FC2ブログ





私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。-scene4-








・・・・・「お待たせ。待った?」

--- ううん。俺も今着いたところ。---


待ち合わせたのは、賑やかな通りにある時計塔の前。


・・・・・「キュヒョン、寒いよ。早く行こう。」

--- そうだな ---


厚いコートに身を包んだ僕とキュヒョンは、
いつもより早いスビートで歩き出す。


・・・・・「何にするか、決まってる?」

--- うーん、、、女の子って何が欲しいのかよく分かんなくて。---

・・・・・「イヴはもう明日だよ?」

--- だから困ってんだろ? ---



そう、明日は12月24日。
クリスマスイヴだ。

昨夜遅く、キュヒョンが情けない声で電話を掛けてきた。
彼女に贈るプレゼントをまだ準備できていなくて困ってるって・・・


・・・・・「大体、僕に聞くのが間違ってる。そう言うのは、彼女が居る奴か、もしくは女子に聞くもんじゃない?」

--- そう言わずにさ、、、付き合ってよ---

・・・・・「別にいいけど、、、」


僕と違って、結構女の子には積極的なキュヒョン。
なのに、クリスマスとか誕生日とか何かの記念日とか、、、
そう言う大切な時には、どうしてだか気が利かない。

そう言うものは、もっと前から準備しておくものなのに・・・


・・・・・「もう少し早めに準備しておかなくちゃ、、、」

--- そういうお前は、もう準備してんの?---

・・・・・「えっ?」


そう言われて、ハッとする。


--- ああ、そう言えばチャンミンは彼女居ないんだよな。失礼。---

・・・・・「ねぇ、そういういい方はないんじゃない?」

--- だってホントの事だろ? ---


キュヒョンが〝はぁっ、、、、〟と大きなため息をつく。


--- 誕生日だとか、クリスマスだとか、付き合って何日だとかさ、、、
そう言うの、結構大変で、疲れるんだぜ? ---


そんなことを言いながらも、
キュヒョンは通りの店に並ぶ、お店のウインドウをチラチラと気にしてる。


・・・・「はいはい。それで、、、?」

--- うん。アクセサリーとか、定番だけどどうかなって、、、---

・・・・・「いいんじゃない? 一番女の子が欲しがるものだと思うけど?」

--- よし、じゃあそうする。行こう。---


急に張り切るキュヒョンに腕を引かれ、
歩くスピードがまた上がる。


白い息を吐きながら、僕はキュヒョンの後を追った。




結局、キュヒョンはハートをモチーフにした可愛らしいネックレスを選んだ。
綺麗にラッピングされたそれを、嬉しそうに見ているキュヒョンが、なんだかとても羨ましくて・・・

