように、ウエイトレスがやって来て、
白い湯気の立つオシャレなコーヒーカップを、僕とヒョンの前に、静かに置いた。
--- ごゆっくりどうぞ、、、---
小さく頭を下げ、カウンターに戻ってゆく。
僕は、カップを手にし、
ふーっ、、、と息を吹きかけてから、コーヒーを一口飲んだ。
喉を通る温かいコーヒーの温度と香りが、ジワリと身体に染み込んでゆく。
心の中で深呼吸し、顏を上げてヒョンを見た。
・・・・・「ヒョン、、、聞いて欲しいことがあるんだ。」
僕のその言葉を聞いたヒョンは、
手にしたカップをソーサーに戻すと、
--- うん、、、---
と、小さな声で答える。
・・・・・「僕、、、」
--- ・・・・・ ---
・・・・・「ずっと逃げてた。逃げて隠れて、知らない振りをしてた。けど、、、」
--- ・・・・・---
・・・・・「向き合おうと思う。自分自身に、、、だから、、、」
--- イヤだって言っても、、、もう、決めてるんだね、、、---
カップの中のコーヒーが、ゆらゆらと揺れている。
ヒョンの瞳と、同じように、、、
--- あの雨の日、、、チャンミンを送ってあげられなかったことをすごく後悔した。---
〝チャンミン、、、ゴメン。送ってあげられない、、、〟
あの雨の日、、、
ヒョンを追いかけた僕、、、
憶えてる。
あの時のヒョンの瞳は、今にも泣きそうなほどに悲しげだった。
-- 風邪引いてないだろうか? ちゃんと寮に戻れただろうか、って、、、---
・・・・・「ヒョンが、、、傘、、、貸してくれたから、、、」
--- すぐに会いに行きたかったけど、もう、僕には会いたくないんじゃないかと、、、
そう思うと怖くて、、、---
・・・・・「・・・・・」
--- 誰と居ても、笑えなくて、、、楽しくなくて、、、
自分の心の中が、チャンミンで一杯になってることを、改めて実感したよ、、、---
・・・・・「ヒョン、、、」
--- チャンミンの気持ちは理解できる。だから、チャンミンの思うようにすればいい。
僕はそれに従うよ。---
ヒョンもまた、ユノヒョンと同じ。
僕が悪いのに、咎めようともしない。
そして、僕の我儘を何も言わずに受け入れてくれる。
・・・・・「本当に、ごめんなさい、、、」
思わず頭を下げた。
--- 電話、、、---
・・・・・「・・・・・」
--- 時々は、電話くらいしてもいいだろ?---
・・・・・「ヒョン、、、」
顔を上げてヒョンを見ると、
テーブルの上の手を小さく震わせながら、苦笑いしている。
--- チャンミンの言う通りにするよ。それがチャンミンの望みなら、、、だけど、、、---
・・・・・「・・・・・」
--- 僕も離れている間、ずっと考えてた。やっぱり、、、---
・・・・・「・・・・・」
--- やっぱり、僕はどうしてもチャンミンが好きなんだ---
・・・・・「ヒョン、、、」
震えていたヒョンの手は、何時しかきつく握られていた。
--- チャンミンのしたいようにすればいい。
好きだから、好きな人の思うようにさせてあげたい。けど、、、---
・・・・・「・・・・・」
--- これだけは言わせて---
・・・・・「・・・・・」
---信じてる。チャンミンを、、、待ってるから、、、---
別れ際、、、
運転席の窓から顔を出したヒョンは、
普段となんの変りもなく、微笑みながら僕に手を振った。
--- またね、チャンミン、、、電話、、、するから、、、---
そう言うと、ゆっくりと車が走り出す。
僕は、ヒョンの車が見えなくなっても、
その場所から、暫く動くことができなかった・・・・・
116へつづく
読者の皆さま、こんにちは。
この115話で、旧館からの転写作業は終わりました。
次回の116話から、未公開の新作です。
先日の「お知らせ」の記事に書かせていただいた通り、
22時の定時更新に、「横恋慕。」と「真夜中の観覧車。」どちらかのお話を更新する形を基本にしたいと思います。
それ以外には、時間の余裕があれば、定時以外に更新出来たらと思っています。
よろしくお願いいたします。
今まで1日2話更新にお付き合いくださった読者さま、
本当にありがとうございました。
今後とも、「真夜中の観覧車。」をよろしくお願いいたします。
こころ。
ランキングに参加しています。
応援よろしくお願いいたします。
にほんブログ村
スポンサーサイト
最新コメント