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私の心の中のお話です。
ご了承ください。




真夜中の観覧車。-scene7-




・・・・・「ヒョン、、、」


時間が止まったかのようだ。
辺りの空気までもが、漂うことを止め、静止している。

ヒョンの姿だけが、何故か僕の目にモノクロに映った。



〝ヒョン、、、僕、ちゃんと向き合う〟


ユノヒョンにそう宣言したのに、
この数か月、何も行動に移すことは無かった。
無意識に、全てから目を背けていたのかもしれない。


・・・・・「イソン、、、ごめん、、、」


これは、神様からのメッセージ。
約束を守れと、僕を戒めている。


--- 俺はいいから、、、行ってこい。チャンミン、、、---


何も事情は知らないイソンだけど、
きっと、僕の表情と空気を感じ取ったのだろう。

何も言わず、そのまま去ってゆく。
イソンが戻ってゆく足音が、徐々に小さくなって、そして消えた。

まるでそれが合図のように、
ふっと、顏を上げたヒョンが振り向き、僕の姿をその視界に止めた。

凭れかけた背を起こし、一瞬、目を見開き、そして、、、


--- チャンミン、、、---


気まずそうな顔をして、僕の名前を呼んだ。


逃げない。
目の前のヒョンと、ちゃんと向き合う。

心の中で自分にそう言い聞かせ、僕は一歩、前に踏み出した。


・・・・・「ヒョン、、、」

「ごめん、、、」

・・・・・「僕を、待っててくれたの?」


ヒョンは、僕と視線を合わそうとはしない。


--- ここで待ってたら、もしかしたら会えるかと、、、---

・・・・・「うん、、、」

--- ごめん、、、友達、、、---

・・・・・「いいんだ。気にしないで、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「ヒョン、、、少し話せる? 」


そう言うと、ヒョンは瞳の動きをピタリと止めた。
そして、悲し気に目じりを下げ、僕と視線を合わせる。


--- 正直、今、、、聞きたくないって、、、話したくないってそう思ってる---

・・・・・「・・・・・」

--- どちらかというと、良くない方の勘は、当たるんだ ---

・・・・・「ヒョン、、、」

--- でも、そうはいかないね。いつまでも、このままじゃダメだって、、、---

・・・・・「そう思って、来てくれたんでしょ?」


ヒョンは小さく頷きながら、〝そうだね、、、〟と、小さく囁いた。



それから、ヒョンの車に乗り込み、
15分程走った場所にある、小さなカフェに入った。

大きな通りから外れたその場所は、
あまり人通りも多くなく、昼過ぎだというのに、店内にはサラリーマンが数人、
のんびりと昼休みを過ごしているだけだった。


一番奥の窓際のテーブルに腰を下ろす。


--- 僕は、コーヒーを。チャンミンは? ---

・・・・・「僕も、、、」


窓から見えるのは、この店の小さなテラス。
オシャレなテーブルセットがいくつか並んでいるけれど、
冷たい風が吹く季節だからだろうか、、、

その場所にも、客の姿はなかった。


--- 元気、、、だった? ---


ヒョンの声で、視線を戻す。


・・・・・「うん。ヒョンは?」

--- ん、、、元気だったよ、、、---


暫く離れていたからか、、、
可笑しなくらいに会話が続かない。

沈黙に包まれた僕達、、、


--- お待たせしました ---


その静けさを裂くように、ウエイトレスがやって来て、
白い湯気の立つオシャレなコーヒーカップを、僕とヒョンの前に、静かに置いた。


--- ごゆっくりどうぞ、、、---


小さく頭を下げ、カウンターに戻ってゆく。


僕は、カップを手にし、
ふーっ、、、と息を吹きかけてから、コーヒーを一口飲んだ。

喉を通る温かいコーヒーの温度と香りが、ジワリと身体に染み込んでゆく。

心の中で深呼吸し、顏を上げてヒョンを見た。


・・・・・「ヒョン、、、聞いて欲しいことがあるんだ。」


僕のその言葉を聞いたヒョンは、
手にしたカップをソーサーに戻すと、


--- うん、、、---


と、小さな声で答える。


・・・・・「僕、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「ずっと逃げてた。逃げて隠れて、知らない振りをしてた。けど、、、」