さっき、キュヒョンに言われた言葉が、脳裏にチラチラと映る。


〝そういうお前は、もう準備してんの?〟



もう、、、何日顔を見てないだろう・・・
何日声を、聴いてないだろう・・・


数える事すら、出来なくなってた。

ヒョンからは連絡はない。
僕も、今更何を言えばいいのか分からなくて・・・

もしかしたら、このまま僕たちは終わるのかもしれない。
そんなことが、頭を過る。


--- チャンミン、今日はサンキュ。---

・・・・・「気にいってくれるといいね。」

--- ん。また電話するからさ。じゃあな。メリークリスマス! ---

・・・・・「メリークリスマス。またね。」


キュヒョンのクリスマスイヴが、素敵な1日になりますように。

嬉しそうに歩いてゆく彼の背中を見つめながら、
僕は心の中で、そう祈った。





次の日・・・

僕はいつもと何も変わらない1日を過ごした。
夕飯を済ませて、母さんが作ってくれたイチゴのケーキと、美味しいチキンを食べた。

部屋の窓から空を見上げると、夜の空からきらきら光る雪が、チラチラと舞い落ちる。

ふっと、机の上に視線が止まった。


〝合格祝い。気にいってくれれば嬉しいけど、、、〟


ユノヒョンが僕にくれた腕時計。
勿体なくて、机の上に飾ったままだった。

そっと取り出して、腕につけてみる。
とても大人っぽいデザインで、なんだか着けただけで、ちょっと大人になった気分だった。

そして、その隣には、赤と緑のリボンが付いた、小さな包み。


・・・・・「ヒョンに似合うと思ったんだけどな、、、」


冷たい風が、開いた窓から吹き込む。
ブルリと身震いして、急いで窓を閉めた。


その時、、、

携帯からメッセージを知らせる音が流れる。

・・・・・「ヒョン?」

もしかして、、、?
そういう気持ちが先に立って、急いでメッセージを開く。


・・・・・「ユノヒョン、、、」


メッセージの贈り主は、ユノヒョンだった。


そこには、、、


〝チャンミン、メリークリスマス!〟


短いメッセージと共に、1枚の写真・・・


サンタの帽子を被ったヒョンが、ベッドの上に半身を起こしたミファさんの肩を抱いて、
楽しそうに2人で笑ってる。

ミファさんは、とても幸せそうな顔で、
ヒョンからのプレゼントだろうか、、、
大きなリボンが掛ったクマのぬいぐるみを抱きしめている。


羨ましかった。
クリスマスイヴの夜・・・
好きな人の傍に居られること、、、それがとても羨ましかった。


机の上の、小さな包み。
手に取って、胸に抱く。


・・・・・「ヒョン、、、会いたいよ、、、」


ギュッと胸が痛む。
熱い物が、目の奥が滲みでそうになったその時だった。


今度は、電話の着信を知らせる音・・・


見ると・・・


・・・・・「、、、ヒョン、、、」


ディスプレイには、ヒョンの名前が浮かんでいた。
さっきの胸の痛みが、今度は大きな鼓動へと変わる。


僕は、小さく深呼吸してから、、、


・・・・・「もしもし、、、」


応答した。


--- チャンミン? ---


久し振りの声・・・
名前を呼ばれただけなのに、もう、、、泣きそう・・・


--- 表に居る。コートとマフラー、温かくして出てきてほしい。待ってるから、、、---


それだけ言うと、電話は切れた。


何も考える余裕はなかった。

僕は、ベッドの上に置きっぱなしにしていたコートと、マフラーを慌てて身に着け、
リュックの中に携帯を放り込む。

扉を開いて、駆け出そうとして、脚を止めた。
振り向いて、さっき抱きしめていた包みを手にし、そしてそのまま階段を駆け下りた。




--- ごめん。突然・・・・---

ヒョンの顏は、少し強張ってる。
僕は、声に出さず、ただ、首を振った。


--- 時間、、、いいかな? 付き合ってほしいところがあるんだ。---


そのままヒョンの車の助手席に乗り込む。
静かな車内。

車は、ゆっくりと走り出した。




長い長い時間に感じた。
途中、ヒョンは何も話さなくて・・・

小さな音でかかる洋楽のCD。
その音楽を聴きながら、僕は窓の外の流れる景色をずっと見ていた。

何処に行くのかも分からないまま、1時間ほど経った頃・・・



「着いたよ。行こう・・・」


車を降りて、ヒョンの後を歩く。
もう、時間は21時を回ってる。
けど、到着したその場所には、数人の人たちが、順番を待っていた。

その後方に僕達も並ぶ。

暫くすると、僕達の後ろにも数人の人が並びだす。
けれど、みんな恋人同士・・・
男同士でこの場に居ることが、少し恥ずかしかった。

どの位待っただろう・・・


ようやく、僕達の順番が来て・・・


--- ほら、チャンミン・・・---

乗り込んだのは、観覧車・・・



〝そのパークにある夜の観覧車に乗ったカップルは、永遠に結ばれるって、、、〟



狭い空間に、僕達二人だけ。
扉がカチャリと閉じて、僕達の乗った観覧車は、ゆっくりと動きだした。


--- ずっと待ってたんだ・・・---


ヒョンが静かに話を始める。


--- けど、チャンミンからの連絡はなくて。だから、もう僕はいらなくなったのかなって、、、---

・・・・・「ちっ、、、ちが、、、」

--- けど、思ったんだ。もし仮にそうだとしても、自分の気持ちがそれでいいのかって・・・---

・・・・・「・・・・・」

--- 答えは、Noだ。 ---

・・・・・「ヒョン・・・」

--- チャンミンを手放す気はない。好きだから、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- これ、、、男の子のチャンミンにこんなのはどうかと思ったけど、でも、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- どう思われたっていい。女々しい奴って思われたって、、、
けど、どうしても、、、チャンミンを自分に縛り付けておきたい。僕の物だって、、、---

