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私の心の中のお話です。
ご了承ください。



真夜中の観覧車。scene1




家に戻ったのは、もう太陽が沈んで暫く経った頃、、、
西の空が、夏の太陽の名残を残し、うっすらとオレンジ色に染まっていた。

もう10分もすれば、辺りは夜の色に包まれる。
それを見計らうように、街灯がチカチカと灯り始める。


ヒョンの家の前、、、
ヒョンの自転車が、玄関先に雑に置かれてる。

僕は、自転車に跨ったまま、立ち止まってヒョンの部屋を見上げた。


・・・・・「ヒョン、、、帰ってきてる。」


それを確認して、僕はいったん家に戻って自転車を置いた。
そして、自転車のカゴの中のものをそっと手に取り、ヒョンの家に向かう。


人差し指を震わせながら、インターホンを押すと、
おばさんの元気な声が響いた。


--- はーい---

・・・・・「遅くにすいません。チャンミンです。ユノヒョン、、、いますか?」

--- あら、チャンミンくん? はいはい、ちょっと待ってね。---


インターホンが切れ、扉の向こうからパタパタと足音が聞こえる。
扉が開くと、いつもと変わらない優しい笑顔を浮かべたおばさんがいた。


--- いらっしゃい、チャンミンくん。どうぞ、上がって? 部屋に居るから、、、---


笑った顔が、とてもヒョンに似ていて、、、
どの位の長い間、ヒョンの笑った顔を見てないだろう、、、
なんだか胸がキュンと痛くなった。


・・・・・「いえ、、、もう遅いので、、、、ユノヒョンを呼んでもらえますか?」

--- そう? じゃあ、ちょっと待っててね? ---


そう言うと、おばさんはくるりと身を翻して、
階段下から二階を覗き込む。


--- ユノ~っ、、、チャンミンくんが来てるわよ~。ユノ~っ、、、---


おばさんの大きな声が届いたのか、暫くすると、ドン! と扉が開く大きな音が玄関まで届く。
僕は、心臓がバクバクして、緊張していた。

だって、ヒョンと顔を合わすのはとても久し振りだったから、、、


「うっせーなー、、、聞こえてるって、、、デカい声出すなよ」


邪魔臭そうにそう答えるヒョンの声が、階段をゆっくりと降りてくる足音と一緒に聞こえてくる。


--- チャンミンくん、また遊びに来てね ---

・・・・・「はい、ありがとうございます」


おばさんは、ヒョンが降りてくるのを確認すると、
僕に小さく手を振りながら、奥の部屋に戻っていった。


その背中を見送って、ふっと視線を戻す。
階段を降りてきたヒョンが、僕を確認すると、ゆっくりと近づいてきた。


玄関先で突っ立ったままの僕の前でピタリと止まる。


「何?」


重い声、、、
硬い表情、、、
冷たい視線、、、


そんな風に感じるのは、自分に負い目があるからだろうか、、、

僕は、グッと息をのんで俯くと、そのまま右手をヒョンに差し出した。



・・・・・「これ、、、」


花束 真夜中の観覧車。


それは、お小遣いをはたいて買った、小さな花束、、、


「これ、何なの?」

・・・・・「ミファさんに、、、」

「・・・・・」

・・・・・「知らなかったんだ。今日、聞いて、、、」

「・・・・・」

・・・・・「お大事にって、、、伝えてください。」


暫くすると、差し出した手がふっと軽くなる。
僕は、それとほぼ同時に振り向き、そしてヒョンに背中を向けた。

そのまま玄関ドアのノブに手をかけると、、、


「おい、、、」


ヒョンのその一言で、より一層空気が張りつめたように感じる。
ノブに手を掛けたまま、僕はピタリと動けなくなった。


・・・・・「・・・・・」

「あいつ、花が好きなんだ。」

・・・・・「・・・・・」

「喜ぶと思う。サンキュ、、、チャンミン、、、」


〝チャンミン〟


ヒョンの声で僕の名前を聞くのはどのくらいぶりか、、、 
ただ、名前を呼ばれただけなのに、その声は、僕の胸の奥深くにジワリと響き、染み渡ってゆく。

泣き出しそうで、、、

けど、泣いたらダメ、、、
僕は、歯を食いしばって、グッと泣くのを堪えた。

そして、心の中で深呼吸をして、、、


・・・・・「ごめん、、、」


もっと違う言葉があったのに・・・

〝ミファさんによろしく〟とか、、、

〝早く元気になって〟とか、、、


けど、、、


・・・・・「ごめんね、ヒョン、、、」


それだけ言うのが、精一杯だった。

僕は、急いで玄関ドアを開けると、
逃げるようにヒョンの家を出た。





--- チャンミン!! 帰ったの? 早くご飯食べなさいよ---

母さんの声を背中で聞きながら、階段を駆け上る。
自室の扉を後ろ手に閉めると、まるで膝が力を無くしたかのように、ヘナヘナとその場に座り込む。

蒸し暑い空気がこもる、灯りも付いていない部屋で、
僕は膝を抱えて泣いた。



・・・・・「ヒョン、、、、、」


扉の向こうに泣き声が漏れないように、声を殺しながらヒョンを呼ぶ。


ヒョンには好きな人がいて、、、
守る人がいて、、、

そのうえ僕は、ヒョンに嫌われてる。

さっきのヒョンが僕を見る目・・・
違う人だった・・・
