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私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。-scene3-






「待てよ、、、」


ピタリと足が止まる。
心臓が、ドクンと大きく波を打った。


「お前さ、、、なんなの、今日の、、、」

・・・・・「別に、、、」

「別にじゃねぇだろ?」


振り向きもせずに、あしらうように返事をした僕の態度が、
気に入らなかったのだろう。

ヒョンは、組んでいた腕を解いて僕に近付き、肩を強く掴むと、
僕の身体を無理やり振り向かせた。


僕は・・・
苛立っていた。

いつもいつも、強引で・・・
僕の気持ちなんて、いつも無視で・・・
そのくせ、自分の気持ちばっかり僕にぶつけてきて・・・

あんな言葉を、
あんな酷い言葉を、僕に投げつけたくせに・・・・・


そんな風に思う僕の気持ちが、きっと表情に出ていたんだと思う。


「なんだよ、、、その顔、、、」

・・・・・「別に、、、」

「お前、、、」

・・・・・「僕、忙しいんです。家庭教師の先生が来るんで。」

「・・・・・」

・・・・・「用がないなら、離してくれませんか?、、、チョン先輩」

「チャンミン、、、」


一瞬で、ヒョンの表情が変わった。
睨みつけるように僕を刺していた視線は、ゆらゆらと揺れ、
強く肩を掴んでいた手が、ゆっくりと離れてゆく。


「お前、、、なんなの?」

・・・・・「・・・・・」

「何なんだよ、、、」


僕は、ゆっくり歩きだす。
自分の家の門に手をかけ、少し力を入れると、キーッと嫌な音がした。


・・・・・「僕は、、、」

「・・・・・」

・・・・・「僕は、、、」


何が言いたかったんだろう。
口にしながら、自分でも分っていなかった。


何か言わないと、、、
けど、何を言っていいのか分らない、、、


言葉を詰まらせてしまった僕を、ヒョンは何も言わずじっと見つめていた。
その顔を見てはいないけれど、ヒョンの視線を感じたから・・・


・・・・・「いえ、、、もう、いいんです。受験、頑張ってください。」


他人行儀な言葉・・・
僕は、ボソッと呟くようにそういうと、急いで家の門を開き、
玄関の扉の中に身を滑らせた。

パタン、、、と後ろ手に扉を閉める。
急いで靴を脱いで、階段を駆け上がり部屋に入る。

手にしていた鞄がバサッと床に落ちて、
僕はその場に崩れ落ちた。


ヒョンが好きだった。
ここに越して来た時から、ずっと、、、

友達として、仲のいい兄弟として、傍にいられたらそれだけでいいと、そう思っていた。
けれど、傍にいればいるほど、僕は我がままで貪欲になった。
僕だけ見てほしい。僕だけを特別にしてほしい。