・・・・・「ヒョン・・・」


差し出されたのは、小さな箱に入ったシンプルなペアの指輪・・・


--- 受け取ってほしい。ダメかな? ---


上昇してゆく僕達だけの空間。
下を見下ろすと、テーマパークの明るい光と、遠くに見える街のネオン。

キラキラと輝くその景色がとても綺麗だ。


・・・・・「この観覧車に乗ったら、永遠だって、、、キュヒョンが、、、」

--- うん。---

・・・・・「僕が、悪いのに・・・ヒョンを傷つけた。なのに、、、永遠なんて、、、」

--- ここで誓ってほしい。僕は、チャンミンが好きだよ。どんなチャンミンも、、、---

・・・・・「ヒョン、、、」

--- ん? ---

・・・・・「ごめんなさい。」


会えなくて、寂しかった。
声が聞けなくて、辛かった。

僕が悪いから・・・仕方ないと、、、
嫌われても、終わっても仕方ないとそう思ってたのに・・・

ヒョンは、何も言わない。
僕を責めない。

苦しいほど、優しくて温かい。


--- そう思うなら、、、ほら、、、---


僕の手を取り、そっと指に指輪をはめてゆく。
自分の指にも、同じように指輪をはめると、その手を僕の手に重ね合わせた。


--- 誓うよ、チャンミン。僕は、永遠に君を愛する。---

・・・・・「ぼ、、、僕も、、、ヒョンが好き・・・ずっと、、、」


僕のその言葉に、ヒョンが今日初めて笑った。



--- これを僕に? ---

・・・・・「つまらないものだけど、、、」


もう、渡すことはないと思ってたヒョンへのクリスマスプレゼント。


--- 開けていい? ---

・・・・・「うん。」


カサカサと包みを開けて、、、、


--- わぁ、帽子? ---

・・・・・「うん。暖かいかと思って・・・」


それは、キュヒョンと出掛けた時に見つけたニットの帽子。
キュヒョンと別れた後、1人で選んで買っておいた、ヒョンへのプレゼント。


--- どう?似合う---

・・・・・「うん。とっても似合ってる。」

--- 暖かいよ、チャンミン、ありがとう ---

・・・・・「ヒョン、ほら、見て? 一番上だよ」




僕たちの乗った観覧車は、一番高い場所・・・


--- 綺麗だね、チャンミン---

・・・・・「うん。」


まるで、僕とヒョンだけの世界のように、
静まり返ったその空間・・・


--- チャンミン、、、---

・・・・・「ん?」

--- メリークリスマス、、、---



ヒョンが立ちあがり、観覧車がグラリと小さく揺れる。


その刹那・・・


暖かくて柔らかいヒョンの唇が、
僕の唇に優しく重なった・・・・・








68 -scene5- へつづく

いつも応援ありがとうございます。
次回の更新から、 -scene5-  に入ります。


にほんブログ村








スポンサーサイト








私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。-scene4-








・・・・・「ヒョン・・・上がってく? 」

「ん、、、ありがとな。でも、もう遅いからさ、、、また今度・・・」

・・・・・「ん、、、」


ユノヒョンとの約束の1日が終わる。

僕の家の前・・・
運転席のユノヒョンと、助手席の僕。
2人の間に、しばしの沈黙が流れる。

オーディオから流れてる曲。
ユノヒョンの趣味じゃない。
きっと、ミファさんの好きな曲・・・


ふーっ、、、っと小さな息を吐いて、口を開いたのはユノヒョンだった。



「なんか、、、ごめんな、チャンミン・・・」

・・・・・「どうして?ヒョンが謝ることなんて何もないよ、、、」



ユノヒョンの言いたいことはなんとなく分かる。
きっと、ミファさんの事を僕に言うつもりなんか、なかったんだと思う。

それに、泣き顔なんて、僕に見られたくなかっただろう。

僕が、あんなふうに聞いたりしなかったら・・・
申し訳ないのは、僕の方だ。


・・・・・「ヒョン、、、僕、ミファさんのお見舞い、、、行こうかな、、、ダメ?」

「ありがと。けど、アイツ誰にも会いたがらなくて、、、」

・・・・・「そう・・・・・」

「伝えとくよ。チャンミンが心配してくれてたって。」

・・・・・「うん。お大事にって、、、伝えておいて?」

「分かった。」

・・・・・「それと、、、」

「ん?」

・・・・・「ヒョンも、身体に気を付けて? 」

「俺?」

・・・・・「うん。いろいろ・・・大変でしょ? 心配だよ。」



隣りの運転席に視線を送ると、同じタイミングで、
ユノヒョンと視線がぶつかった。


「俺は、いい弟を持って幸せだな。」


少し悲しそうな笑みを浮かべて、
ヒョンの手が、僕の髪に触れる。

サワサワと優しく撫でられて、少し恥ずかしかったけど、
なんだか出会ったころの子供のような気持ちになって、僕はそのまま、その優しい感触に浸っていた。


・・・・・「今日はありがとう。楽しかった。」

「ん。いろいろ今から準備も大変だろうけど、
分からないことや困ったことがあったら、いつでも連絡しろよ。」

・・・・・「うん。そうする。」

「早く寝ろよ、チャンミン。」

・・・・・「うん。」

「ああ、、、それと、、、これ、、、」


ヒョンの手が、車のダッシュボードを開く。
そこから取り出された、赤いリボンの掛った小さめの箱・・・


「これ、、、」

その箱を、僕に差し出す。

・・・・・「何、、、これ、、、」

「ほら、いいから、、、」


グッと押し付けられ、僕はそれを受け取る。


「合格祝い。」

・・・・・「えっ? ほんとに? 僕に?」

「ん、、、気にいってくれれば嬉しいけど、、、」

・・・・・「開けていい?」

「ダメダメ、、、恥ずかしいから、戻ってからにしろよ。」

・・・・・「そう?なら、そうする。ありがとう、ヒョン。」




扉を開いて、車を降りる。
同じように、ヒョンも車を降りて・・・


「おばさんに挨拶、、、」

・・・・・「いいよ、ヒョンに会うと、母さん喜んで話が長くなるし。」


2人して笑い合う。


「じゃあ、よろしく伝えて?」

・・・・・「うん。」

「じゃあ、帰る。」

・・・・・「ヒョン、、、」

「ん?」

・・・・・「僕は、優しいヒョンを持って幸せだよ。」


ただ、ふっと口に出た言葉・・・
けど、僕のその言葉に、ユノヒョンは一瞬表情を固めて、、、

僕、、、何か悪いことを言っちゃった、、、?