僕の知ってるヒョンじゃないみたいだった・・・

分かってる。
僕は、ヒョンに嫌われてる。


それを、痛いほど感じた。




自分のすすり泣く小さな声が、静かな部屋に悲しく響く。
暫くして、ようやく気持ちが落ち着くと、僕は顔を上げて涙を拭った。

泣き顔を家族に見せられない。


そして、立ち上がって灯りを付けようとしたとき・・・・・



コンコン、、、と、扉をノックする音が、
間近に聞こえる。


--- 分かったよ、、、すぐに食べるから、、、---


母さんだと思って、平静を装い、そう答えると、、、


「チャンミン、、、、、」


えっ?


ヒョン?


急いで扉を開けようとした手が、どうしてだかピタリと止まった。


「さっきは、ありがとな、、、」

・・・・・「・・・・・」

「ずっと、、、」

・・・・・「・・・・・」

「ずっと、言おうと思ってたんだけど、、、」


何を言われるの?
怖い、、、、、




「あの時は、言い過ぎたよ、、、ゴメン。」

・・・・・「ヒョン、、、、、」

「あの日、、、いろいろあって、、、ミファが、、、それで、、、」

・・・・・「・・・・・」

「頭が、混乱してたんだ、、、それで、あんな言い方しか出来なくて、、、」

・・・・・「、、、、」

「悪かったよ、、、」


静けさの後、、、
ヒョンが階段を降りてゆく音が、次第に遠ざかってゆく。


ヒョンは、悪くないよ、、、
悪いのは僕の方、、、

やきもち妬いて、約束を破った僕の方、、、

言わなくちゃ、、、
僕もちゃんと、謝らなくちゃ、、、


そうしたらきっと、弟に戻れる。

好きな気持ちは、自分の心の奥に閉じ込めたらいい。
そうすればきっと、また、ヒョンの弟に戻れる・・・




・・・・・「ヒョン!」


勢いよく扉を開けると、
階段を半分近く降りていたヒョンが、驚いた顏で振り向いた。


「チャンミン、、、、、」




いい弟になるように・・・
努力しよう。

ヒョンの傍で、ヒョンの笑顔を見ていられるなら、、、、




僕は、この時心に誓った。



自分の気持ちは、そっと心の宝箱にしまって鍵を掛けようと・・・


どんなに辛くても、どんなに悲しくても、
ヒョンに嫌われたくない。



好きだから・・・大好きだから・・・・・









11へつづく

次回 第11話から、-scene2- に入ります。


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私の心の中のお話です。
ご了承ください。




真夜中の観覧車。scene1





--- おはよう、チャンミン ! ---


ヒョンと会えないまま、夏休みが終わった。


・・・・・「おはよう」



毎朝、特に約束はしてなくても、家の扉を開くとそこにはヒョンがいた。
学校までの道は、僕にとって毎朝の楽しみだった。

ヒョンと一緒に過ごす毎日の大切な時間、、、
そんな時間も、僕は失ってしまった。



いつもより、長く感じられた学校への道、、、
ようやく到着した教室の扉を開ける。
朝だというのにムッとした生暖かい空気が僕を出迎えた。

そんな中、爽やかな顔をしたキュヒョンが、僕を見つけて駆け寄ってくる。


--- よっ、ガリ勉チャンミン---


僕の肩にぐるりと腕を回し、からかうようにそんなことを言う。

けど、、、キュヒョンには何も言い返せなかった。
夏休みの間、キュヒョン達がプールや海水浴に誘ってくれたけど、
僕はどうしても、そんな気分になれなくて、、、

---ごめん、今日は家庭教師の先生が来るから、、、---

そんな風に、何度も断っていた。


・・・・・「もう、、、暑いよ、、、」


逃げるように、絡まるキュヒョンの腕を振り払い、
ようやく自分の席に着く。


--- 何? お前、どうしたの? ---


不思議そうな顔をして、僕をじっと見つめる。


・・・・・「何が?」

--- いや、ちょっと見ない間に、痩せたんじゃね? ---

・・・・・「そうかな? 暑くて、食欲なかったから、、、 」


正直、余り食事が喉を通らない日が続いてた。
いつも良く食べる僕が、あまり食事にも手を付けなくて、
家族にもとても心配されてる。


--- 確かに、今年の夏は暑っついよな~---

・・・・・「うん、、、ホントに、、、」

--- なぁ、帰りさ、、、かき氷食いに行かね? ---

・・・・・「かき氷?」

--- ああ、、、もしかして、、、チョン先輩と約束? ---


キュヒョンの口から、ヒョンの名前が突然出て、
思わずビクッと身体が反応する。


・・・・・「ううん、、、いいよ。かき氷、行こう」

--- よし、あいつらも誘おう、、、---


そう言うと、キュヒョンは廊下で騒いでいるいつものメンバーの元に駆けていく。

背中を見送っていると、、、



--- あっ、、、そうそう、、、チャンミン、、、---


突然立ち止まって、、、


・・・・・「ん?」

--- お前さ、今日はチョン先輩と一緒じゃなかったんだろ? ---

・・・・・「えっ? う、うん、、、」

--- いや、、、今朝、俺んちの近くで先輩を見かけたからさ、、、---


キュヒョンの家の近くで?