そして、僕の心が悲鳴を上げた。

自分が壊れてしまう・・・
それが、とてつもなく怖くなった。

そうだよ、僕は逃げたんだ。
ヒョンから逃げた。

膝を抱え、顔を埋める。
もうすぐ、キム先生が来る。

しっかりしなきゃ、、、
泣いたらダメだ、、、

グッと息をのみ、大きく息を吐く。
立ち上がって、鞄を手にしたその時・・・

扉の向こう・・・
階段の下から、母さんの声が微かに聞こえる。

先生が来たんだ・・・


僕は、慌てて滲んだ涙を手で拭い、制服を脱ぎ捨て着替えを済ませる。


暫くすると、扉をノック音が聞えた。


・・・・・「はい、、、」


返事をすると同時に、ゆっくりと開く扉。


--- チャンミン ---


そこに立っていたのは、


・・・・・「ヒョ、、、ン、、、」


どうしてヒョンがここに居るのか・・・


--- 入っていい?---

・・・・・「どうして?」


脚を踏み入れ、扉が閉まる。
机の上に手にしていた鞄を置くと、部屋の隅に置いてある電気ヒーターのスイッチを入れた。


--- あいつがさ、、、あーっ、キム先生ね。体調崩したらしくて、、、
休みたいけど、チャンミンが大事な時だからって連絡があってさ、、、ヘルプを頼まれ、、、---


身体が、自然とそうしていた。


--- チャンミン? どうした? ---


腕を伸ばし、僕は、先生にしがみ付いた。

反則だ、、、
今、僕の前に現れるのは、ヒョン、、、反則だよ・・・


・・・・・「なんでもない、、」

--- すっごく嬉しい出迎えだけど、、、---

・・・・・「会いたかったから、、、今、、、」

--- ・・・・・ ん、、、---


先生の腕が、僕の背に回る。
ギュッと抱きしめられて、自分の心が、ホッと安堵するのが分かった。

もう、この温もりの中から抜け出すことは出来ないと思った。
自分から飛び込んだ、その温かな胸の中は、
思っていたよりもずっとずっと、、、


・・・・・「ヒョン、、、」

--- ん? ---

・・・・・「ヒョンは、温かいね」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「僕・・・」

--- ・・・・・ ---


・・・・・「僕、ヒョンが好きだよ、、、」




ずっと、温かかったから・・・・・






42へつづく

明日から、-scene4-  に入ります。


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私の心の中のお話です。
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真夜中の観覧車。-scene3-





・・・・・「はぁっ、、、さむっ、、、」

教室の窓から空を見上げると、今にも降り出しそうな灰色の雲が、
空全体を覆っている。

--- 雪になるかもな・・・---

不意に届いた声に隣を見ると、いつの間に現れたのか
僕と同じように空を見上げているキュヒョンがいた。

--- なぁ、チャンミン・・・---

・・・・・「ん?」

--- 結果、、、どうだった? ---

・・・・・「ん、、、頑張ったからね」

--- やっぱそうか、、、---


分かりやすいほどに、ガクンと肩を落としたキュヒョンは、
わざとなのか、大きなため息をついた。

・・・・・「ダメだったの?」

--- ん、、、Bクラス狙ってたんだけどさ、、、---

・・・・・「そう、、、でも、今後のテスト次第で入れ替わりだってあるんだから、、、」


先日のテストの結果が発表された。
僕は、ヒョンに宣言した通り、トップのAクラスに入ることが出来た。


--- お前は? 勿論Aだろ? ---

・・・・・「ん、、、」

--- さすがだね、、、シム・チャンミン・・・---


冬が過ぎれば、僕達は3年生なる。
こんな風に、空を見上げる時間も惜しいと思うほど、
きっと、参考書と向き合うことになるだろう。


--- な、チャンミン、、、---

・・・・・「ん?」

--- 寒いな、、、---

・・・・・「そうだね。」

--- 帰りさ、、、ラーメン食ってかない? ---

・・・・・「いいよ。」



それなら今は少しだけ、友達とのんびり過ごす時間があってもいいかなって、
そう思った。


チャイムが鳴って、クラスメイト達は慌てて自分の席に戻る。
それぞれ、机の中から授業に使う教科書やノートを取り出して、
先生が教室に入ってくるのを待つ。

ガラガラと音を立てて扉が開くと、数学のテキストを抱えた先生が、
教室に足を踏み入れ、ぐるりと辺りを見回した後、教卓の上にドサリと荷物を置いた。

いつもと変わらない時間の始まり・・・

カリカリと黒板にチョークを走らす音が、静かな教室に広がる。


その時、フッと、僕の耳を掠めた声・・・
聞き覚えのあるその声に反応した僕は、ペンを持つ手を止め、声が聞えたほうに視線を向けた。



窓の向こうの運動場に、体操着を来てサッカーボールを追いかける人・・・


・・・・・「ヒョン、、、?」


思わず、声に出してしまった僕は、
辺りを気にしてキョロキョロしたけれど、みんな授業に集中していて、
僕の小さな声は届いていないようだった。



ヒョンは、大きな声を出しながら、必死でボールを追いかけていた。
3階のこの場所からでは、ヒョンの表情ははっきりとは見えないけれど、
それでも、ここまで聞こえてくる声で、元気なんだと分かる。