--- ・・・・・---

・・・・・「向き合おうと思う。自分自身に、、、だから、、、」

--- イヤだって言っても、、、もう、決めてるんだね、、、---


カップの中のコーヒーが、ゆらゆらと揺れている。
ヒョンの瞳と、同じように、、、


--- あの雨の日、、、チャンミンを送ってあげられなかったことをすごく後悔した。---



〝チャンミン、、、ゴメン。送ってあげられない、、、〟



あの雨の日、、、
ヒョンを追いかけた僕、、、

憶えてる。
あの時のヒョンの瞳は、今にも泣きそうなほどに悲しげだった。


-- 風邪引いてないだろうか? ちゃんと寮に戻れただろうか、って、、、---

・・・・・「ヒョンが、、、傘、、、貸してくれたから、、、」

--- すぐに会いに行きたかったけど、もう、僕には会いたくないんじゃないかと、、、
そう思うと怖くて、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 誰と居ても、笑えなくて、、、楽しくなくて、、、
自分の心の中が、チャンミンで一杯になってることを、改めて実感したよ、、、---

・・・・・「ヒョン、、、」

--- チャンミンの気持ちは理解できる。だから、チャンミンの思うようにすればいい。
僕はそれに従うよ。---


ヒョンもまた、ユノヒョンと同じ。
僕が悪いのに、咎めようともしない。

そして、僕の我儘を何も言わずに受け入れてくれる。


・・・・・「本当に、ごめんなさい、、、」

思わず頭を下げた。



--- 電話、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 時々は、電話くらいしてもいいだろ?---

・・・・・「ヒョン、、、」

顔を上げてヒョンを見ると、
テーブルの上の手を小さく震わせながら、苦笑いしている。


--- チャンミンの言う通りにするよ。それがチャンミンの望みなら、、、だけど、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 僕も離れている間、ずっと考えてた。やっぱり、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- やっぱり、僕はどうしてもチャンミンが好きなんだ---

・・・・・「ヒョン、、、」


震えていたヒョンの手は、何時しかきつく握られていた。


--- チャンミンのしたいようにすればいい。
好きだから、好きな人の思うようにさせてあげたい。けど、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- これだけは言わせて---

・・・・・「・・・・・」

---信じてる。チャンミンを、、、待ってるから、、、---






別れ際、、、
運転席の窓から顔を出したヒョンは、
普段となんの変りもなく、微笑みながら僕に手を振った。


--- またね、チャンミン、、、電話、、、するから、、、---


そう言うと、ゆっくりと車が走り出す。


僕は、ヒョンの車が見えなくなっても、
その場所から、暫く動くことができなかった・・・・・







116へつづく

読者の皆さま、こんにちは。
この115話で、旧館からの転写作業は終わりました。
次回の116話から、未公開の新作です。

先日の「お知らせ」の記事に書かせていただいた通り、
22時の定時更新に、「横恋慕。」と「真夜中の観覧車。」どちらかのお話を更新する形を基本にしたいと思います。
それ以外には、時間の余裕があれば、定時以外に更新出来たらと思っています。
よろしくお願いいたします。