僕の家とは、学校を間に挟むようにして正反対にあるキュヒョンの家、、、
その近くで、ヒョンが?

どうしてそんな朝早くに、、、



--- ほらっ、着席しろーーー!! ---


担任の声で、皆が慌てて自分の席に座り始める。
賑やかな音が教室に響く中、、、僕は視線を窓の外に移した。

耳で先生の声を聴きながら、頭の中でヒョンの事を考える。

今まで、、、
ヒョンの事は何でも知ってると、そう思ってた。

けど、、、

〝俺んちの近くで先輩を見かけたからさ、、、〟

このままだと、知らないことが増えていくだけ、、、
いつかきっと、知ってる事より知らないことが増えて、
そして、そのうちヒョンは、〝知らない人〟になってしまう、、、

そんなの、、、イヤだ、、、
嫌だよ、、、
けど、、、

どうしたらいいのか、、、
分からない、、、、、





刺すような太陽の光が、校庭に降り注ぐ。
夏はまだ、終わってはいない。

けれど、僕の心の中は、早すぎる冬の冷たい風が音を立てて吹いているようだった・・・・・





それから数日後、、、


--- おいおい、チャンミン!! ---

お昼の休憩時間、、、
食事も終え、僕は窓際の自分の机に座ったまま、ぼんやりと校庭を眺めていた。

すると、廊下から駆け寄ってくるキュヒョンの声・・・


・・・・・「なんだよ、、、騒がしいな、、、」

--- なぁ、お前さ、最近チョン先輩と一緒に登校してねぇよな? ---

・・・・・「う、うん、、、」

--- どして? ---



キュヒョンは、僕の気持ちなんて知るはずもないから、仕方ないとは分かってても、
今の僕に、こんな質問をストレートにぶつけてくるなんて、、、
心が痛い、、、


・・・・・「別に、一緒に行こうって約束してるわけじゃないし、、、」


そう言うと、ニヤッと笑って、
僕の机の前の椅子を引き寄せて、顔を見合わせるようにして腰を下ろした。


・・・・・「なんだよ、、、」

---取られたな? ---

・・・・・「はっ?」

--- 大好きなヒョン、、、を、女に取られたな? で、最近落ち込んでんだろ? ん? ---



ニヤけたまま、僕をじっと見つめるキュヒョンの視線に耐えられず、
目を逸らす。


・・・・・「な、なに言ってんだよ、、、」

--- ま、それは冗談としてさ、、、どうなの、チョン先輩の彼女、、、---

・・・・・「どうなのって、、、何が?」

--- 我が高のプリンセスだよ、、、キム・ミファ、、、俺、全然知らなかったよ、、、さっき聞いて、驚いた。---

・・・・・「だから、ヒョンの彼女がどうしたんだよ!」


こんな話、したくないのに、、、
ミファさんの話なんて、したくないのに、、、
そんな風に思う心が、ついつい声を大きくしてしまう、、、


--- お前もしかして、、、知らないのか? ---

・・・・・「・・・・・」

--- チョン先輩に聞いてないのか? ---

・・・・・「しつこいって、、、知らないよ、、、」




--- 先輩の彼女、事故ったって、、、---




・・・・・「えっ?」


事故?
うそ、、、、、


--- なんでも、夏休みに入ってしばらくした頃、交差点の横断歩道を渡ってて、
赤信号なのに進んできた車にはねられたって、、、---

・・・・・「う、、そ、、、」

--- いつだったか、、、ああ、、、そうそう、確か、お前が野球観戦に行くとか何とか、、、
そう言ってた日じゃなかったかな、月末の金曜日、、、---






あの夜・・・・・

ヒョンはとても悲しそうな顔をしてた。


〝お前には、関係ないだろ?〟
〝お前なんか、弟でも何でもない、、、〟


そんな風に言われて、悲しくて辛くて、、、
僕は自分の事で精一杯だった。

ヒョンの悲しい気持ちに、気が付いてあげられなかった、、、

それどころか、ヒョンを裏切って嘘ついて、、、
ミファさんの事で、辛かっただろうヒョンを、余計に悲しませた。

僕は最低だ、、、、、



--- 幸い、命とかには別状なくて、、、けど、足を骨折したり、、、
なんか、よくわかんないけど、精神的に参ってるみたいで、、、---

・・・・・「・・・・・」

--- 今は、退院して自宅にいるらしいけど、チョン先輩、、、夏休みは毎日病院へ通ってたみたいだぜ? ---

・・・・・「そう、、、なんだ、、、」

--- 今は、朝と学校帰りに、彼女の家に寄ってるって、、、
ほら、この前、俺んちの近くで見かけたって言ってただろ?---




午後の授業は、ほとんど頭に入らなかった。


どうやって、家に戻ったのかも、、、



部屋に入って、机の上に鞄を置く。
そして、僕は、久しぶりに部屋の窓を開けた。

その先には、閉じたままのヒョンの部屋の窓、、、


〝朝と学校帰りに、彼女の家に寄ってるって、、、 〟


きっと今頃、ヒョンはミファさんと一緒だ。



ヒョン、、、
ごめん、、、

何も知らなくて、、、
ヒョンが悲しい時に、何もしてあげられなくて、、、