僕は、いつの間にか必死で走るヒョンを目で追っていた。


--- おい、、、おい、チャンミン、、、---

・・・・・「えっ?」


我に返って視線を戻すと、教室の皆の視線が僕に集中している。


--- シム・チャンミン、、、体操着に着替えますか? ---


先生の冗談めいた言葉に、教室中が笑いに包まれた。


・・・・・「すいません、、、」

--- お休み中の、チョ・ギュヒョンと一緒に、校庭一周!! ---

・・・・・「えっ?」


見ると、この騒動の中、キュヒョンは机にうつぶせて居眠りしている。


--- 早く! ---

・・・・・「はい、、、」


仕方なく、僕は椅子から立ち上がる。

教室の後ろの扉に向かって歩く途中に、キュヒョンの肩を叩いて起こし、
状況を分かっていないキュヒョンを半ば引きずるようにして、運動場に向かう。


--- な、なに? ---

・・・・・「いいから、、、ほら、、、階段気を付けて」


急いで靴に履き替え、グランドに出る。


--- な、なんだよ、チャンミン、、、---

・・・・・「いいから、校庭一周!!」

--- おっ、お、おう、、、---


冷たい風の吹く中、僕は俯いたまま走り出す。
運動場では、いくつかのクラスが授業をしていた。

制服のまま走っている僕とキュヒョンに、何事かと視線がいくつも突き刺さる。


とにかく、早くこの場を去りたい。

どうか、ヒョンが僕に気が付きませんように・・・


そんな風に祈りながら、走るペースを徐々に上げてゆく僕に、
今だ状況が呑み込めないでいるキュヒョンが必死でついてくる。


--- ま、待てって、、、チャンミン、、、---

・・・・・「恥ずかしいよ、早く、キュヒョン、、、」


心の中で、こんなことになってしまったのも、全部ヒョンが悪い、、、
そんな、訳の分からないことを思いながら走っていたその時、、、


僕の目の前に転がってきた、サッカーボール。
そのせいで、走る僕の脚が止まる。



「わるいっ! 蹴ってく、、、」

立ち止まり、屈み込んでそのボールを手で拾った。
顏を上げて、その声の主に視線をやると、


「チャンミ、、、」


ヒョンの顏を見るのは、とても久し振りだった。
髪が伸びて、少し雰囲気が変わったように感じた。


--- チャンミン、、、おい、、、---


僕とヒョンの様子が、おかしいと感じたのか、
キュヒョンが僕に声を掛ける。


僕は、何も言わずボールをもう一度地面に置き、
思いっきり脚を振り上げてボールを蹴った。


〝お前さぁ、、、ゲイなの?〟


僕に、あんな言葉を投げつけた仕返しだ。


ボールは、ヒョンの上を通り越してゆく・・・
けれど、ヒョンは、ボールを追うことなく僕をじっと見ていた。


・・・・・「行こう、キュヒョン、、、」

--- う、うん、、、---


そして、何事もなかったかのように走り出す。
キュヒョンは、ヒョンに向って小さく頭を下げ、僕の後を追ってくる。


--- おーい、ユンホーっ、、、---

「おおっ」


背中から聞こえるヒョンの声・・・

僕は全力で残りのトラックを走り切り、そのまま振り向かずに校舎に入った。


--- はぁ、はぁっ、、、---

・・・・・「はぁっ、、、」


空気は冷たいのに、額に汗が薄く滲んでいる。
乱れた呼吸で、上下に動く肩・・・


--- お前、、、何かあったの? チョン先輩と・・・---

・・・・・「別に、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「行こう、キュヒョン、、、」


教室に向かって歩き出す。


--- ま、待てよっ! ---


少しだけ、、、
ほんの少しだけ、、、

あの言葉を投げられた時の悲しさが、消えたような気がした・・・・・ 






放課後、、、
キュヒョンとラーメンを食べた帰り道・・・

冷たい風に肩をすくめながら歩く。
家までの道のりにある公園で、小学生の男の子がサッカーをして遊んでいた。

フッと、昼間の事を思い出す。

ヒョンは、どう思っただろう。
きっと、僕の態度に怒ってるに違いない。

でも、それでもいい。
どうしてだか、僕は少し気が晴れてスッキリしている。

不思議だけど、、、


ようやく、家が見えてきた。
今日は、家庭教師のキム先生がくる日。
少し急いで歩き出した僕の視界に、、、


僕と同じ制服を来て、寒そうに腕を組んでいる。
僕の隣の家の前。

俯いてじっとしたまま、、、


僕は、脚を止めることなくそのままのスピードで歩く。
目の前を通り過ぎようとしたとき、、、


「待てよ、、、」


低い声で、呼び止められた・・・・・








41へつづく