今まで1日2話更新にお付き合いくださった読者さま、
本当にありがとうございました。
今後とも、「真夜中の観覧車。」をよろしくお願いいたします。




こころ。

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真夜中の観覧車。-scene7-



--- なんかあった? ---


午前中の授業を終え、イソンと部屋へ戻る途中、
売店に寄って、ペットボトルのコーラを買った。


・・・・・「何かって?」


隣りを歩くイソンが、不思議そうに僕の顔を覗き込む。


--- お前が食欲ないって、、、どっか悪いのか? ---


食堂で、ランチをしようというイソンの誘いを断った。
昨日と今日、、、2度目だ。

並んで歩く僕の前に回り込んで、僕の脚を止める。
ふいに、伸びてきたイソンの掌が僕の額を覆う。


--- 熱はなさそう、、、---

・・・・・「何でもないって、、、ちょっとお腹の調子が悪いだけだって、、、」

--- そう? ならいいけど、、、---


再び歩き出したイソンの手には、
サンドイッチとおにぎりが2つ入ったビニール袋がぶら下がってる。


・・・・・「行ってくればよかったのに、、、」

「ん?」

・・・・・「僕に構わず、食堂、、、行ってくればいいのに、、、」


ぶらぶらと揺れるビニール袋を見つめながらそう言うと、


--- ま、俺もそんなに、、、腹減ってないしさ、、、---


イソンが、僕のことを気にかけてくれているのは分かってた。



あの夜・・・

ユノヒョンからの電話があったあの夜から、1週間が過ぎた。
あれからいつも、気が付けばユノヒョンの事を考えてる。



〝お前が好きだよ、、、〟


何度も何度も、僕の頭の中をこだまする。


--- あの、もしかしてさ、、、---

・・・・・「ん?」


自室の前・・・
ポケットから鍵を取り出して、カチャ、、、っと鍵を開けた時、、、


--- 俺が言ったこと、気にしてたりする? ---

・・・・・「えっ?」


思わずドアノブを回す手が止まった。




〝あの人と、付き合ってんの? 〟



・・・・・「そうじゃないよ、、、」


止まった手を、もう一度動かし、扉を開く。


--- 俺も、、、いいか? ---

・・・・・「どうぞ、、、」


少しバツが悪そうなイソンを、扉を開いて招き入れた。


テーブルの上には、サンドイッチとおにぎりが2つ。
一緒に買ってきたペットボトルのお茶を開けて、
ゴクゴクと音を立てて喉に流し込むイソンを見ていた。


--- 大食いのお前がさ、昼飯食わないとか、心配になるだろ?---

・・・・・「ホントに何でもないって、、、心配性だな、、、」


そう言うと、ペットボトルをテーブルに置いて、サンドイッチを一口かじる。

デスクの椅子に座っていた僕は、
コーラの泡が少しずつ消えていくのを眺めていた。


--- まぁ、お前が言いたくないのならいいんだけど、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 飯は食え。な? ---