そう、心に思った瞬間・・・



・・・・・「ヒョ、、、ヒョン?」

「このまま、、、、ちょっとだけ、、、」



ヒョンの腕が、僕の身体を引いて・・・
今僕は、ヒョンの腕の中・・・

すごく強い力で、抱きしめられてる。


通りはもう、暗い。
街灯が、相変わらずチカチカとしてて、、、

冷たい冬の空気・・・
吐く息は、白くて・・・

けど、ユノヒョンの腕の中はとても暖かい。
僕を抱きしめるその腕が、少し震えているのを感じて、
どうしてだか、僕は泣き出しそうになってしまった。


どの位、僕達は抱き合っていただろう。


突然、バッ、、と音がするくらいの勢いで、
ユノヒョンが僕の身体を引き離す。

その瞬間、僕たちの間に冷たい空気が流れ込む。
一気に、現実に戻された。


「ごめん、、、帰るよ、、、」

・・・・・「う、うん、、、気を付けて、、、」


そのまま、ユノヒョンは僕を見ることなく、
車に乗り込み、走り去った。



僕は、自分の身体を両腕で抱き締めたまま、
ユノヒョンの車を、ずっとずっと、見送っていた。





・・・・・「わぁ、、凄い、、、カッコいい、、、」



部屋に戻って、ヒョンに貰った箱を机の上に置く。
少し緊張しながらリボンを解いた。

箱を開けると・・・



僕には少し大人っぽい腕時計・・・・・


静かに時を刻むその様を、
僕はいつまでも見つめ続けていた・・・・・







67へつづく


にほんブログ村











私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。-scene4-







「あのカテキョと上手くいってんの?」



ユノヒョンは、いつもと変わらない表情で、
何でもないことのように、、軽くそう言った。


・・・・・「えっ? な、なに、それ、、、」


この数時間、ヒョンの事を忘れていた自分に気が付いた。
ユノヒョンにそう言われ、一瞬で、現実に戻った、、、そんな気がした。


「付き合ってんだろ? あのカテキョと、、、、」

・・・・・「そんなこと、、、、」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョンに関係ないだろ?」


手に持っていたフォークを、食べかけのケーキのお皿の上に置く。
カラン、、、と高い音が鳴った。


「まぁ、そうだけど。」

・・・・・「・・・・・」

「大事な、、、弟だからさ、、、お前は。」


お皿の上のフォークを、伸びてきたヒョンの手が掴む。
僕の食べかけのチョコケーキが、一口分、ヒョンの口の中に消えた。


・・・・・「僕のチョコケーキ・・・」


拗ねた風に言うと、


「買ったのは俺。」


そう言い返された。

照れ臭かった。

〝大事な弟〟 そう、言われて、恥ずかしかった。

けど・・・
でも・・・

とってもとっても、嬉しかった。



「まぁ、俺でよかったら聞くからさ。何かあったら言えよ。」

・・・・・「何も、、、ないよ、、、」

「なら、いいけどさ、、、」


ヒョンが、どうしてそんなことを僕に聞いたのか、
あの、ウインクの人の事を僕に話したのか、
気になったけど、その事についてユノヒョンは、それ以上何も言わなかった。




それから、暫くユノヒョンと大学のキャンパスで時間を過ごし、
そのままユノヒョンの寮の部屋に向かった。

この大学は、圧倒的に男子の割合が多いらしく、
地方からの学生も多い。

だから、男子寮はとても立派で大きなものだった。


ユノヒョンの部屋は、いくつかある棟のうち、1年生が集まっている棟の3階で、
キャンパスにいた時と同様、部屋に着くまでに何度も声を掛けられた。



--- ユンホ、お前、、、---

「なんだよ」