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真夜中の観覧車。-scene3-





いつの間にか夏が過ぎ、短い秋が駆け足で過ぎてゆく。
季節の移り変わりは、こんなにも早かっただろうか。

吐く息は、もうすっかり白い・・・・・


--- チャンミン、明日、確かテストだって、、、言ってたよな? ---

・・・・・「うん。そうだよ。明日のテストの結果次第で、3年の学力別クラスが決まるんだ。」


僕の通う高校では、受験に対応した効率のよい授業を進めるため、、、との理由で、
3年生に進学と同時に、学力別にクラス分けされる。
そのテストを、明日に控えていた。

テストの結果で、僕達は5段階にクラスを割り振りされ、
それぞれのクラスごとの能力に合った授業が行われる。


--- いいのか? こんなところでハンバーガーかじってても・・・---


学校帰り、、、
時々、こんな風にヒョンと待ち合わせて一緒の時間を過ごす。


・・・・・「ヒョン、僕を信じてないな・・・」

--- いや、そんなことはないけど、、、---

・・・・・「キム先生に聞いてない? ヒョンが家庭教師をしてた頃より、僕の成績上がってるんだよ?」

---それは、僕の教え方が悪かったって言いたいのか?---


目を細めながら僕をじっと見つめるヒョンに、思わず吹き出しそうになる。


・・・・・「違うよ。勉強頑張って成績上げないと、こんな風にヒョンと会う時間だって無くなっちゃうでしょ?」

--- チャンミン・・・---

・・・・・「ヒョンだって、忙しくなるんだから、会える時に会っとかないとかないとね」

--- そう言うもんじゃないだろ? ---


ふふっと笑いながらハンバーガーを頬張る僕に、ヒョンの手が伸びてくる。
クシャっと髪を撫でられると、僕はとても気持ちが温かくなるんだ。




ユンス先生のことを、〝ヒョン〟と呼ぶことにも随分と慣れた。


もう、僕の〝ヒョンは〟 ヒョンじゃなくてユンス先生だ。
あれからずっと、心の中で考えてることがあって、

じゃあ、ヒョンの事はどう呼べばいいのか、、、
別に、ヒョンはヒョンだから、今まで通りでいいじゃん、、、
そんな風に思う自分と、
先生を〝ヒョン〟と呼ぶと決めたからには、きちんとけじめを付けて、
別の呼び方で呼ばないと、、、と、思う自分と、、、

バカバカしくも感じるけど、僕にとっては重大な問題だ。


そんなことをウジウジ考えながら、僕は毎日を過ごしていた。
けれど、学校への道でも、学校内でも、あれからヒョンと会うことはなくて・・・

隣に住んで、同じ学校に通っているのに、もうずいぶんと、ヒョンの顏を見てない。
会おうとしなければ、いくら近くにいたとしても、こんな風に顔を見ることもないのだろうか。

どうしてるんだろう、、、
元気にしてるかな?
勉強、頑張ってるかな?

もしかして、避けられてる?
いや、僕が、、、避けてる?

いろんな想いが、グルグルと気持ちを乱す。


〝お前さぁ、、、ゲイなの?〟


あの言葉は、忘れたくても忘れられなかった。
思い出すたび、胸が痛む。


気になるけれど、もし顏を合わせたらどうしたらいいかも分らない。
会えないことに、少しの安堵の気持ちが僕の心の中に芽生え始めていた。


--- なぁ、チャンミン、、、---

・・・・・「ん?」

--- 大学、、、決めてるの? ---

・・・・・「ん、、、行きたいなって思ってるところはあるけど、どうかな?」

--- そっか、、、で、どこ?---

・・・・・「ヒョンには教えてあげない。まだ秘密」

--- どうして?---

・・・・・「それよりさ、ヒョンは? ヒョンは、就職先、どこを受けるとか、、、もう決めてる?」


コーラのストローを口に咥え、そう聞くと、
ヒョンはニヤリと笑った。


--- チャンミンには秘密だ。---

・・・・・「えっ? どうして? 教えてよ。」


最近、会うとこんなやり取りばかりだ。
お互いの〝これから〟を、やたらと気にしてる。

もし、ヒョンが就職して、遠いところへ行ってしまったら・・・
時々、そんなことをふっと考えてしまう。


--- 大丈夫だよ、チャンミン・・・---

・・・・・「えっ? なにが?」


ヒョンは、窓の向こうの街路樹をじっと見つめていた。
少しだけ残った黄色く染まった葉が、風に吹かれてユラユラと揺れている。


--- 秋が過ぎて、冬が来て、、、雪が溶けて春が来て、、、桜が散って夏が来て、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- そんな風に季節が過ぎても、僕はチャンミンの傍にいるから、、、---