そう言いながら、テーブルの上のおにぎりを1つ手にし、僕に差し出した。


--- ほら、、、食え、、、---

・・・・・「僕、、、」

--- ん? ---

・・・・・「たらこの方がいい」


真面目な顔をしてそう言ったら、
キョトンとした顔をした後、、、


--- ぷっ、、、お前って奴は、、、---

・・・・・「ふふふ、、、」

--- ほら、、、---

・・・・・「ありがと」


僕は、いつも誰かに支えられている。


それは、ユノヒョンだったり、キュヒョンだったり、、、
ヒョンだったり、イソンだったり、、、


--- どした? ---

・・・・・「ううん。いただきます」


イソンがくれたおにぎりは、いつもよりももっともっと、美味しくて、幸せな味がした。





それから、長い時間が過ぎた。

短い秋が駆け足で過ぎて、気が付けば通りの街路樹の葉は落ち、
冷たい風が吹き始める。


--- うぉーっ、、、さむっ、、、な、チャンミン、、、
次の授業サボッて、ラーメン食いに行かね? ---

・・・・・「うーん、、、ラーメンか、、、どうしようかな、、、」


講義室の窓から、初冬の空を見上げる。
まるで夏の空のような、抜けるような青が広がる。


・・・・・「そうだな、、、久しぶりに、深呼吸したくなってきた」

--- 深呼吸? ---

・・・・・「うん、そう、深呼吸」

--- ん、、、なんだか分かんないけど、、、行く? ---

・・・・・「行こう、イソン、、、」


授業終了の合図とともに、
僕達2人は講義室を駆け出た。


鞄を手に、長い廊下を2人して走って、中庭に出る。


・・・・・「はーーーっ、、、気持ちいい、、、」


辺りには、この寒空のせいか、学生の姿はない。
腕を大きく広げて、冷たい空気を胸いっぱいに吸い込んだ。

僕の隣りで、イソンが同じように腕を広げてる。

--- ん、確かに気持ちいい、、、けど、、、---


〝〝さむーーーーっ〟〟


2人同時に、そう叫んだ。


--- よし、行くぞ、チャンミン!! ---


正門に向って歩き出す。
昨夜見たテレビの話で盛り上がりながら歩いていると、、、



気が付けば、隣に居るはずのイソンがいない。
脚を止めて、振り返ると、、、

少し後ろに、立ち止まって何かを見つめているイソンがいる。


・・・・・「イソン、、、どうしたの?」

--- チャンミン、、、あれ、、、---

・・・・・「ん?」

--- あの人、、、---


イソンが、遠慮がちに指を差す。
それは、正門の方角、、、


振り向いて、一瞬、呼吸が止まった。


・・・・・「ヒョン、、、、、?」


久しぶりに見る横顔、、、

正門の壁に背を預け、俯いているヒョンが、そこに居た・・・・・








115へつづく

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真夜中の観覧車。-scene7-




「大事なお前を、渡さない、、、、、」


その言葉に、胸が張り裂けそうになったと同時に、
頭の中がぐちゃぐちゃに混乱した。

だってそうだろ?


あの時・・・・・




〝チャンミンくん、、、、


ユノは、貴方が好きなの、、、、
ユノは、貴方を愛してる、、、、〟



あの海で読んだ、ミファさんからの手紙・・・
その中に書かれていた、ユノヒョンの本当の気持ち・・・

忘れろって、、、
あの時そう言ったのは、他の誰でもない。

ユノヒョンなのに・・・

だから僕は、兄と弟。
子供の頃から仲の良い兄と弟。

今までと変わらず兄弟で居ようと、そう心に決めたのに・・・・・


なのに、今更、、、
〝渡さない〟なんて、、、


・・・・・「ヒョンは酷いよ、、、」

「えっ?」

・・・・・「ヒョンが、忘れろってそう言ったのに・・・」

「チャンミン、、、」

・・・・・「そんな事、今になって言うなんて、、、」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョンがそんなだから、、、僕が、、、」