--- 神聖なこの男子寮に、女を連れ込むとは、、、---

「おいおい、、、よく見て見ろ、男だっつーの。」


ユノヒョンの背中に隠れるようにして、僕は俯いた。


--- っていうか、偉く可愛い子連れてきたな。---

「ん、俺の高校ん時の後輩。今度ここに入学するからさ」


今日、何度目だろう、、、
ユノヒョンは、何度も同じことを言ってる気がする。

そして、僕も、、、


・・・・・「シム・チャンミンと言います。初めまして。」

--- チャンミンかぁ、可愛いな。ユノの彼女? ---

「バカいうな、ほら、もういいだろ?」

--- チャンミンくん、寮に入るの? ---

・・・・・「いえ、まだ決めてなくて、、、」

--- 是非、入寮して。待ってるから ---

「ほら、どけよっ! 行くぞ、チャンミン」


僕達の前に立つ友達を押しのけるようにして、
ヒョンに腕を引かれながら廊下を歩いた。



「どうぞ」


通されたユノヒョンの部屋は、決して広いとは言えないけど、
思ってたより・・・


・・・・・「片付いてる。」

「そう? 」

・・・・・「僕が来るから、片づけたの?」


というか、部屋の四隅にやたらと物が、積み上げられてて・・・


「片づけたというか、、、あれだ、ほら、、、」

・・・・・「だね、部屋の隅に寄せたんだね。」

「はっきり言うなよ」


小さな冷蔵庫を開けて、取り出されたペットボトルのお茶。


「ほら、、、コップいる?」

・・・・・「ううん。このままでいい。」


キャップを開けて、一口喉に通した。


「狭いけど、一人部屋だし、結構快適。」

・・・・・「うん。十分だね。」

「コインランドリーも食堂もあるし、あと、ジムとか、コンビニもある」

・・・・・「へぇ。」


ぐるりと部屋を見わたす。


机の上には、テキストが山積みになってた。



「なんか、連中がおかしなことばっか言って悪かった。」

・・・・・「えっ?」

「ほら、この学校女が少なくて、、、
まぁ、ほとんどが冗談でふざけてるだけなんだけど、中には本気な奴とかもいてさ、、、」


ユノヒョンの話の内容が、全く分からなくて・・・


「お前さ、ほら、、、なんというか、男の割に可愛いというか、、、だからあんなふうに絡んでくんだよ。」

・・・・・「ヒョン、、、」

「ん?」

・・・・・「話しが見えない。」


キョトンとした顔をして、そう言う僕を見て、
ユノヒョンは、はぁっ、、、と大きくため息をついた。


「だから、、、、その、、、いるんだよ、男同士でその、、、付き合ったりしてるやつが」

・・・・・「・・・・・」

「そう言うの、信じらんないって思ってたけど、、、」

・・・・・「・・・・・」

「何というか、、、そう言うのもアリなんだなって、、、」

・・・・・「・・・・・」

「それだけ。」

・・・・・「うん、、、」



複雑な気持ちだった。
遠回りに、僕とヒョンの事を言われているような感じで・・・

だからユノヒョンは、さっきあんなことを僕に言ったんだろうか、、、

僕とヒョンの事を心配して、、、
それはそれで、なんだか複雑だった。

自分の気持ちがよく分からない。



気まずい空気が、僕達の間に流れているようで、
話題を変えたくて、僕は立ち上がり、ユノヒョンの机に近付く。

難しそうなテキストが沢山積み上げられていて、

そのうちの1冊を手にしたその時・・・・・



ふっと、僕の視界に映ったそれ、、、


積まれたテキストに押されるようにして、机の隅に置いてある写真立て・・・


僕は、テキストをもとに戻し、
その写真立てを手にして見つめた。


・・・・・「ミファ、、、さん?」


その写真の中には、ミファさんとユノヒョン・・・
病院のベッドの上?