・・・・・「ヒョン、、、」


僕の心はヒョンに筒抜けだ。
まるで、僕の心が見えているかのように、僕の欲しい言葉を真正面から差し出してくれる。

そして、僕の心をドキドキさせる。


--- 心配ない。な? ---

・・・・・「うん、、、」


その度に、僕はとても恥ずかしさを感じて、
俯いてしまう。
きっと、僕の顏は赤く色づいているはず、、、

そんな僕を、ヒョンは解けるような瞳で見つめるから、、、
余計に恥ずかしくて・・・


・・・・・「あんまり、見ないでよ、、、」


気持ちとは裏腹の言葉を口にしてしまう。
でも、それすらもヒョンにはすっかりバレている。


--- 可愛いなって、思ってるんだよ ---

・・・・・「可愛いとか、、、言うなって言ってるのに・・・」

--- 仕方ないだろ? 可愛いものは可愛いんだ---

・・・・・「ヒョンのバカ・・・」


ヒョンのトレイに乗ったポテトに手を伸ばし、
1つつまんで、口に入れた。




--- アレ? チャンミンくん?! ---


聞き覚えのある声がして、振り向くと、


・・・・・「ミファさん、、、」

--- 久し振りだね? 元気にしてた? ---


制服姿のミファさんが、友達と2人、トレイを手に立っていた。


・・・・・「はい、、、ミファさんは?」

--- うん。元気だよ。---


とても久し振りのミファさんは、相変わらず可愛くて、、、
イェリンとのことがあったのに、それでも僕にとても気さくに話しかけてくれた。


--- 今から塾だから、その前に腹ごしらえ、、、ふふ---

・・・・・「そうですか、、、」

--- ユノも頑張ってるし、合格したらみんなでお祝いしようね。---

・・・・「はい、、頑張ってくださいね。」

--- じゃあ、、、---

・・・・・「はい、、、また、、、」


空いている席に向かうミファさんの背中を眺めていると、、、
フッと脚を止めて彼女が振り向いた。


--- チャンミンくん、、、ユノと最近会ってる? ---

・・・・・「い、いえ、、、」

--- そっか、、、なんだか、元気なくて、、、また、声かけてあげてね---

・・・・・「は、はい、、、」


元気がない、、、か、、、


小さく溜息をついて、視線を戻すと、


--- 元気がないって、、チャンミン、、、---

テーブルに頬杖をついて、ヒョンが僕をじっと見ていた。


・・・・・「べ、別に、、、」

--- 心配? 〝ヒョン〟のこと・・・---

・・・・・「僕には、関係ないから、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「それに、、、僕のヒョンは、ヒョンだけだよ」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「僕の目の前にいるのが、僕のヒョンだ、、、」


自分の瞳が揺れているのは分かってた。
ヒョンもきっと、分ってる。

けれど、僕が今、口にしたことは僕の本心だ。
僕のヒョンは、今、目の前にいるユンスさんだけだ。


--- チャンミン、、、気が早いって思うかもしれないけどさ、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- チャンミンが高校卒業して、大学生になったらさ、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 一緒に暮らさないか? ---

・・・・・「えっ_?」

--- 傍に置きたい。誰にも、取られたくない。---

・・・・・「ヒョン、、、」



〝一緒に住もうぜ〟


思い出した。

あの夏の日・・・
僕に向けられたあの言葉、、、

けど、それはもう叶うことはない。


・・・・・「ヒョン、、、僕、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「僕、頑張るから、、、ヒョンに追いつけるように頑張るから、、、」