「・・・・・」

・・・・・「僕がこんなに苦しいんだろ!!!」


何をやってるんだろう。
これは、ただの八つ当たりだ。

自分がハッキリ出来ないのを、ユノヒョンのせいにしてるだけ。

僕は、最低だ・・・・・



「そうだな、、、チャンミンの言う通りだ。」

・・・・・「・・・・・」

「ゴメン、、、」

・・・・・「・・・・・」


ユノヒョンは、こんな風にいつも僕を甘やかす。
悪いのは僕なのに、叱咤することもない。


「お前には、笑っていてほしいんだ・・・」

・・・・・「・・・・・」

「俺、お前に言ったことあったかな? 
ガキの頃からさ、お前の笑った顏が、すげぇ好きなんだ、、、」


僕だって、、、
僕だってユノヒョンの笑顔が好きだよ。


「それだけなんだよ、チャンミン、、、だから、、、」

・・・・・「・・・・・」

「だから、お前を泣かす奴は、、、」

・・・・・「ヒョン、、、」

「・・・・・」

・・・・・「それは、、、それは兄として?」

「チャンミン、、、」

・・・・・「僕は、、、僕は弟なの?」


こんなことを、口にしてはダメだと分かってた。
ミファさんの手紙に書かれていたことがもし、、、ユノヒョンの本心なら・・・

僕達は、今のままじゃいられない。
それが分かっていたから、僕たちは変わることなく兄弟でいる事を選んだのに・・・


・・・・・「ゴメン、、、何でもない。忘れ、、、、」

「違う、、、、、」

・・・・・「・・・・・」

「違う、、、」

・・・・・「ヒョン、、、」

「弟なんかじゃない。俺は、、、」

・・・・・「ヒョン、、、止め、、、」

「お前が好きだよ、、、」



ユノヒョンの声は、まるで怯えているように小さく震えていた。


・・・・・「ヒョン、、、」

「ゴメン、、、」

・・・・・「どうして謝るの?」

「・・・・・」

・・・・・「謝らないでよ、、、」

「ゴメン、、、」

・・・・・「だから、謝るなって!!」

「・・・・・」

・・・・・「謝るくらいなら、初めから言わないでよ、、、」

「チャンミン、、、」

・・・・・「僕は、、、」

「・・・・・」

・・・・・「僕は一体、どうすればいいの? ヒョン、、、教えてよ、、、」



僕は、泣くことを我慢しなかった。
もしかしたら、隣の部屋のイソンにも僕の泣き声が届いてしまったかもしれない。

けれど、僕は泣くのを止めなかった。


泣いて泣いて、泣き疲れて、、、

ようやく泣き止んだ僕に、ユノヒョンはまた、ゴメン、、、と小さく囁いた。


・・・・・「ヒョン、、、」

「俺はさ、チャンミン、、、」

ユノヒョンが、その時何を言おうとしたのかは分からない。
けれど、僕はそのユノヒョンの言葉を遮った。

そして、、、


・・・・・「ヒョン、、、僕、ちゃんと向き合う。」

「・・・・・」

・・・・・「ユノヒョンとも、、、ユンスヒョンとも、、、自分自身とも、、、だから、、、」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョン、勝手に答えを出さないで? 」


向きあおう。
今まで目を逸らしてきたものすべてに、真正面から向き合おう。
そうすれば、自ずと答えは出る・・・


「分かったよ、、、」





〝また電話するよ〟


そう言って、電話は切れた。


泣き疲れた僕は、スマホを握りしめたままベッドに意識ごと沈み込んだ・・・・・






114へつづく

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真夜中の観覧車。-scene7-




「久し振りだな、チャンミン、、、」

・・・・・「うん、、、」

ようやく落ち着いた僕に、ヒョンが優しく話しかける。
ヒョンに悟られないように、濡れた頬を拭いながら、平静を装い返事をした。


・・・・・「ヒョン、、、元気にしてるの?」

「ん、、、まぁな、、、」

・・・・・「あ、そう言えばさ、キム先輩に見せてもらった」

「えっ?何を?」

・・・・・「写真だよ。女子の隣りでデレてたろ?」

「バカ言うなよ、、、」


電話の向こうで、ユノヒョンが小さく笑ってる。
見えなくても分かる。
ヒョンがどんな顔をして笑うのか、、、


「遅くにごめんな? もう寝てたか?」

・・・・・「ううん。実は、キム先輩たちと飲んでて、、、少し前に戻ってきたところ。」

「あいつら、、、ったく、、、」

・・・・・「優しくしてもらってる。ありがと、ヒョン、、、」


分かってる。
先輩たちが僕の事を気にかけてくれる理由、、、

きっとヒョンが、

〝チャンミンを頼む〟

何度もそう、言ってくれたんだって・・・


「別に、俺は何も、、、」

・・・・・「うん、、、でも、ありがと。」

「ヘンなやつ、、、」

・・・・・「ふふ、、、」


不思議だ。
ユノヒョンとは、どんなに遠く離れた場所に居ても、
長い時間、声を聴いていなくても、
まるで、ついさっきまで一緒に居たように、自然と話すことが出来る。

心地よい感覚・・・
背伸びしないで、ありのままの僕で居られる。


・・・・・「ヒョン、、、何かあった?」

「どうしてだよ?」

・・・・・「だって、確かメルボルンと韓国の時差は1時間だって、そう言ってたよね?」


ヒョンが韓国を発つ前、そう教えてくれたことを思い出した。


「ああ、そうだけど?」


ちらりと、机の上の時計に目をやる。
もう、日付が変わってる・・・


・・・・・「てことは、そっちは夜中の1時過ぎてるってことだろ?」

「・・・・・あぁ」

・・・・・「ヒョンがこんな時間に、、、珍しいと思って、、、」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョン?」


ヒョンの声が途切れる。
僕、何か変なこと言ったかな?