病衣を着て、腕には点滴だろうか、、、チューブが幾つか繋がっているのが見える。
少し痩せたミファさんの肩を、優しく抱き寄せて笑うユノヒョン・・・・・


・・・・・「ヒョン、、、これ、、、」


振り返ると、ユノヒョンはベッドに腰を下ろして俯いてる。


・・・・・「ヒョン?」


僕の呼びかけに、ヒョンはゆっくりと顔を上げ、
僕と視線を合わせた。


その瞳が、ゆらゆらと揺れて・・・・・



・・・・・「これ、、、ミファさんだよね? どうしたの?」

「・・・・・」

・・・・・「何処か、、、悪いの?」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョン?」


ヒョンは、僕の質問に重い口を開く。


「ミファ、、、ちょっと厄介な病気に罹っちまってさ、、、、、」

・・・・・「病、、、気?」

「ダメかも、、、しんなくて、、、、、」

・・・・・「ダメ、、、って、、、、」




この前、、、
出会った時は、あんなに元気だったのに・・・・・


「人間なんて、ホント、分かんないよな、チャンミン・・・」

・・・・・「・・・・・」

「けどさ、、、」

・・・・・「・・・・・」

「あいつ、必死で戦ってる。なのに・・・」

・・・・・「・・・・・」

「なのに、俺、、、何もしてやれないって、、、ほんとに、情けないよ、、、」

・・・・・「ヒョン・・・・・」




ユノヒョンが、泣いてた・・・・・










66へつづく


にほんブログ村










私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。-scene4-






「ここが、講義室。 ここは、去年出来たばっかだから、まだ新しくて綺麗だろ?」

・・・・・「うん。広いんだね。」

「俺の指定席は、ここ」


そう言いながら、ユノヒョンはずらりと並んだ机の一番後ろの席に座る。


「眠くなったら、こうやって寝る。」


両腕を机の上で交差させて、その上に顔を伏せる。


・・・・・「おばさんに言いつけてやる。」

「ばーか。寝ながら聞いてんだよ。」

・・・・・「嘘つけ。」

「言っとくけど、、、」


身体を起こし立ち上がると、僕の目の前に立ち、顔を近づけた。


「俺、すごいんだぜ?」

・・・・・「な、何が? 何がすごいの?」


余りの顏の近さに、後退りしながらそう聞くと、
ユノヒョンは、ニヤリと笑う。


「俺、学部トップなんだぜ?」

・・・・・「・・・・・嘘だ。」


ヒョンが優秀だってことはもちろん知ってるけど、、、


「そんなこと嘘ついてどうすんだよ?」

・・・・・「だって、理工学だよ?」

「そうだけど?」

・・・・・「K大の理工学部だよ?」

「俺さ、チャンミン、、、」


信じられない、、、そんな表情をした僕を見て、
ユノヒョンはふっと、視線をそらして、大きなガラス窓から見える中庭を見つめた。


「S大失敗してさ、、、ここに来たわけ。」

・・・・・「知ってる。」

「カッコ悪いだろ?」

・・・・・「そんなこと、、、僕は、必死でここに来るために勉強したんだ。カッコ悪いとか、、、」

「違うよ、、、そうじゃなくて、、、」

・・・・・「・・・・・」

「大学落ちたからって、腐っちゃカッコ悪いだろ?」

・・・・・「ヒョン、、、」

「つまんないプライドだけどね。でも、俺には重要。」

・・・・・「・・・・・」

「俺は、受験に失敗したけど、負けたって思いたくなかった。
それなら自分がいる場所で、1番になってやるって、そう思ってここに入学した。」

・・・・・「うん、、、」

「絶対、〝失敗〟じゃなくてさ、〝成功〟したんだって、、、
ここを卒業するとき、そう思えるようになってやろうって、、、」


やっぱり、ユノヒョンはユノヒョンだった。
空を見上げるその背中が、とっても大きく見えた。

すごく、カッコ良かった。


・・・・・「ヒョン、、、」

「ん?」

・・・・・「今、すごくカッコいいよ。」


僕のその言葉に、ユノヒョンは一瞬目を丸くして、そして、、、


「俺は、いつでもカッコいいんだよ」


そう言って、ふわりと笑った。
僕も、それに釣られて笑う。


僕も、ユノヒョンみたいになれるかな?
その時、僕は思ったんだ。

僕は、いつかヒョンに追いつけるだろうか・・・
越えることは、きっと一生無理な気がする。
けど、いつか、隣に並べるくらいになりたい。

そんな風になれたら、いいなって・・・・・




「よし、チャンミン、次はお前が一番好きであろう場所へ行こう」

・・・・・「僕が好きな?」

「行くぞ、、、」



足早に歩くヒョンの後を、僕は必死で追いかけた。





中学や高校とは違う、広大な敷地にあるK大のキャンパスは、
都会から少し離れていることもあって、自然が豊かで空気もとてもいい。

ユノヒョンの後を、キョロキョロしながらついて歩く。
目につくものすべてが、僕にとっては目新しく新鮮だった。


--- おおっ! ユンホ! ---


これで何度目だろう。

ユノヒョンは、どこにいても変わらず人気者で、
少し歩いては呼び止められ、、、の繰り返し。

それは、友達だったり、先輩だったり、、、
時に、女の人だったり、、、


--- 相変わらずいい男だな---

「うるさい。」

--- あれ? 見たことない顔だけど? ---


ユノヒョンの後ろに隠れるようにして立つ僕を、覗き込んで、、、


「俺の後輩。今度ここに来るからさ、案内してるとこ。」

--- ユンホの後輩? ---

・・・・・「はい、シム・チャンミンと言います。」

--- チャンミン、、、可愛い名前だね。彼氏いる? ---


彼氏?


「お前な、、、俺の後輩に手ぇ出すな。」

--- 分かってるって、、、可愛いからさ、つい、、、---

「行こうか、チャンミン。」

・・・・・「うん。」

「じゃあな、、、また。」

--- おお、チャンミンくん、また会おうね ---



すれ違いざま、僕が頭を下げると、その人はユノヒョンに見えないように、僕に小さくウインクした。
なんか、、、変な感じ。


ユノヒョンは、そのままスタスタと歩き出す。

時々、女の人がユノヒョンの名前を呼んでいたけれど、
ユノヒョンは足を止めずに、手を挙げて簡単な挨拶で済ませ、歩き続けた。



「ここ、ほら、、、」

・・・・・「わぁ、、、」


そこは、、、、


・・・・・「ってか、ここ、食堂?」


広いフロア全体が、おしゃれなカフェのようになってて、
お昼を過ぎたこの時間、、、
それでも、沢山の学生が、思い思いの時間を過ごしていた。


「キャンパスの中に幾つかあるけど、ここが一番デカい。」

・・・・・「けどさ、ヒョン、、、、」

「ん?なんだよ?」

・・・・・「さっき言ってた、、、僕が一番行きたいところって、ここ?」

「だってそうだろ?」



まぁ、これからお世話になるから、気になるところではある、、、けどさ、、、
なんだか、ユノヒョンの中で僕のイメージは、〝食いしん坊〟ってことになってるような気がする。