--- うん、、、---

・・・・・「待ってて?」


ヒョンの問いかけの答えになっていたのかは、僕にも分からない。
僕の言葉を、ヒョンがどんな意味で受け取ったのかも、、、、

それでも、今の僕には、精一杯の返事だったんだ・・・


頑張って、ヒョンに追いつきたい。
隣に並んで、立てるように・・・


--- 待ってるよ、チャンミン。いつまでも待ってる、、、---

・・・・・「うん、、、」


今年初めての木枯らしが吹いたのは、それから一週間後の事だった・・・・・









40へつづく


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真夜中の観覧車。-scene3-






--- あら、ソン先生、、、---


夜のドライブを少し楽しんで、僕の気持ちが落ち着くのを待ってから、
ユンス先生は、僕を家まで送り届けてくれた。

随分と遅い時間になってしまったから、

〝チャンミンが、お母さまに叱られると困る、、、〟

そう言って、先生は、わざわざ母さんに挨拶をしてくれた。


--- 夜分に申し訳ありません。チャンミンくんに偶然出会って、食事を一緒に・・・---


隣に立つ先生を、そっと盗み見る。
僕より少し背が高い。
歳は僕と4つ違い。
たった4つ、、、なのにこんなにも大人なんだって、そう感じた。


--- まぁ、、、そうなんですね。電話の一つでもしてくればいいのに、、、---


母さんは、そんな風に言いながら、僕を見て笑う。
先生がいなかったら、きっと叱られてたな・・・


--- 久しぶりで、話しこんでしまって、、、申し訳ありませんでした---


先生は、そう言いながら小さく頭を下げた。


--- いえいえ、どうせ御馳走になったんでしょう? こちらこそ、、、この子、遠慮なくよく食べるから、、、---

・・・・・「ちょっ、、、母さん、、、」

--- はい。ハンバーグとエビフライ、ご飯大もりペロッと平らげました ---

・・・・・「せっ、せんせっ、、、」

--- まぁ、、、チャンミンったら、、、---


2人して、笑いながら僕を見て・・・
恥ずかしくて、僕は顔を伏せた。

母さんは、今度手料理を振る舞うからと、先生を家に誘っている。
先生は、とても嬉しそうに頷いていた。







--- じゃあ、チャンミン・・・---

・・・・・「先生。今日は、、、ありがとう」


家の前の通り、、、
止めた車の前で、先生と話す。


--- チャンミン、、、---

・・・・・「はい」

--- 俺達、、、付き合ってるんだよね?---

・・・・・「・・・・・うん」

--- じゃあ、チャンミンにお願いが・・・---

・・・・・「なんですか?」

--- 〝先生〟って、、、そろそろ、、、---

・・・・・「えっ?」


意味が分からなくて、思わず首をかしげる。
その姿を見て、先生は笑いながら・・・


--- ほら、僕はもうチャンミンの家庭教師じゃない。だからさ、、、---

・・・・・「うん」

--- 〝先生〟じゃなくて、何か別の呼び方を・・・---

・・・・・「あぁ、、、うん、、、そうだね」


けど、突然そう言われても・・・・・


・・・・・「じゃあ、何て呼べば、、、」

--- それは、チャンミンに任せる---

・・・・・「えっ? そ、そんな、、、」

--- 次に会うまでの宿題ってことで、、、---

・・・・・「そんな、、、宿題とか、家庭教師じゃないとか言ったくせに、、、」


ふくれっ面した僕を、先生は優しい顔で見つめる。


--- 楽しみにしてるよ、チャンミン、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- じゃあね。---