余計に、悲しくさせてしまって、、、

今、僕に出来ることはなんだろう、、、
少しでもヒョンの心が、軽くなるように、、、


僕は、汗で濡れた制服を脱ぎ捨て、着替えを済ませると、
財布と自転車のカギを手に、部屋を飛び出した・・・・・






10へつづく


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真夜中の観覧車。scene1



ヒョンの家の前の街灯の下、
自転車を手に、僕をじっと見据えるヒョン・・・

何故だか少し、怖いと感じた。


・・・・・「ヒョン?」


僕が口を開くと、すっと視線を流して、
そのまま何も言わず家の門を潜ろうとする。


・・・・・「ヒョン!」


咄嗟に、ヒョンを呼び止めた。
ヒョンの脚が、ピタリと止まる。


駆け寄って、ヒョンの前に立った。


・・・・・「ヒョン、、、どうしたの? キャンプ、、、行ったんじゃ、、、」

「関係ないだろ?」

・・・・・「ヒョン、、、」

「お前には、関係ないだろ?」


何も言い返せなかった。
ヒョンとの約束を破ったのは、僕だ、、、

本当は、ヒョンとキャンプに行きたかった。
けど、ミファさんのことを嬉しそうに話すヒョンを見ていたら、
怖くなった。

ヒョンが好きなら、本当は祝福するべきなのに・・・
嫉妬ばかりが僕の心の中で大きくなっていく・・・

そんな気持ちの僕が、平気な顔していられる自信もない。
やきもち妬いて、ヒョンに反抗的な態度をとって、ヒョンが楽しみにしてるキャンプを台無しにしたくない。

ヒョンに・・・
ヒョンに嫌われたくなかったんだ、、、、、



「いいじゃねぇか、、、あの家庭教師と仲良くやってろ。」

・・・・・「ヒョン、、僕、、、」

「もう、お前なんか知らない。」

・・・・・「・・・・・」

「お前なんか、弟でも何でもない、、、」



ヒョンは、僕を見てはくれなかった。
そのまま静かに家の門を開け、自転車を押しながら、薄暗い裏庭に消えた。





どうやって自分の部屋に戻ったのか、覚えていない。
気が付けば、そのままの恰好でベッドに座って、、、

そして、泣いていた。


〝お前なんか、、、弟でも何でもない〟


ヒョンの横顔・・・
怒ってた。
すごく、、、怒ってた。

ここに越してきて、ヒョンと出会って、、、
ケンカなんてしたことなくて、、、

いつもいつも、子供みたいに僕が拗ねても、
ヒョンはいつも笑ってて、、、

風邪をひいて熱が出た時は、
いつも僕の好きなプリンを買ってきてくれた。

怪我をした時も、包帯の上から、そっと大きな手で触れながら、
早く治りますように、、、って、おまじないを掛けてくれた。

いつだって、どこにいたって、ヒョンは僕のヒョンだった。
大好きな大好きな、、、僕のヒョンだった・・・


けど、、、、、


〝お前なんか、、、弟でも何でもない〟



もう、僕はヒョンの弟じゃなくなった。



ヒョンとの約束を破って、
僕は先生との約束を選んだ。


当たり前だよ、、、チャンミン、、、
ヒョンじゃなくったって、、、怒って当たり前、見捨てられて当然だ。



涙が止まらなかった。

泣いて泣いて泣いて、、、


泣き疲れた僕は、そのままベッドで眠ってしまった・・・・・





--- アレ? チャンミン、、、どうかした? ---

3日後・・・

ユンス先生が、いつものように僕の隣の椅子に座る。
僕の顔をじっと見つめて、、、、


--- なんたが、目が腫れてるような、、、、、---


沢山泣いて、暫く僕の顏は酷く腫れていた。
けど、ようやく今朝、鏡を見て安心したのに、、、


・・・・・「そうですか? おかしいな、、、」


そう言いながら、先生から隠すように、自分の手を顏に持って行こうとした時、、、


--- 見せて見ろ ---


先生の手が伸びてきて、僕の頬をふわりと包んだ。


--- 顏上げて? ほら、、、---


仕方なく、言われるままに顔を上げた。
先生と目が合った瞬間・・・

何故だか、心臓がドクンと跳ねた。

この感覚、、、
知ってる。

初めて、ヒョンに髪を撫でられたとき、、、
同じように、心臓が躍った。


--- ん、、、やっぱり少し腫れてる。 泣いた? ---

・・・・・「い、いえ、、、」

--- そっか、、、ならいいけど、、、---


先生の手が離れても、僕の頬は熱く、心臓は波打ったままで・・・


--- よし、じゃあ、、、この前の続きから、、、---

・・・・・「はい」



その時僕は、心の中で思ったんだ。

先生に触れられて、、、
先生と目が合って、、、

頬が熱くなって、
胸が躍るなんて、、、


きっと、ヒョンの事ばかり考えてるからだと、、、

ヒョンと先生を重ねてしまっているんだと、、、、

その時は、そう、思ったんだ・・・・・






窓の向こう・・・
夏の日差しも、生温い風も、蝉の声も、何も変わらない。


ただ、変わったのは、