まぁ、食いしん坊だけど・・・


・・・・・「でも、僕、今はお腹いっぱいだよ?」

ついさっき食べた大盛ラーメンがまだ、胃の中を占領してる。

「そうなの、、、ま、、、いいから、座れよ、、、」


窓際の陽が当たる暖かい席。
僕をそこに座らせて、ユノヒョンはどこかへ行ってしまった。

ぼんやりと、その背中を目で追う。


・・・・・「楽しいな、、、」


ふっと、心の中の声が口に出た。
ユノヒョンが、家を出てからの数か月、、、

僕は、自分のせいでユノヒョンの受験がうまくいかなかったと思っていたから、
負い目もあって、、、

〝おめでとう〟
〝ごめん〟

そんな簡単なことでさえ、口にできなかった。

もう絶対、戻れないって思ってたのに、今、僕はユノヒョンと一緒に居る。
一緒に居られるって事だけが、ただシンプルに楽しいって、そう思えた。



「お待たせ」


ヒョンの手には、大きなトレイ。


「ほら、、、これ、美味いからさ、、、」

目の前におかれたのは、白い湯気が立つカップと、
美味しそうなチョコレートケーキ。


・・・・・「わぁ、美味しそう。」


カフェオレの甘い香りが、僕の鼻を刺激する。


「これは別腹だろ? うちの大学で一番人気のケーキ。」

・・・・・「うん。別腹。」


僕ってなんて現金なんだろう、、、
そんなことを思いつつも、僕の手にはすでにフォーク・・・


・・・・・「いただきまーすっ!」


大口を開けてケーキを頬張る僕を、
ユノヒョンはニコニコしながら見てる。


「チャンミン、、、」

・・・・・「ん?」

「さっき、ここに来るときに外通路で出会った奴、いたろ?」


ん?
あ、あのウインクの人かな?


・・・・・「ん、、、あの人がどうかした?」

「入学してすぐにさ、俺、アイツに告られた。」


えっ?


忙しなく動いていたフォークが、ピタリと止まった。


・・・・・「そ、それって、、、」

「もちろん、断ったけどさ。けど、すげぇいい奴。今は親友。」

・・・・・「そう。」

「お前さ、、、」

・・・・・「・・・・・」

「あのカテキョと上手くいってんの?」



その時、僕は気が付いたんだ。


ヒョンの事、、、
忘れていた自分を・・・・・








65へつづく


にほんブログ村










私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。-scene4-







ユノヒョンの車で、一度家に戻る。
母さんは、買い物にでも出かけているのか、家には誰もいなかった。

急いで部屋に駆けあがり、クローゼットの中からお気に入りのセーターを取り出す。
着替えを済ませて、携帯と財布を上着のポケットに突っ込むと、
階段を下りて、キッチンに向かう。