運転席のドアを開き、先生が車に乗り込む。
ウインドウが静かに降りて、先生の顏が見えた。


--- おやすみ、チャンミン---

・・・・・「あっ、あの、、、」

--- ん? ---

・・・・・「明日、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「明日、電話してもいい?」

--- いいよ。待ってる---

・・・・・「うん。おやすみなさい、せんせ、、、あっ、、」


〝先生〟
僕が口にしたその言葉に、先生はくすっと笑った。

僕が、〝先生〟と、そう彼のことを呼んだのは、
後から思えば、これが最後だったように思う。


先生の車が見えなくなるまで見送って、
外門の扉に手を掛け、脚を止める。

ふっと、見上げたのは、ヒョンの部屋・・・
もう、灯りは消えている。


ヒョン、、、
僕、ユンス先生の恋人になったんだよ。

心の中で、ヒョンに語り掛ける。

ヒョン、、、
僕、頑張るよ。色んなこと、頑張る。
だからヒョンも・・・
ヒョンも、頑張ってね。


扉を潜り、家の中に戻る。
玄関の扉を後ろ手に閉めて、パタン・・・と音がしたとき、心の中の一つの灯りが消えたように感じた。

きっとそれは、僕のヒョンへの恋心・・・
消えてしまった、僕の恋心、、、

でも、それでいい。
僕は、ユンス先生を選んだ。
先生が好きだから・・・

それでいいんだ・・・



バイバイ、ヒョン・・・








--- あぁ、チャンミン? ---

・・・・・「う、うん、、、」



学校から戻り、着替えを済ませてから
僕はベッドに腰を下ろし、携帯電話とにらめっこしていた。

どの位、そんなことをしていただろう。
戻ったときはまだ明るかったのに、気が付けば、陽が沈みかけ、
空は夜の準備を始めていた。


大きく深呼吸して、思いきって発信する。


コール2回で応答した先生に、ちょっと驚いてしまった。



--- 今、どこ? ---

・・・・・「うん、、、家、、、学校から帰ってきたところ」

--- そっか、、、---

・・・・・「うん、、、」

--- どした? ---

・・・・・「えっ?」

--- 何か、いつもと違う。---

・・・・・「べっ、、、別に、、、何もないよ、、、」

--- そっか。なぁ、チャンミン、、、今度の休みさ、、、---


僕は、緊張していたんだ。

昨日から、ずっとずっと考えていたこと・・・
悩んで悩んで、ようやく決めたこと・・・

それを、先生に伝えるため・・・



--- チャンミン? 聞いてる? ---

・・・・・「えっ?」

--- だからさ、見たい映画があって、、、次の休み、、、良かったら一緒に行かないか? ---

・・・・・「うん、、、いいよ、、、、行くよ、、、ヒョン、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「・・・・・」