あの日からずっと、ヒョンの部屋の窓は閉ざされたまま・・・


・・・・・「ヒョン、、、ゴメン、、、」


一人、部屋の窓からヒョンに声を掛ける。

届くはずもない。
もう、僕は、ヒョンの弟でも何でもないのだから・・・・・




その年の夏休みは、僕にとって最悪な夏休みになった。

ヒョンがいなくなって、僕の心にはポッカリと大きな穴が開いた。
ただ、唯一救われたのは・・・


--- チャンミン、映画のチケット貰ったんだ。一緒に行こう---

・・・・・「うん、、、」


ユンス先生が、いつも僕に優しく微笑んでくれた。

先生と一緒にいる時間だけは、ヒョンの事を忘れることが出来たんだ・・・・・








9へつづく

本日は、22時に「イヤよ~」の第8話を更新します。
お部屋でお待ちしています♪



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真夜中の観覧車。scene1




相変わらずの蝉の声。
太陽はギラギラと輝き、時々部屋に吹き込む弱い風は生温く、
じっとしていても、ジワリと額に汗が滲む。


--- ほら、約束の課外授業。---


僕は、ベッドに横になったまま、
昨日、ユンス先生がくれた、野球の観戦チケットを眺めていた。


今年の夏休みは、父さんの仕事の都合で、毎年恒例の家族旅行にも行けない。

思いもよらないユンス先生との約束に、
僕の心はとても踊っていた。


・・・・・「来週の金曜、、、一週間後かぁ、、、あ、そうだ。何着ていこうかな。」


おもむろに立ち上がって、クローゼットを開く。
幾つかお気に入りの洋服を出して、鼻歌交じりに鏡の前で合わせていると、、、

〝コンコン〟

と、遠慮がちに扉を叩く音が耳に届く。

ノック?
僕の部屋をノックするのなんて、、、だれ?



僕は、不審に思いながらも、ハンガーに掛った洋服を両手に持ったまま、、、

・・・・・「はい、、、」 と返事をした。

すると・・・・・

カチャっと音がして、扉がゆっくりと開く。


えっ? ヒョン?


そこには、少しバツが悪そうな顔をしたヒョンが、じっと立っていた。

そう、あの日から・・・・・

〝まぁ、せいぜい勉強頑張れよ〟

あの日から今日まで1週間の間、
ヒョンの部屋の窓は閉じられたままだった。



「入ってもいいか?」


今まで1度だって、ノックしたこともなければ、入っていいかなんて聞かれたこともない。
いつも、突然やってきて、お構いなしに部屋に乱入してたくせに、、、

・・・・・「どうぞ」

少し冷たい口調でそう言うと、
ヒョンは、軽く僕に視線を向け、部屋に足を踏み入れた。

後ろ手に扉を閉めて、いつもなら、ベッドにダイブするのに、
今日は、そのまま、部屋の真ん中にあるテーブルの前に腰を下ろした。

そして、、、

「この前言ってた、キャンプの事だけど、、、」

そう言いながら、僕の両手にある服をちらりと見る。

・・・・・「うん、、、」

僕は、洋服のハンガーをクローゼットに戻し、
ヒョンと向かい合うようにして、座った。

「ここ、、、行くから、、、」

スーッと差し出されたのは、、、


〝サマーキャンプのお知らせ〟


「ミファが作ってくれた。いろいろと準備物とか、、、書いてるから、、、」

ミファさんが・・・

手前に滑る様にして引き寄せて覗き込む。
そこには、一枚の紙にびっしりと、女の子らしい可愛い文字とイラストで、
キャンプについての詳細が、分かりやすく書かれていた。

これ、、、

その中でもひときわ目に映るイラスト、、、
ヒョンとミファさんに似た男の子と女の子が、仲良く手を繋いでる。
真ん中には大きなハートマーク、、、、、


・・・・・「・・・・・」


そのイラストを、じっと見つめていると、、、


「あいつ、、美術部の副部長でさ、、、絵が、、、得意なんだよ。」


何も聞いてないのに、そんなことをいうヒョンにムカついた。


・・・・・「そう、、、」

たった一言、そっけなく返事をする。

「・・・・・うん、、、」


そのまま、僕はその用紙に書かれていることに目を通してゆく、、、


・・・・・「えっ、、、」

「なに? どうした?」


目に留まったのは、、、


〝日時・・・・・8月○日(金)~○日(土)〟


・・・・・「これって、、、来週の金曜だよね?」

「ああ、そうだけど、、、」

・・・・・「・・・・・」


その日は、ユンス先生との約束の日・・・・・


「何? 都合悪いとか?」

・・・・・「、、、、、う、うん、、、、ちょっと、、」


どうしよう、、、


「予定、、、あるのか?」

・・・・・「・・・・・」



分かってる。
先に約束をしたのは、ヒョンとだ、、、

けど、、、

〝ミファがさ、可愛い女の子連れてくるからって、、、〟


キャンプに行けば、おのずとヒョンとミファさんの並んだ姿を、目にすることになる。
僕が好きなのはヒョンなのに、知らない女の子を紹介されて、
笑いたくもないのに笑わないといけない。