自分が口にした言葉を思い出していると、、、


「夢、、、見たんだ。」


さっきまでとは、少し声のトーンが違う。


・・・・・「夢?」

「お前がさ、、、」

・・・・・「・・・・・」

「お前が泣いてるって、、、ミファが、、、」

・・・・・「ミファさん?」

「うん、、、」


ミファさんからの手紙を、ふっと思い出す。
彼女はまだ、天国から僕たちの事を気にかけてくれているのだろうか・・・


「あいつさ、今まで一度だって夢に出てきたことなかったくせに、、、」

・・・・・「・・・・・」

「ようやく顔見せたと思ったら、お前の事ばっかりでさ、、、」


小さく苦笑いするユノヒョンの声・・・


「チャンミンくんが泣いてるから、早く連絡しろって、、、何だろな? 可笑しいだろ?」

・・・・・「ヒョン、、、」


それで僕を心配して、電話をくれたんだね。


「お前さ、、、その、、、」

・・・・・「・・・・・」

「あれから、どうなんだ? 上手くいってるか? 仲直りしたか?」


〝仲直りしろよ?〟


憶えてる。
メルボルンに発つ空港で、別れ際にユノヒョンは僕にそう言った。
ずっと、気にかけてくれてたのだろうか、、、


・・・・・「大丈夫だよ。気にしないで?」


ユノヒョンに本当の事なんて言えなかった。
言えば、また心配するに決まってる。

慣れない場所で、一生懸命に頑張っているユノヒョンに、
僕の事で、余計な心配をかけたくはない。

だから、僕はそう答えた。



なのに、、、

なのにユノヒョンは、、、



「何かあったんだろ?どうした? 言えよ?」


僕の小さな小さな動揺すら、ユノヒョンは見逃してはくれない。
顏も見えない、声だけの電話でのやり取りなのに、、、

普段はいつも鈍感で、僕の気持ちなんて、
幼いころから長い間、全く気が付かずにいたくせに・・・・・


なのにどうして、今、、、


「チャンミン?」

・・・・・「今、、、」

「・・・・・」

・・・・・「今、会ってないんだ」

「会ってないって、、、どういうことだよ?」

・・・・・「・・・・・」

「チャンミン、、、」

・・・・・「僕が悪いんだ。全部僕が、、、」


そう、、、

全部僕のせい、、、

自分の気持ちすら、理解できないバカな僕が、全部・・・・・

ヒョンは悪くない、、、
ユノヒョンも悪くはない。

悪いのは全部、、、、


僕なんだ・・・・・



治まっていたはずの涙が、次から次へと溢れてくる。
泣いたらダメなのに、、、
また、ユノヒョンに心配をかけてしまうのに、、、

けれど、、、

息を詰まらせながら、泣くのを我慢している僕を、
ヒョンが見逃すはずもなかった。



「お前を泣かす奴は、俺が許さない、、、」


低く響く声・・・
ヒョンが今、どんな顔をしているのか、
容易に想像できるほど、強張り硬く冷たい声・・・


・・・・・「ヒョン?」

「チャンミン、、、」

・・・・・「・・・・・」

「もう、、、泣くな、、、」

・・・・・「・・・・・」

「俺が、、、」

・・・・・「・・・・・」

「俺が、、、」

・・・・・「・・・・・」

「俺が守ってやる。お前を泣かせるような奴に、、、」

・・・・・「・・・・・」

「大事なお前を、渡さない、、、、、」

・・・・・「ヒョン、、、」



ユノヒョンの声が、僕の心臓を大きく揺らした・・・・・










113へつづく

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真夜中の観覧車。-scene7-




屋台から出る頃には、すっかり雨は止み、
僕達は閉じた傘を手に寮へ戻る。

--- 傘、お店に借りてきたんだ---