冷蔵庫の中から、お茶を取り出しグラスに注ぐと、
一気に飲み干す。

カラカラに乾いていた喉が、ようやく潤った。


・・・・・「緊張してるのかな?」


そんなことを呟いて、自分で自分に苦笑すると、
テーブルの上の小さなメモに、母さんあてのメッセージを書き込んだ。


〝ユノヒョンに大学を案内してもらいに行って来るよ。〟


・・・・・「これでよしっ」


ふっと目に入った、キッチンの壁に掛けてある母さん専用の小さな鏡。

そこに映る自分を、まじまじと凝視する。
少し、ピン、、、と跳ねてた前髪を手で治すと、
僕は急いで、家を出た。





「おばさんにちゃんと言ってきたか?」

・・・・・「居なかったから、メモ置いてきた。」

「そっか、、、」


助手席の窓から見える冬の空は、グレーの雲に覆われていて、
それだけでも、身震いしそうなほど寒々しく映る。


「寒くないか?」

そう言いながら、僕の返事も待たずに
エアコンの温度を上げる。

そう言うところが、やっぱりユノヒョンだなって、、、、
変わってないなって、思わずクスッと笑ってしまう。


「何? どうかした?」

・・・・・「ううん。」

「腹減ってるんだろ? 向こうに着くまでに、なんか食う?」


目に入った時計は、もうすぐ12時になろうとしている。
そう言えば、さっきからお腹が音を立てていた。


・・・・・「うん! お腹減ったっ!」

「さっきから、お前の腹の音、すんげぇ煩いし」


ハンドルを持って、前を向いたままユノヒョンはくすくす笑ってる。


・・・・・「実は、今日寝坊して、朝ごはん食べられなかったんだよ。」

「よし、じゃあ、何にする? 奢ってやるよ」

・・・・・「ほんと? じゃあ、、、んーっと、、、」


考えれば考えるほど、お腹が空いた気がしてきて、
悩んでいる間も、僕のお腹は派手に音を立てる。


「もう少し我慢できるか?」

・・・・・「どうして?」

「うちの大学の寮の近くに、美味いラーメン屋があるんだよ。」

・・・・・「ラーメン?」

「うん。チャーシューめっちゃ乗ってる。」

・・・・・「チャーシュー!!」

「っていうか、お前相変わらずだな」


ケラケラ笑うユノヒョンの隣りで、
僕は頭の中に、チャーシューが沢山乗ったラーメンを想像して、
さらにお腹の音を派手に鳴らしてた。




--- いらっしゃいっ!---


「おっちゃん、いつもの2つ!」

--- あいよっ! ---



大きな通りから外れた道沿いにある小さなそのラーメン屋は、
お世辞にも綺麗だとは言えない、古びた小さな店だった。

けど、その小さな店内は、沢山のお客さんで込み合ってて、
空いてる席はなかった。


--- おっ、ユンホ? ---

「おおっ、、そこいい?」

--- 座れ、座れ---


一番奥のテーブルに座っている男の人が2人。
ユノヒョンの知りあいだろうか?
ユノヒョンを見つけて、手招きしてる。


4人掛けのテーブルに向かい合って座っていた1人が、席を移動して、
僕とユノヒョンは、空いた席に隣り合わせに座った。


「何なの、お前ら休講?」

--- キム教授が風邪らしいぜ?---

「風邪の方が、逃げていきそうなのにな」

--- マジ、ほんと、そうだよな、、、 ---


楽しそうな3人の会話。
勿論、その中に入れない僕は、ちょっとだけ居心地が悪い。

テーブルの上のグラスに入ったお水を手にして、
コクリと一口喉に通す。


「ああ、、、チャンミン、こいつら、俺の友達。」

--- つーか、ユンホ、、、チャンミン、、、って、この子? 例の? ---

「いいから、黙ってろよ。」

・・・・・「シム、、、チャンミンです。初めまして。」



こういう時は、ちゃんと挨拶をしておかないと、
ユノヒョンの顏が立たない。

僕は小さく頭を下げた。


--- 1限の授業終わったら、速攻で慌てて出てったから、何事かと思ってた。---

--- 可愛い弟を迎えに行ってたのか~---

「お前ら、余計な事言わなくていい」


可愛い弟?
僕は、隣に座るユノヒョンをジッと見た。


「な、なんだよ、、、」

・・・・・「べつに・・・」

--- 来年、ここに入学するんだろ? ---

・・・・・「はい、、、」

--- ユンホがさぁ、すんげぇ喜んでて、、、---

「黙れっ、お前ら、いい加減にしろ」


ユノヒョンが・・・
喜んでる?
僕が、入学することを?


--- 合格発表の日なんか、寮の部屋の中で、うろうろうろうろ、、、ぷぷぷ---

「ほら、お前らもう食ったんだろ? 帰れ、帰れ!!」

--- はいはい、んじゃ俺ら行くわ。---

--- デートの邪魔して悪かったな。---

「お前ら、その口縫ってやろうか?」

--- おー怖っ、、、チャンミン、あとで寮に来いよ。俺が案内してやるからさ。---

・・・・・「あっ、、、は、はい、、、」

「バカヤロ、返事しなくていい」

--- じゃ、あとでな、ユンホ~---



賑やかな店内・・・
ユノヒョンの友達2人は、ケラケラ笑って、手を振りながら店を出て行った。


暫くすると、ユノヒョンはすくっと立ち上がり、
席を移動して、僕達はテーブルを挟んで向かい合う。


何とも言えないおかしな空気が、
僕達の間に流れて・・・

どうしようか、落ち着かないでいると・・・



--- お待たせ~~---


お店の店員さんが、このタイミングでラーメンを運んできた。


--- ユンホくん、今日は偉く可愛い子連れてるね。---

「あぁ、、、高校ん時の、後輩です。今度、うちに入学することになって、、、」

--- そっかー、ユンホくんと同じで、優秀なんだね。また、うちの店、ご贔屓にしてね。---

・・・・・「はい、こちらこそ、よろしくお願いします。」

--- ささ、、、冷めないうちに食べて食べて---



目の前には、チャーシューがたっぷり乗った、美味しそうなラーメンが2つ。
いい匂いが、僕のお腹を刺激して、今日一番の大きさで派手に鳴った。


「ほら、、、」


差し出されたお箸・・・


・・・・・「ヒョン、ありがと。」

「早く食えよ。」

・・・・・「うん。いただきまーす。」


徐々に満たされてゆく僕のお腹・・・

けど、急いで食べたせいで、ラーメンを喉に詰まらせた僕は、
咽ながらグラスを手にし、慌ててお水を喉に流した。

・・・・・「ふぅ、、、」

残ったラーメンにお箸を付けようとしたとき、


「ほら、、、もっとゆっくり食えって、、、」


僕のラーメンのお鉢に、入れられたチャーシュー3枚。


・・・・・「いいの?」

「ん、、、合格祝い。」

・・・・・「えっ?」

「冗談」


箸でラーメンを掬ったままで、
ユノヒョンが顔を上げる。


「ぷぷ、、、」

・・・・・「まったく意地悪だな、ヒョンは、、、」


2人して、箸を片手に笑い合う。


賑やかな店内の音に負けないくらいに、
僕達は声を上げて笑った。


ユノヒョンの笑顔は、昔とちっとも変わってなかった。

そのことが、とてもとても、、、
嬉しかった・・・








64へつづく


にほんブログ村








最新記事