何よりも、ヒョンとミファさんが微笑みあう姿・・・
触れ合う二人を、僕は平然と見ていられるだろうか、、、


無理だよ、、、
自信がない、、、

目の前のイラストが、余計にそう思わせる。



「チャンミン?」

・・・・・「ゴメン、ヒョン、、、」

「・・・・・」

・・・・・「今なら、まだ別の人誘えるよね?」

「えっ?」

・・・・・「この日は、どうしても都合悪くて、、、行けそうもない、、、」

「、、、、、」

・・・・・「ゴメン、、、」


ヒョンに対して、失礼なことをしているという自覚があった。
だから、ヒョンの顔を見れなかった。
俯いたまま、〝ゴメン〟と、そう言うしか出来なかった。

約束をしたのは、ヒョンが先、、、
なのに僕は、ヒョンとの約束を破ろうとしてる・・・・・


「なんの用事?」

・・・・・「えっ?」


ヒョンのいつもより重い声に、顔を上げてヒョンを見る。

怪訝な顔をして、僕をじっと見据えてる。


「なんの用事があるんだよ?」

・・・・・「うん、ちょっと、、、」

「・・・・・」

・・・・・「ゴメン。誰か、別の人誘って楽しんできてよ?」


少しの沈黙、、、
そして、ヒョンは大きなため息をついた。


「そうか、、、」


小さな声でそう言うと、僕の目の前にあるキャンプの案内の用紙を、握るように手に取る。
そして、ゆっくり立ち上がると、そのまま僕を見ることなく扉の向こうに消えた。


パタン、、、、と閉じる扉・・・
まるで、すれ違うヒョンと僕の心を、断ち切るような冷たい音だった。






一週間後、、、、


--- では、チャンミンくんをお預かりします ---

・・・・・「行ってくるね、母さん。」

--- 先生、よろしくお願いします。---


野球観戦当日、、、
お昼を過ぎた頃、ユンス先生が車で迎えに来てくれた。



--- どうぞ、乗って? ---


助手席に乗り込むとき、フッと背中に視線を感じる。
無意識に、振り返ってヒョンの部屋の窓を見た。

勿論、ヒョンの姿はない、、、

ヒョンが居るわけない。
今日からキャンプに行ってるはず、、、


--- チャンミン? どした? ---


ユンス先生の声で、我に返った。


・・・・・「いえ、、、」

--- 乗って? 行こう ---


その時の僕とユンス先生を、ヒョンが見ていたなんて、、、
思ってもみなかったんだ、、、、、






・・・・・「ユンス先生、今日はありがとうございました。」


もう、辺りは暗くて、街灯の灯りだけがぼんやりと道を照らしてる。
野球観戦を二人で楽しんだ後、食事をして帰ってきた。


--- 楽しかったか? ---

・・・・・「はい。とっても、、、」


先生が好きなチームが逆転勝利して、先生と2人で大興奮だった。


--- これ、大切にしろよ? ---


そう言いながら、僕が被っている先生の好きなチームのキャップを、
掌でポン、と叩いた。


・・・・・「僕も、このチームのファンになります。」

--- おっ? そうか、、、---

・・・・・「先生、、、また、行きたいな、、、」

--- そうだな、、、今度の模試で、目標点取れたら、、、考えてやってもいいかな?---

・・・・・「ホント?」

--- ああ、、、だから頑張れよ。 ---

・・・・・「じゃあ、約束。」

--- 子供みたいだな、チャンミンは、、、---



笑いながら差し出された先生の長い小指に、
僕は戸惑うことなく自分の小指を絡ませる。



--- じゃ、今日は早く休むこと。お母様によろしくな? ---

・・・・・「はい。先生、おやすみなさい」

--- おやすみ、、、---



僕は、先生の車のテールランプが見えなくなるまで手を振って見送った。


ウインカーがチカチカと光って、交差点を右に曲がる。


先生に買ってもらったキャップが嬉しくて、
さっき先生が触れたところに、自分の手を伸ばした。
なんだか、不思議な気持ちがした。



家に帰ろうと、くるっと身を翻し、一歩足を踏み出したとき、
暗い夜の中、、、僕の視界に誰かが入り込んだ。

視線向けると、、、、、



・・・・・「ヒョン?」