・・・・・「そう、、、」

--- また、返しに行かないと、、、---

・・・・・「うん、、、そうだね、、、」


他愛もない事を話しながらも、
さっきイソンに言われた言葉が、僕の頭の中から離れない。


〝あの人と、付き合ってんの? 〟


イソンの目には、どう映ったのだろう。
男同士の恋愛なんて、きっと変に思ったに違いない。


--- じゃあ、、、チャンミン、、、明日、、、---


長く感じた寮までの道、、、
ようやく辿り着いて、それぞれの部屋の前で別れる。


・・・・・「うん、、、」

--- あ、お前さ、シャワー浴びろよ? そのままだと風邪引くぜ? ---

・・・・・「うん、ありがと。」

--- おやすみ、、、---

・・・・・「おやすみ、、、」


鍵を開けて、扉を開く。
脚を一歩踏み入れて、立ち止まる。


・・・・・「イソン、、、」

--- ん?---

・・・・・「あのさ、さっきの話だけど、、、」


言わなくてもいいのに、
自分から蒸し返すなんて、、、

バカだな、僕、、、

けど、モヤモヤした気持ちのままでいられない。



・・・・・「あの人さ、、、実は、、、」

--- チャンミン、、、---


イソンは、僕の話を遮った。


--- 俺でいいなら、いつでも聞くからさ、、、---


そう言って、開けかけた扉の向こうから顔を覗かせる。


--- 兎に角、今日は早く寝ろよ、、、な? ---


イソンは笑っていた。
その顔を見たら、それ以上何も言えなくなった。


・・・・・「うん、、、そうするよ、、、」

--- よし、じゃあな、、、---


パタン、、と、イソンの部屋の扉が閉じる。

もし、僕が正直に答えたとしても、
それを聞いたイソンは、きっと戸惑うに違いない。

困らせちゃったな、、、

暫くその扉を眺めていたけれど、
雨に濡れた身体から、今頃冷えを感じて自室に戻った。


そのまま着替えを手にシャワーを浴びに行き、
部屋に戻ってきたときには、もう日付が変わろうとしていた。


・・・・・「はぁっ、、、疲れた、、、」


思わず口に出た。
ベッドに身体を投げ出し、うつ伏せになって目を閉じる。

瞼の裏に浮かぶのは、ヒョンの背中。
1つの傘・・・
彼女と2人並んで歩くその背中・・・

その残像を消すように、何度か頭を振った。


その時、、、


微かに聞こえる、スマホのコール音。
のっそりと起き上がり、耳を澄ます。

脱ぎ捨てたままだった、湿ったパンツのポケットに手を突っ込む。


こんな時間に、誰だろう、、、
スマホを取り出し、ディスプレイを確認すると、、、


・・・・・「えっ?ヒョン?」


目を手の甲で何度も擦って、確認する。
けど、やっぱり浮かぶ名前は間違いなく、、、


・・・・・「もしもし?」


慌てて応答して、ドキドキしながら声を出す。


「もしもし? チャンミンか?」

・・・・・「ヒョン?」

「よっ、チャンミン、、、」


久し振りに聞く、ユノヒョンの声・・・
どうしてだか、胸がギュッと痛くなった。


「チャンミン?」

・・・・・「・・・・・」

「どうした? おい、、、」


ユノヒョンの声が、僕の心に染みてゆく。
痛む胸が、瞳を滲ませる。


・・・・・「バカ、、、」

「えっ?」

・・・・・「ヒョンのバカ、、、なんだよ、突然、、、」

「ゴメン、、、遅かったか?寝てた?」

・・・・・「バカ、、、」

「どうしたんだよ、チャンミン、、、」


泣いていることをユノヒョンに知られたくなくて、
僕は唇を噛みながら、必死で溢れる涙を堪えた・・・・・







112へつづく

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