電話の向こう側・・・
小さく息を吐く音が、微かに僕の耳に届く。


--- チャンミン、、、今、、、なんて? ---

・・・・・「だから、映画・・・ヒョンと一緒に行くって、、、」



それは、僕の一つの誓いだった。



--- ヒョン、、、って、、、---

・・・・・「ダメ、、、かな?」

--- ううん、、、そんなことない。ちょっとビックリして、、、でも、、、すごく・・・---

・・・・・「・・・・・」

--- すごく嬉しいよ、チャンミン・・・・・---



〝ヒョン〟

先生をそう呼ぶことで、僕は心の中に誓いを立てた。

前を向こう。
振り向かないで、前に進もう。

ユンスヒョンとなら、僕は笑って、前に進んでいけるって、そう思ったから・・・


・・・・・「ヒョン、映画、何観るの?」



振り向かず、前を向くことが出来るから・・・・・







39へつづく


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真夜中の観覧車。-scene3-





いくら、季節の変わり目だからと言っても、まだ震えるほどではない。
なのに、しゃがみ込んだ僕の身体は、どうしてだかブルブルと震えている。



〝お前さぁ、、、ゲイなの?〟



ヒョンの言葉が、僕の頭の中を何度も何度も繰り返し響く。
思わず耳を塞いだ。

その時、キーッと車のブレーキ音が、僕の頭の中のヒョンの声をかき消す。
耳から両手を外し、顔を上げると道路わきに留まった車から、ユンス先生が姿を見せた。


--- チャンミン? ---


先生は、車のドアを閉めることもせず、僕に走り寄る。
震える足で立ち上がり、先生に腕を伸ばした。


--- どうした? チャンミン・・・---


先生は、僕の腕を取ると、そのまま胸の中に僕の身体を包み、抱きしめてくれた。
僕は、その背中にぎゅっとしがみ付く。


・・・・・「せんせ・・・」

--- 大丈夫、、、大丈夫だよ、チャンミン・・・---


この時僕は、先生の腕の中で震えながらも、
少しずつ冷静さを取り戻していた。

もう、ここから元に戻れない・・・
そんな風に、感じていた。


少し落ち着きを取り戻した僕を、先生は助手席に乗せると、
夜の街を当てもなく走った。

夜の道すがら、灯りが眩しい24時間営業のファーストフード店・・・
その駐車場に車は止まる。


--- 待ってて、チャンミン、、、---


先生は、そういうと一人店内に入ってゆく。
数分で、両手にドリンクを持って戻って来た。


--- コーラとジンジャー、どっちがいい? ---


優しい眼差しを真っすぐに僕に向ける。


・・・・・「コーラ・・・」


そう答えると、先生はふっと笑って、僕に右手のドリンクを差し出した。


ストローを口に含み、チューっと吸うと、カラカラだった喉がようやく潤う。
コーラのジュワッとした刺激が、とても心地よかった。


・・・・・「美味しい・・・」

--- ん、、、---


車内には、ようやく聞き取れるほどの小さな音で、
ラジオ番組が流れている。

その内容は、全く頭に入らなかったけれど、
シンと静まり返った空間がなんだか気まずくて、微かに聞こえるラジオからの声に、
少し助けられたように思った。


--- 少し落ち着いた? ---

・・・・・「はい。ごめんなさい」

--- 本当だ。シャワー浴びて、髪も乾かさないうちに飛び出してきたんだぞ? ---


そう言われて、改めて先生を見ると、乾きかけの髪が、先生の頬に沿うように張り付いている。
そっと手を伸ばして、その髪を流した。


・・・・・「風邪、、、引かないかな? 」

--- さぁ、分んないな、、、風邪引いたら、チャンミンに看病してもらう---


少しお道化たように、先生は僕を見て笑う。
けれど、その笑顔が、余計に僕の胸を苦しくさせた。


--- チャンミン、、、もう、泣くな、、、な? ---

・・・・・「だって、、、せ、先生が優しいから、、、」


手の甲で、必死に涙を拭う。
先生は、少し戸惑ったような顔をして、僕の髪をそっと撫でた。


--- 好きだからね、、、チャンミンの事。---

・・・・・「・・・・・」

--- 好きな人が泣いて自分を呼んでるのに、ほっとけないだろ? ---

・・・・・「せんせ、、、」

--- 髪が濡れてても、裸でいたって、飛んでくるよ---


先生のその言葉が可笑しくて、
僕は思わずクスッと笑った。


--- 彼に、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 彼に何か言われた? ---


その言葉に驚いた僕は、笑うのピタリと止め、先生の瞳を見た。


・・・・・「どうして、、、」


不思議だった。
何も話していないのに・・・・・


--- 好きな人の事は、何でも分かる---

・・・・・「・・・・・」

--- と、言うのは本当は嘘で、、、---

・・・・・「嘘?」

--- さっき見たんだ。チャンミンを家に送ったとき、彼が隣の家の前で僕達をじっと見てたこと・・・---

・・・・・「・・・・・」

--- 知ってて、、、見せつけてやったのさ、彼に。---

・・・・・「せんせ、、、」

--- チャンミンの事になると、僕はどうしてもこんな風に、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 冷静ではいられない。ゴメン・・・---



先生は、僕を本当に大切に思っていてくれてる。
きっと、誰よりも、僕自身よりも、一番・・・・


--- 彼とどんな話をしたのかは、聞かないよ。
けど、チャンミンを泣かす奴を僕は認めるわけにはいかない。---

・・・・・「・・・・・」

--- もっと本当は、時間を掛けてお互いを深め合ってからって、、、それがルールだと、そう思ってきたけど、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- でも、、、チャンミン、、、---

・・・・・「は、、、い、、、」

--- もう、待ってられない。---

・・・・・「・・・・・」

--- 僕が、傍に居る。僕と付き合ってほしい。---

・・・・・「えっ?」



僕は、想いあう恋をしたことがない。
ずっと、ヒョンだけを見つめてきて、、、


・・・・・「付き合う、、、って、、、」

--- 僕の、僕だけの特別な人になってほしい。分る?---

・・・・・「特別・・・」

--- そう、、、特別だよ。恋人ってことだよ、チャンミン・・・---



余りに熱い眼差し・・・
僕に向けられる真っすぐで情熱的な、、、それでいて、穏やかで心落ち着くその瞳・・・



やっぱり、もう、元には戻れない。



こんなにも、温かくて心地いい場所に、僕は、触れてしまった。


先生の掌が、涙の痕が残る僕の頬をそっと包む。



--- 好きなんだ、チャンミン・・・---

・・・・・「・・・・・ぼ、僕、、、」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「僕は、今、先生と一緒に居たい。先生と居ると楽しくて、安心するんだ。だから、、、」

--- うん、、、---

・・・・・「まだ、よく分らない。でも、先生の事は大好きだと思ってる。」

--- うん、、、---

・・・・・「それでも、、、そんな僕でもよかったら・・・」

--- ・・・・・ ---

・・・・・「先生の傍に、、、」



その場の雰囲気に流されたとは思いたくない。
先生の熱い気持ちに、絆されたわけでもない。

確かに、この時、僕は先生を選んだ。
自分自身の心で・・・

ヒョンじゃない、、、先生を・・・

チョン・ユンホじゃなく、ソン・ユンスを・・・・・



--- それだけで、十分だよ、チャンミン・・・---



夜の駐車場の片隅・・・
そっと触れた先生の唇は、少し冷たくて、そして小さく震えていた・・・・・







38へつづく


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