ヒョンの家の前、、、
自転車を手に、立ったままで僕をじっと見つめているヒョンが居た・・・・・








8へつづく

昨夜は更新のお約束していたのに、
ご訪問下さった読者さま、ごめんなさい。

本日は、通常通り更新させていただきます。




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真夜中の観覧車。scene1




--- よろしくお願いします。 ほら、チャンミンもご挨拶して?---

・・・・・「シム・チャンミンです。よろしくお願いします。」

--- 僕は、ユンスです。ソン・ユンス。よろしく---


差し出された手・・・
男の人にしては、長くてとても美しい指をしていた。
それが、彼の第一印象だった。




母に告げられたのは、夏休みが迫ったある日の夕飯の食卓だった。


--- チャンミン、夏休みに入ったら家庭教師の先生に来てもらうことにしたから---

・・・・・「えっ? なんだよ、そんなの聞いてないよ」

思わず伸ばしかけた箸を引いた。

---だって、初めて言うもの、、、---

・・・・・「ちょっと、母さん、、、そう言うの、いつも勝手に決めないでよ。僕は一人で勉強出来るって、、、」


学習塾にも通ってない。
誰かに教わるんじゃなくて、自分で勉強して理解してゆく。
それが僕のやり方だし、それでも分からなけりゃ、学校の先生に聞けばいいだけの事。

恥ずかしい成績は取ったこともない。
なのに、、、


--- 何言ってんの? 遅いくらいよ。高校生なんだから、受験に向って頑張らないとね。---

・・・・・「そんなの、、、」

--- そんなのもこんなのもないの。もう、お願いしたんだから、、、とっても優秀な人なんですって。
とにかく、夏休みに入ったら、週に2回、来ていただくことになったから、、、ね? ---

・・・・・「・・・・・」



結局、母さんの思惑通り、
僕は、この夏から、家庭教師の先生に勉強を教わることになった。

先生は、ソウルの有名大学に通う大学2年で、
母の友人の紹介で、僕の家庭教師を引き受けてくれたという。


--- ふーん、ここがチャンミンの部屋か、、、---


初めて僕の部屋に足を踏み入れた先生は、
キョロキョロと見回しながら、さらりと僕の名を呼んだ。


・・・・・「・・・・・」


突然、呼び捨てで呼ばれた僕は、驚いた顔をしていたのだろう、、、


--- ああ、、、いい? 〝チャンミン〟って呼んでも? ---

・・・・・「は、はい、、、別に構いませんけど、、、」

--- 良かった、、、---


そう言いながら、いつの間にか母さんが準備していた、机の隣にある椅子に腰かけ、
ニコッと笑みを零す。


--- 座って? ---


そう促されて、僕は、先生の座る椅子のすぐ隣にある僕の椅子を、
少し手前に引き寄せるようにして腰を下ろした。


--- 今日は初日だし、自己紹介しよう ---

・・・・・「自己紹介、、、」

--- うん。まず、僕から、、、---


先生は、少し前のめりになって、僕をじっと見つめながら、
ゆっくりとした口調で、自分のことを話し出した。

家族の事、大学の事、趣味、特技、、、


・・・・・「えっ?先生、野球好きなんですか?」


野球観戦が好きだと言った先生に、思わずそう、口から言葉が出た。


--- アレ? 食いついたな? 好きなの? ---


そんな風に切り返されて、思わず恥ずかしくなった。


・・・・・「はい、、特に好きなチームとかないけど、、、見るのは好きです。」

--- そっか、じゃあ、また今度、一緒に観に行こう---

・・・・・「えっ? ほんとですか?」

--- うん。そうだな、、、夏休みの間に、1日、課外授業ってことで。な? ---

・・・・・「わぁ、、、楽しみだな」


たったそれだけの事だけど、
その話だけで、僕達はなんだかグッと近づいたような気がした。

野球観戦に釣られたわけじゃないけれど、
家庭教師って言うものは、部屋に何時間も籠って、テキストとにらめっこしてるもんだとそう思ってたから、
予想外の先生の言葉に、僕はすでに浮足立っていた。


--- 勉強って、たまには息抜きしないと上手くいかないもんなんだって。---


フッと笑いながら、僕の髪に手を伸ばす。


--- だから、勉強も頑張ること。いいな? ---

・・・・・「はい。頑張ります」


クシャっと撫でられた髪が、なんだかくすぐったくて、、、


--- じゃ、次はチャンミンだ---

・・・・・「はい。僕は、、、」




「おーーーーーい、チャンミーーーン! 」


言いかけたちょうどその時、窓の向こうから聞こえた、いつもの声・・・


・・・・・「・・・・・友達?」

--- あっ、、、い、いえ、、、あの、、、---


「居るんだろーーーー無視するなよ~~」


自分の事じゃないのに、なんだかとても恥ずかしくなって、
顏がカーッと赤くなっていくのを自分でも感じる。


--- 聞いてあげなよ? ---


「おーい、自分だけ涼んでんじゃねぇよ~」


・・・・・「ちょっと、、、すいません」


心の中で、盛大にため息をついて、僕は立ち上がってベッドに上る。
両ひざをついた姿勢で、ガラッと、いつもより少し乱暴に窓を開けた。


「なんだよ、居るじゃねぇか。ヒョンを無視するなよ~。な?お前、 暇?」

・・・・・「暇じゃない。忙しい。」

「嘘つけ。」

・・・・・「嘘じゃない。今はとっても忙しい。じゃあ、、、」


早々に窓を閉めようとすると、、、


「おっ、おいおい、、、チャンミン!! 待てって、、、待てよっ」


手を止めて視線をぶつける。


・・・・・「何? 僕は今、超絶忙しいんだけど、、、」


目を少し細めて、凄んでみたつもりなのに、そんな僕には全く気が付かない。
鈍感ヒョンめ・・・


「退屈だからさ、この前のDVD一緒に観ないか?」

・・・・・「悪いけど、今は無理。」

「なんで? どうして?」


ヒョンは、いつもこう。
自分が暇だと、僕もそうだって思ってる。


・・・・・「だから、、、今、、、」


〝忙しい〟

そう、言おうとしたとき、、、




--- ごめんね、今、僕と遊んでる ---



・・・・・「えっ?」



振り返ると、先生がベッドの上の僕の後ろに居て、、、


「・・・・・」


ヒョンは、突然僕の背後に現れた先生の姿を見て、
驚いて固まってた。


・・・・・「せ、先生、、、」

--- 申し訳ないけど、DVDはまた今度誘ってよ。---

「・・・・・」

--- じゃあ、ごめんね ---


そう言うと、後ろから長い腕かぐっと伸びてきて、
窓をピシャリと閉めた。


そして、先生は何事もなかったかのように、また、元の椅子に腰を下ろす。


--- チャンミン、続き、、、ほら、、、---


一瞬のことで・・・
何が何だか分からないまま、
僕もまた、先生の隣の椅子に腰を下ろして、自己紹介の続きを始めた。






--- じゃあ、チャンミン、、、次回からは真面目に勉強だ---

・・・・・「はい。」

--- あら、今日は真面目じゃなかったんですか? ---



明るくて、爽やかで、とても丁寧に接してくれる先生を、
母さんはとても気に入ったようだ。


--- そうでもないよな、チャンミン。---

・・・・・「はい。そうでもないと思います。」


僕は、どちらかと言うと、人と仲良くなるのに時間が掛るほうだ。
けど、どうしてだか、先生とはすぐに仲良くなれた。

兄さんが出来たような、そんな感覚・・・
僕は内心、とても嬉しかったんだ・・・・・


 



「で、誰?」


先生が帰って暫くすると、いつものように階段から大きな足音が聞こえてくる。


バン! と、いつもより荒っぽく開かれた扉。
汗ばんだヒョンの額から、外の暑さが伝わってきた。


・・・・・「誰でもいいだろ?」

「は? いいわけねぇ」

・・・・・「ヒョンには関係ないだろ?」


扉を後ろ手に閉めると、
怪訝な顔したヒョンが、ゆっくりと僕の前に立ちはだかった。


「いや、関係ある、、、あいつ、、、誰だか知んないけど、、、」

・・・・・「・・・・・」

「さっき、窓閉めるとき、俺を見て笑いやがった。」

・・・・・「えっ?」

「〝ふっ〟って、、、鼻で笑って俺をバカにしやがった。許せん、、、」


少し前まで、、、いや、さっき先生と会うまでは、
ヒョンの事、少しは大人だと思ってた。

けど、、、
全然違う、、、

ヒョンだって、僕と同じ、まだガキんちょだ。



・・・・・「家庭教師の先生だよ。」

「家庭教師?」

・・・・・「そう、ソウルの有名大学の2年。優等生なんだ」

「家庭教師って、、、」

・・・・・「ヒョン、、、先生は大人なんだから、そんな変な事するはずないよ。ヒョンの勘違いだ」

「お前、俺よりあいつの肩を持つのかっ!」

・・・・・「ヒョン、、、僕これから、忙しくなるから、今までみたいにヒョンとは遊べない」



これは、自分を守るためでもあった。
ヒョンには、れっきとした彼女がいる。

ヒョンを好きになってからずっと、特別じゃなくてもいいから、ヒョンの隣に居たいと、そう思ってた。
けど、いざ、ヒョンの隣で笑う彼女の姿を見て、、、

とても僕には、出来そうもないと、そう思ったんだ。
この気持ちを心に隠したまま、ヒョンの隣で笑ってる事なんて、、、出来そうにない。

だから、いい加減諦めないと・・・
いつも、兄弟みたいに接してるから、僕はいつまで経っても、ヒョンを諦められない。

少しヒョンと距離を置いて、本当の弟にならないと、、、

そうしないと、僕はダメになってしまう、、、



「なんだよ、それ、、、」

・・・・・「何だって、言葉通りだよ。」

「・・・・・」

・・・・・「ヒョンは頭がいいから、、、僕はそうじゃない。人一倍、それ以上に努力しないと、、、それに、、、」


ヒョンは、僕が話すのを、黙ってじっと見つめている。


・・・・・「ヒョンには彼女がいるだろ? 僕なんかと遊んでたら、せっかくできた彼女にフラれちゃうよ?」

「・・・・・」



部屋のエアコンが回る音が、やけに大きく聞こえる。

ヒョンは、僕をじっと見つめたまま、視線を逸らさない。
それに耐えられなくなって、僕が先に、目を逸らせた。


「言いたいことは、それだけか?」

・・・・・「・・・・・」


ヒョンの低い声・・・
怒ったときの、ヒョンの声・・・・・


「まぁ、せいぜい勉強頑張れよ。」


吐き捨てるようにそう言って、ヒョンは部屋から出ていった。
それから、暫くは、ヒョンの部屋の窓が開くことはなかった・・・・・







7へつづく

読者の皆さま、こんにちは。
本日も、定時22時は「イヤよ~」を更新しますので、
宜しければお部屋を覗いてみてくださいね。


それでは、また夜に♪




こころ。

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